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6度目のヨーロッパリーグ制覇。セビージャが知らしめた4つの教訓

2020.08.24

 8月21日、セビージャが6冠目のUEFAヨーロッパリーグを勝ち取ったことは、いろいろなことを教えてくれた。

クラブ規模の差を埋めたもの

 まず、サッカーはお金がなければ勝てないが、お金だけでは勝てない、ということ。

 移籍市場では選手のクオリティは金額に換算されていて、クオリティは値段に比例する。お金持ちのクラブほど選手の総クオリティは高い。

 決勝の78分、インテルはモーゼス、アレクシス・サンチェス、エリクセンを投入した。 いずれもかつてプレミアリーグで名を上げたスターたち。こんな豪華な顔ぶれが控えだとは、さすがメッシを本気で獲りに行くクラブである。

 売上高ベースで見ると、インテルはセビージャの倍以上。単純に言えば、倍以上のクオリティがある。セビージャが3人アタッカーを入れ替えるとしたら、エン・ネシリ、ムニル、フランコ・バスケスとなっていたはずで、格の差は明らかである。

 この差は優秀なスポーツディレクター(SD)の存在で、かなりの程度まで埋めることができる。これが2つ目の教訓だ。

 2006年、07年、14年、15年、16年、20年の6冠中、チームの陣容は変わったが、モンチがSDであることは変わらない。新顔のクンデ、ジエゴ・カルロス、オカンポス、レギロンの評価(市場価値も)は、この1年で大きく上がり、この優勝でさらに上がるだろう。つまり、モンチの慧眼のおかげで、セビージャは予算以上のクオリティを手に入れていたことになる。

 クオリティの差を戦術で埋めたロペテギ監督の抜擢も決定的だった。中央でボールを奪い、両サイドから崩すサッカーはスペインでも欧州でも通用した。その新監督の戦術に、クラブは最適な駒を用意してサポートした。

 ロシアW杯開幕直前にスペイン代表監督を解任された後、レアル・マドリーでも解任されたロペテギを迎えるのはリスキーだった。評判も悪かったが、モンチには批判を黙らせる圧倒的な力があった。選手も監督も会長も代えが利くが、モンチは代えが利かない。この優勝で、彼は神に近い存在になるのだろう。

6度のEL決勝、すべて勝利

 3つ目の教訓は、チームワークはやはり大事だ、ということ。

 GKボロはバツリクの控えだったが、出番がなくても腐っていなかったことは準決勝、決勝でのヒロイックな活躍でわかる。デ・ヨンクは得点力不足を指摘され、準決勝で先発落ちしたが、決勝で先発すると2ゴールを挙げた。バネガはシーズン途中で移籍が決まったものの、最後の一花を咲かせるまで、決して力を出し惜しみすることはなかった。

 CBセルジ・ゴメスはレギュラーの座を奪われたが、ロペテギよりも大声で仲間を鼓舞していた。エスクデロやオリベルも同じ。レギュラーが満足するのは当然だが、控えを満足させるのは難しい。一体感を作り上げたのは、積極的にベンチに顔を出すモンチ、そして特にロペテギの功績だろう。

 4つ目の教訓は、勝者のメンタリティが逆境で決定的だった、ということ。

 決勝終盤、ケガで途中交代を余儀なくされたオカンポスとジエゴ・カルロスは、悔しさで涙を流していた。俺が勝たせる、という強い思いが伝わってくる光景だった。

 ELで6度決勝に進み負けたことがない。「セビージャには勝者のメンタリティが備わっている」と言われる。だが、ジダンがほぼ同じ顔ぶれでUEFAチャンピオンズリーグを3連覇したのと違い、セビージャの主力のほとんどは1年前には別のクラブにいた。にもかかわらず、伝統、スピリッツ、メンタリティは受け継がれた。まるで当然のように「我われはセビージャだ。だから勝つ」と信じた。これもやはりモンチを頂点とするクラブスタッフ全体の素晴らしい仕事だと言える。

 サッカー界全体にとって、優れたマネージメントが埋めようのない資金力の差を克服できる、と改めて知らしめたことはプラスだったと思う。セビージャには感謝したい。


Photo: Getty Images

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インテルエベル・バネガジューレン・ロペテギセビージャモンチ

Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。