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欧州のビッグクラブで手腕を発揮。フランス人スカウトが活躍する理由

2020.10.20

 欧州のビッグクラブでは近頃、フランス人リクルーターの活躍が目覚ましいという。

バイエルンやミランでも活躍

 欧州チャンピオンであるバイエルンのリクルート部門を統括しているのは、フランス人のロラン・ビュセール。ホッフェンハイム、レバークーゼンを経て、2018年1月からバイエルンで現職に就いている。

 彼はこの夏、18歳になって間もない成長株のDFタンギー・クアッシをパリ・サンジェルマンから引き抜いた。カナダ人の19才、アルフォンソ・デイビスを他のスカウトマンに先駆けて手に入れたのも彼だった。

 ミランのリクルート責任者も、32才のフランス人、ジョフレイ・モンカダだ。 彼はもともと、クラブや選手に試合のハイライト映像をカスタマイズして提供するビデオ製作会社のスタッフだった。

 2012年、モナコの監督に着任したクラウディオ・ラニエリ監督にビデオアナリストとして雇用されると、分析の仕事だけにとどまらず、現場に足を運んでの選手視察や、リクルーターたちの仲介、調整など、あらゆる仕事に精を出していたのが評判になり、2018年秋、当時ミランでスポーツディレクターだったレオナルドに見初められてリクルート部門の責任者として招へいされた。

 さっそく手腕を発揮して、2019年1月にスポルティングから50万ユーロで獲得した18才のポルトガル人DFティアゴ・ジャロを、わずか半年後、10倍の金額でリールに譲渡。イスマエル・ベナセルやテオ・エルナンデスの移籍も彼が手がけ、この夏はリヨンで将来を嘱望されていた20才のDFピエール・カルルーを引き抜いた。

父の現場で養った観察眼

 そして、先日『レキップ紙』で紹介されていた、現在ヨーロッパで最年少のスカウトマンが、プレミアリーグのブライトンでフランス部門を担当する21才のマキシム・フリオだ。

 彼がこのポストに採用されたのは2年前、19才の時だった。父親のダビド・フリオはフランスとイングランドでプレーした元プロフットボール選手で、引退後はリクルーターとなり、マンチェスター・ユナイテッドにポール・ポグバを紹介した人物。今シーズンからはマルセイユのリクルート責任者を務めている。よって、ブライトンも父親の紹介だった。

 と聞くと、「なーんだ、やっぱり。何にもツテがなくてその若さでそんなポストに就けるわけがない」と思いたくなるところだが、しかしリクルーターは特殊な才が求められる成果主義の厳しい世界。縁故だけでは生き抜けない。

 実際、写真で見るとマキシムは「学生さんですか?」と尋ねたくなるフレッシュなルックスだが、「エージェントとの交渉でも先入観を持たれたことはない。サッカーの話をすれば、相手はすぐにわかってくれるから」と話す。

 彼が小学生になる頃には父親は現役を引退してリクルーターになっていたから、父が試合に行くのに同行し、選手の観察の仕方やレポートの書き方、ビデオでの分析の仕方など、マキシムは間近で見て育った。その中で、自然と彼特有の観察眼が養われていったのだと父ダビドは語っている。

 そういえば、プレミアリーグのスタジアムでも、リクルーターが小学生くらいの子供を連れているのを見かけたことが何度かあった。

父親も彼の意見を参考に

 マキシムは地元のナンシーで10才から18才までプレーしていたが、プロ経験はない。ただ、フットボールの世界がどのようなものかを肌身で学んだ経験はリクルート業にも生きていて、とりわけスカウトマンたちの対象となる同年代の選手のメンタリティーについては、父ダビドの方がマキシムの意見を参考にしているそうだ。

 「今は大丈夫そうに見えても、ああいうタイプは変わる可能性がある」というような彼の指摘は、だいたい的を射ているという。

 週に3、4試合、ユース世代の試合にもできる限り足を運ぶ毎日。そして年に3、4回、ブライトンでスタッフやフロントを交えた会議に出席する。

 ビッグクラブとは異なり、ブライトンのような中堅クラブでは、1人の選手の獲得にかけられる予算が最大1500万ユーロ程度と限られる。その中で優秀な人材を見出すのが腕の見せどころだ。

 最近では、両者ともモナコ行きを選択したが、ストラスブールのMFユスフ・フォファナとボルドーのMFオウレリアン・チュアメニに目を付けていたそうだ。

その土壌が名スカウトを育む

 現在、チェルシーやインテル、ライプツィヒなど、欧州の多くのクラブでフランス人リクルーターが活躍しているが、業界では、フランス人のスカウトは仕事のクオリティーが高く、慧眼があり、直感に優れ意欲的、そして厳格に取り組むと評価されているのだという。

 家の水道管を直しに来てくれる工事人さんだとか、日常の生活の中で、フランス人の仕事ぶりにこれらの資質を感じる機会は正直あまりないが、その分、ある分野にかけては驚く優秀な人がいるのがフランス、という感じもする。

 また、若い世代に“掘り出し物”が多い、というフランスリーグの土壌が、リクルートしがいのある環境を作っているのは間違いない。

 冒頭のロラン・ビュセール氏でさえ、世に名が出ることはほとんどないが、原石を見つけ出した時の醍醐味はきっと、たまらない喜びなのだろう。


Photo: Getty Images

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Profile

小川 由紀子

1992年より欧州在住。96年から英国でサッカー取材を始め、F1、自転車、バスケなど他競技にも手を染める。99年以来パリに住まうが実は南米贔屓で、リーグ1のラテンアメリカ化を密かに歓迎しつつ、ブラジル音楽とカポエイラのレッスンにまい進中。