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混乱を極めるチリ国内情勢。代表の活動も大きな被害を被る

2019.11.20

 10月半ばから始まった反政府運動が国内各地で略奪や放火などの暴動に発展し、長期化している影響を受け、チリ代表が11月に予定されていたボリビア戦とペルー戦の親善試合2戦をキャンセルするという事態が起こった。

長引く情勢不安で代表戦実施は不可能に

 まず、チリの首都サンティアゴで11月15日に行われる予定だったボリビア戦に関しては、当初は会場を変更する案も検討されたが、デモの暴走化が全国規模で起こり、警察の大半がデモ抑制に出動するため試合会場周辺の安全確保が困難になることから断念。現地の不安定な情勢を懸念したボリビア側からも中止の要請があり、4日にキャンセルが決まった。

 この時点では、19日にアウェイで開催される予定だったペルー戦については問題なしとされており、海外のクラブに所属する主力選手たちも意欲満々で事前合宿に合流した。だが、帰国して初めて実態を目の当たりにした選手たちは、抗議運動が長引き、1部と2部のリーグ戦も中断されたままとなっている母国の現状を深刻に受け止め、「サッカーの試合どころではない」と判断。DFガリー・メデルも自身のSNSアカウントを通じ、暴動には反対しながらも「平和的な反政府運動」への団結の姿勢を明らかにし、ペルー戦も中止という結果になった。

指揮官は困惑し、辞任も示唆……

 この展開に困惑したのが、チリA代表の監督であり、直前にU-23代表選手の招集をめぐるトラブルに直面していたレイナルド・ルエダだ。

 ルエダ監督はアシスタントコーチのベルナルド・レディンにU-23代表の指揮を任せながらA代表と連携したチーム作りを行っているが、U-23代表が11月14日から17日にスペインで開催される4カ国トーナメントに出場するにあたり、当初中断されていた1部リーグが15日から再開する予定となっていたため(後に22日に延期)、国内のクラブに所属する主力選手の貸し出しを拒否されていたのだ。

 来年1月の五輪予選、および3月から始まるW杯予選に備え、新たな戦力をテストする最後のチャンスで人材を制限される羽目となり、ルエダ監督はレディンと相談した結果、トーナメント出場を辞退することに。だが、これに続いてまさかA代表の選手たち自らがペルー戦への出場を拒否することになるとは想像もしていなかった。

 コロンビア人であるルエダ監督はチリ国内の状況を理解しながらも「25歳でW杯に出場できる可能性を秘めた(U-23代表の)選手たちが経験を積む機会を失ったことに大変憤慨し、悲しい思いだった」とコメント。さらにA代表選手たちの決断も尊重しつつ「私はサッカーの仕事をするために来ている。そのサッカーがないのであれば、私は(代表を)去るしかない」と語って辞任を示唆するまでに至っている。複雑な社会情勢が今後どこまでチリのサッカー界に影響し続けることになるかは、現時点では全くわからない。


Photo: Getty Images

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Chizuru de Garcia

89年からブエノスアイレスに在住。1968年10月31日生まれ。清泉女子大学英語短期課程卒。幼少期から洋画・洋楽を愛し、78年ワールドカップでサッカーに目覚める。大学在学中から南米サッカー関連の情報を寄稿し始めて現在に至る。家族はウルグアイ人の夫と2人の娘。