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情勢不安によるチリサッカーの混乱は続く。サポーター暴動で注目試合が打ち切り

2020.02.26

 去る2月16日、チリ1部リーグ第4節コロコロvsウニベルシダ・カトリカ戦で、コロコロのサポーターが投げ入れた爆竹で選手がケガを負い、試合が中断されるという事件が起きた。

爆竹で選手がダメージ被る

 試合は前半からコロコロのサポーターが暴動に走り、15分を過ぎたあたりでピッチに爆竹を投入。ハーフタイムには警備にあたっていた警官隊と衝突した上、スタジアムの外でも放火などの犯罪行為に出たが、その後ますます緊迫した状況に。ここまででもかなりの荒れ様だったが、サポーターの暴走はさらに続いた。

 事件が起きたのは72分。後半開始早々の先制点に続いて69分にウニベルシダ・カトリカの2点目が決まると、コロコロのGKマティアス・ディトゥーロが守っていたゴールエリアに向けて爆竹やスマートフォンが投下される。

 その後、ピッチ中央付近に向けて複数の爆竹が投げ込まれ、その一部が同チームのFWニコラス・ブランディの足元に落下したため、ブランディは一時的な聴覚障害に苦しんだだけでなく、両足に爆竹の破片による裂傷を負ってしまった。

 主審はこの時点でゲームを中断したが、チリのプロサッカー協会はその後の審議で「ウニベルシダ・カトリカの勝利で試合終了」との判定を下している。

暴れた理由は政府への抗議

 では、コロコロのサポーターはなぜ暴動に走ったのか。試合の判定に不服を抱いた結果であれば前半やハーフタイムの暴走はなかったはずだが、実際の問題はピッチの外にある。

 チリ国内では、昨年10月に始まったセバスティアン・ピニェーラ大統領の政策に不服を抱く国民によるデモが原因で様々な行事が中止となり、リーグ戦が中断されただけでなく、首都サンティアゴで開催される予定だったコパ・リベルタドーレス決勝も直前になって開催不可の判断が下され、ペルーの首都リマに会場が移された。

 現在も各地で政府に対する過激な抗議活動が行なわれているが、その流れから各クラブのサポーター集団の間に、サッカーの試合の開催をなんとしてでも妨害しようとする動きが存在する。今回中断になった試合でも、サポーター同士の衝突を避けるためアウェイサポーターの入場が禁じられていたが、結果的にはコロコロのサポーターが開始直後から暴動を起こし、企みどおりの展開に持ち込む形となった。

 1月28日には同じくコロコロのサポーターが試合後に街中で暴れたため、それを抑制しようとしたカラビネーロス(チリの国家憲兵)がトラックでサポーターをひき殺してしまう事件が起きた。これを機にカラビネーロスに対する不満が一層高まっていたことも、今回の暴走が過熱する要因となった。

 3月は新学期スタートと同時に学生運動も再開する月と見られており、ピニェーラ大統領もツイッターで「多くの人々は暴力的な3月を予想しているが、政府は社会の秩序を保つ準備をした」との声明を発表している。ワールドカップ予選が始まる月でもあるだけに、社会問題がサッカー界に影響を及ぼし続けるかどうかが懸念されている。


Photo: Getty Images

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サポーターチリ放火暴動爆竹

Profile

Chizuru de Garcia

89年からブエノスアイレスに在住。1968年10月31日生まれ。清泉女子大学英語短期課程卒。幼少期から洋画・洋楽を愛し、78年ワールドカップでサッカーに目覚める。大学在学中から南米サッカー関連の情報を寄稿し始めて現在に至る。家族はウルグアイ人の夫と2人の娘。