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開幕早々、苦境に立たされたエルチェ。どん底からの立て直しに期待

2020.09.29

 9月26日にリーガデビューを果たしたエルチェが苦境に陥っている。試合ではソシエダに0-3で敗れたが、問題はグラウンド内だけでなくグラウンド外にも広がっており、ホームでの大敗はその結果だと言える。

選手にも監督にも問題あり

 まず、選手の数が足りない。プロ登録(トップ登録)の選手が19人しかいない。そのうちソシエダ戦に出場可能だったのは、ケガ人2人を除く17人。ベンチ入りした23人のうち、6人は3部リーグ(実質4部)に参戦中のBチームでプレーするアマチュア契約選手だった。

 1カ月前のプレーオフを勝ち上がったチームからエースのジョナタスやファン・クルス、エスクリチェらがごっそり抜けたのは、弱小クラブの悲しさゆえ。レンタルで加入していた選手は返却せざるを得ず、活躍によって他のクラブへと移籍する選手も続出した。

 例えばファン・クルスは同じ1部のオサスナへと引き抜かれてレギュラーとして活躍中。彼を売却しなければならなかったのは、税務署への滞納金を清算するためだった。

 次に、監督がベンチに入れない。ホルヘ・アルミロン監督はアルゼンチンを中心に南米で長いキャリアを誇るが、欧州では今回が初采配で、UEFAの書類審査をパスする必要がある。自身の説明によると、その審査が遅れているとのことだ。

 実は彼は2017年にラス・パルマスに招へいされたものの、審査が通らなかった過去がある。欧州での采配に必要な「トップレベルでの采配歴5年間」を満たさなかったからだ。あれから3年、今回はこの条件はクリアするはずだが、どうか。

サッカー自体は面白い

 サッカー的にはアルミロン監督のやっていることは面白い。まだソシエダ戦とプレシーズンのバルセロナ戦(1-0でバルセロナ勝利)を見ただけだが、攻撃時の[3-4-3]から守備時の[5-4-1]に変化する可変ぶりがリーガでは新味であり、しかも押し込まれた[5-4-1]から攻撃に転じる際、並みのチームならロングボールを放り込むところを、アルミロンのチームはショートパスを繋ごうとする。

 バルセロナ戦ではそれが奏功して押し込む時間帯もあったし、ソシエダ戦では成功したら即チャンス、失敗したら即失点、という展開になってハラハラさせられた。

 昨季の予算は22チーム中下から5番目。資金的には“1部に上がるはずがないクラブ”だった。今季は放映権料などで2部時代の6倍程度の予算が組める予定だが、それでもリーガの最下位となる見込みで、資金的には“残留できるはずがないクラブ”である。

 しかし、サッカーは美しいことにグラウンド上では11人対11人。まずは移籍市場が閉まる直前の余剰戦力のバーゲンセールで選手の頭数をそろえて、そこからリスクの大きなサッカーに挑戦する弱小クラブのお手並み拝見、といきたい。


Photo: Getty Images

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エルチェソシエダバルセロナ

Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。

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