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低下の一途をたどるイングランドのリーグ内競争力

2020.05.15

 近年のプレミアリーグは完全なる格差社会と呼べるだろう。今シーズンは、再開できればリバプールが30年ぶりのリーグ制覇を果たすことになる。それも、圧倒的な力の差を見せ付けての戴冠だ。

 昨シーズンも、マンチェスター・シティとリバプールによる優勝争いこそ最後までもつれたが、彼らは最終的に3位以下に25ポイントもの差を付けていた。その前年度にはシティが史上初の100ポイントで優勝を遂げている。そう考えると、近年のプレミアリーグからは“群雄割拠”のワクワク感が薄れたように思う。

1900年代初頭は混戦期だった

 その点について英紙『The Times』が面白い記事を掲載しているので紹介したい。フットボール・リーグが発足された1880年代から10年ごとに見ていくと、優勝チームが最も勝ち点を稼いでいるのは、やはり2010年代だという。

 優勝チームの1試合あたりの平均勝ち点は「2.34」。10試合したら最低でも7勝2分1敗の成績を残している計算だ。

 1勝を3ポイントに統一してリーグ発足当初の1880年代までさかのぼっても、平均「2.3ポイント」を超えているのは2010年代と2000年代(2.32)だけなのだ。

 では、最も低かった時代、いわゆる“混戦期”がいつだったかというと、それは1910年代と1920年代だという。1試合平均「1.91ポイント」で優勝できたのだ。

 1914-15シーズンには“歴代最低”チャンピオンも誕生している。エバートンが平均「1.71ポイント」で2度目の優勝を果たしたのだ。これを昨シーズンのプレミアリーグに当てはめると、6位のマンチェスター・ユナイテッド(平均1.73)でも優勝できたことになる。

 1914-15シーズンが凄かったのはそれだけではない。当時の「1勝=2ポイント」を「1勝=3ポイント」に換算して計算すると、10ポイント差の中に上位10チームがひしめいていたのだ。ちなみに今季は、首位リバプールが2位マンチェスターCに25ポイント差を付けている。

10年間で8クラブが優勝した60年代

 1960年代も混戦模様だったという。リーグ内競争力を考える上で重要な「優勝クラブの数」を見ると、60年代は10年間で8つのクラブが優勝している。

 もちろん連覇したチームはおらず、リバプールとマンチェスターUが2回ずつ優勝しただけで、イプスウィッチやリーズといった初優勝クラブまで誕生した。イプスウィッチに至ってはトップリーグ初昇格で見事に頂点に輝いている。

 しかし近年は、2015-16シーズンこそレスターが奇跡を起こしたが、最近15年間で優勝したのはレスターを含めて4クラブだけ。もちろん8連覇を達成するクラブがいたり、二強時代が揺るがない他リーグに比べれば健全かもしれないが、やはり物足りなく思ってしまう。

 上位勢が独走する近年の傾向について、『The Times』の記者はホームアドバンテージの低下を指摘する。

 これまでのプレミアリーグは常に番狂わせを予感させた。格下がホームサポーターの声援を力に変えて死に物狂いで金星を目指す。それが一番の醍醐味だったが、近年は通用しないようだ。そのホームアドバンテージが薄れた理由について、やはりクラブの経済格差を挙げている。

今は個性的なチームが減っている

 もちろん資金力の差は否めないが、個人的には「スタイル」も要因の1つに感じる。近年は、下位チームだって強豪クラブに真っ向勝負を挑む。素晴らしい心意気だが、同じ土俵で戦えば選手やチームの能力差が結果に直結する。

 フィジカル&ロングボールの手法で名を馳せたサム・アラダイスやトニー・ピュリスといった指揮官が消えたことでサッカーの質こそ向上したが、同時に上位勢が“怖い”と感じるチームも減ったように思う。

 ロリー・デラップのロングスローで注目を集めた10年前のストークはもちろんのこと、1980~90年代に“クレイジー・ギャング”と呼ばれた肉体派のウィンブルドンも、今のサッカー界には居場所がないのだろう。

 元イングランド代表FWギャリー・リネカーに「ウィンブルドンの試合が最も楽しんで見られるのはテレテキスト(文字情報を確認するTVのシステム)だ」と言わしめた“嫌われ者”が少し恋しくなるのは、筆者だけだろうか。


Photo: Getty Images

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Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。