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指導者たちの言葉から紐解く、育成現場における「空気感」の大切さとその作り方

2021.03.16

中野吉之伴の「育成・新スタンダード」第12回

ドイツで15年以上にわたり指導者として現場に立ち続け、帰国時には日本各地で講演会やクリニックを精力的に開催しその知見を還元。ドイツと日本、それぞれの育成現場に精通する中野吉之伴さんが、育成に関する様々なテーマについて提言する。

第12回は、『フットボリスタ第83号』のドイツサッカー特集で複数の育成指導者へインタビュー取材を行った中野さんが、現場の声を聞いてあらためて感じた「空気感」の重要性、そしてドイツのクラブがそれをどのように醸成しているのかを教える。

 育成において、ディスカッションの前提となっているのはどの国でも「どうすれば子供たちがより良く成長することができるだろうか」という、選手の成長を第一とするプレーヤーズファーストの考えだろう。「より良く」と考えるためには、「こうであってほしい」という理想が念頭にくる。

 ただ、それぞれの国にはそれぞれの社会的価値観と習慣があるし、自分たちの美徳へのこだわりもある。それゆえにうまくサポートできない側面だって見つかってくる。そうした様々な要素を検討した、最適な着地点を探していくわけだ。

 選手としてだけではなく、人間としての成長を大切にしようとする現場の声が多いドイツにおいては、サッカーへの取り組み方や関わり方がとても重要視される。

 例としてまず、先日インタビューで話を聞いた1860ミュンヘンのU-12監督ボルフガング・バルスがクラブの育成哲学について語った言葉を紹介する。ドイツでトップレベルの育成力を持つクラブとされる1860では、どんなことを大切にしているのか。 ……

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Profile

中野 吉之伴

1977年生まれ。滞独19年。09年7月にドイツサッカー連盟公認A級ライセンスを取得(UEFA-Aレベル)後、SCフライブルクU-15チームで研修を受ける。現在は元ブンデスリーガクラブのフライブルガーFCでU-13監督を務める。15年より帰国時に全国各地でサッカー講習会を開催し、グラスルーツに寄り添った活動を行っている。 17年10月よりWEBマガジン「中野吉之伴 子どもと育つ」(https://www.targma.jp/kichi-maga/)の配信をスタート。

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