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空席をどう埋めるべきか。リーガが提唱する3つのオプション

2020.05.24

 再開が6月12日とも19日とも言われているリーガで、いかにスタジアムを空っぽに見せないかの策が思案されていると『スポルト』が報じている。

趣向を凝らす各国のリーグ戦

 一足先に再開されたブンデスリーガを見た人は、空席で声がよく反響する様子を目にしたことだろう。まるで練習中のミニゲームのような、あるいは下部リーグの試合のような光景だった。

 あれを見て、無観客と感染への恐れが選手の闘争心やチームの競争力にマイナスに影響するのは間違いない、と感じた。もしマイナスにならないとしたら、応援のポジティブな効果もホームアドバンテージが生まれる仕組みも否定しなければならないことになる。

 空席を埋めるために、各国で様々な工夫が凝らされている。ベラルーシのディナモ・ブレストはマネキンを置いた。バーチャルな入場券を購入したファンの顔写真を張り付ける、という念の入れようだった。

 台湾の野球チーム、楽天モンキーズはロボットを座らせた。写真を見る限り普通のマネキンのように見えるが、「ロボット」とわざわざ断っているからには、声を出すとか手を振り上げるとかするのかもしれない(編注:実際にはサポーターを模したマネキンやパネルに加え、楽器を演奏するロボット軍団をスタンドに配置している)。

 イラストレーターのみうらじゅん氏が愛用していることで知られるラブドールを配置して、とんでもない罰金を科された韓国のFCソウルのような例もあった。

バーチャル観客も検討

 こうした前例に対してリーガが模索しているのは、デジタル処理による解決である。『スポルト』紙によると、3つのオプションがあるという。

 オプション1はチームカラーで塗りつぶしてしまうこと。これはすでにラ・リーガ主導で座席交換というアナログなやり方を実施済み。単に目立たせない、という意味では有効かもしれない。

 オプション2は客席をビニールシートで被い、その上に試合中のスタッツをリアルタイムでデジタル的に載せること。これはスタッツの種類によって楽しめるか、ただの穴埋めになるかが決まるだろう。選手のヒートマップやスピード計測などは面白そうだが、CKの本数やボール支配率などが掲出されるだけではつまらない。

 極めつけが最もシュールなオプション3で、過去の観衆の映像をはめ込んで合成してしまおう、というもの。歓声を挿入することも検討されていて、スタジアムのスピーカーからも同時に流して選手を鼓舞することが検討されているという。

 これだとテレビでの見た目上は観衆を入れた通常の試合と大差ない、ということになるかもしれない。

 ただ、アメリカのコメディドラマに笑い声や溜息をタイミング良く挿入するスペシャリストのような、プレーの先を読める人間が音源を操らないと、ゴールの歓声が遅れて上がってくる、という間抜けな事態になるかもしれない。ドラマと違ってサッカーには台本がないだけに、より大変だ。

 まあ、あまりにリアル過ぎて「もう観客は要らない!」なんてことになるよりはましだろうけど。


Photo: Getty Images

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文化

Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。

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