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王者決戦もクラシコも実現せず。スペインスーパーカップを総括する

2020.01.22

 初めて4チームが参加しサウジアラビアで開催されたスペインスーパーカップ。以前の記事 でもその問題点を指摘したが、各種数字等も出てきたので、ここで総決算をしておこう。

踏みにじられた大会の精神

 まず、コンペティションでは史上初めてリーガの優勝チーム(バルセロナ)でもコパ・デルレイの優勝チーム(バレンシア)でもない者同士の決勝――アトレティコ・マドリー(リーガ2位)とレアル・マドリー(リーガ3位)の決勝――となり、ご存じの通りレアル・マドリーが優勝した。リーグとカップ戦の王者同士でナンバーワンを決める、という伝統的なスーパーカップの精神は、当初懸念があった通り、完全に踏みにじられたわけだ。

 準決勝でバルセロナとバレンシアの王者対決にならず、バルセロナとレアル・マドリーのクラシコも実現しないという“偶然”により、「決勝でクラシコ」という予定調和があるかと思われたが、バルセロナがアトレティコ・マドリーに逆転負けしたことで、サウジアラビア側が待望したクラシコは実現しなかった。バルセロナは敗退を理由にエルネスト・バルベルデ監督のクビを切ったが、彼がこの新フォーマットによる最初の犠牲者だったと言える。

多くの代償を払って得た大金

 グラウンド外では、スタンドでの男女混合観戦がサウジアラビア史上初めて実現した。もっとも、これはスペイン国内では「サウジアラビア民主化の象徴」という声と「暗い面を隠すただの対外宣伝」という声があり、後者の方が優勢である。

 というのも、今回の男女混合観戦はあくまで例外的措置であり、今後スポーツ観戦が平等化されるとは限らないし、スタジアムを一歩出ると、例えば商業施設や金融機関などでの男女分離があることが、スペインのレポーターたちによって報告されたからだ。

 奔放なスペイン人女性たちが大挙訪れて自由化の波を持ち込むこともなかった。スペインサッカー連盟によって確保された1万2000のチケットのうち、4チームが販売できた枚数は1500にも満たなかった。あまりに高い渡航費と滞在費がブレーキをかけることになったのは間違いない。

 スペインでのテレビ視聴者数も例年の3分の1程度に低迷した。これは男女不平等国での開催ということで地上波が中継を断念し、有料チャンネルでの中継となったことによるものだろう。

 以上の代償として連盟が手に入れたのは、1億2000万ユーロ(約146億4000万円)もの大金。契約はまだ2年残っているので、来年もその次の年もサウジアラビアで開催されることは確定している。もうスペインスーパーカップではなく“サウジアラビアカップ”と呼ぶべきではないか、という声も出ているほどだ。


Photo: Getty Images

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Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。