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南野拓実のデビューを上回る衝撃。ノリッチの18歳アダム・イダー

2020.01.09

 FAカップは番狂わせが醍醐味の大会だが、同時に若きヒーローを生み出す大会でもある。多くのクラブがリーグ戦を優先して大幅なローテーションを行うようになり、チャンスを与えられる若手が増えているのだ。

 南野拓実がデビューを果たしたマージーサイドダービーでは、地元生まれの18歳、リバプールのMFカーティス・ジョーンズがトップチームでの初ゴールを決めて見出しを飾った。だが、今回のFAカップ3回戦では彼以上にインパクトを残した若手がいる。ノリッチのアイルランドU-21代表FWアダム・イダー(18歳)だ。

若年期から得点量産、別競技でも活躍

 ナイジェリア人の父とアイルランド人の母を持つイダーは、アイルランドで生まれ育ち、16歳の時に地元のクラブからノリッチに加入した。昨年8月のリーグカップ戦でトップチームデビューを果たすと、元旦のクリスタル・パレス戦でプレミア初出場。そして、1月4日に行われたプレストン(2部)とのFAカップで開始90秒に初ゴールを奪い、その勢いのままハットトリックを達成した。18歳328日でのハットトリックはノリッチの最年少記録だ。FAカップの歴史においても、3回戦以上に限れば1957年以降で最年少のハットトリックだという。

 そんな衝撃的な活躍なのだが、彼を知る者は大して驚かなかったようだ。アイルランドの新聞が「我々には説明不要だが、イングランドの観客は彼の非凡な才能を垣間見たはず」と綴るくらい、幼い頃からゴールを量産してきたのだ。2017年にノリッチのユースチームに加入した後、FAユースカップの試合でハットトリックを、しかも10分間で達成した。さらにアイルランドの年代別代表でもゴールを奪い続け、U-17代表の得点記録を打ち立てたという。それどころか、学生時代にはサッカーだけでなくゲーリック・フットボール(アイルランド発祥のスポーツ)の試合でもハットトリックを決めて新聞に取り上げられたほどだ。

 イダーは祖父の勧めで学生時代に短距離、走り幅跳び、ハーリング(ホッケーに似たアイルランドの競技)なども行い、恵まれた身体能力をさらに磨いた。その甲斐あって、プレストン戦では爆発的なスピードで抜け出し1点目を決めた。無論、速いだけの選手ではない。2点目は、相手GKのクリアミスをうまくトラップすると、利き足とは逆の左足で無人のゴールに35m弾を蹴り込んで器用さを見せ付けた。そして最後は自ら獲得したPKを冷静に沈めた。

アイルランド代表デビューも間近か

 FWテーム・プッキと一緒に練習してオフ・ザ・ボールの動きを吸収したというイダーは、「他の若手の活躍が刺激になっている」と語る。ノリッチのトップチームで活躍するMFトッド・カントウェル(21歳)やマックス・アーロンズ(20歳)、ジャマル・ルイス(21歳)はいずれも生え抜き選手だ。だからイダーはアイルランドを離れる際、ニューカッスルのオファーを断ってノリッチを選んだという。

 フル代表デビューも時間の問題である。アイルランド代表を率いるミック・マッカーシー監督はFAカップの番組に出演した際に「これで彼は(代表の座を)勝ち取ったかもしれない」と初招集を示唆した。しかし、まずは今週末にオールドトラッフォードで行われるプレミアリーグ第22節のマンチェスター・ユナイテッド戦だ。

 ケガでFAカップを欠場していた絶対的エースのプッキが復帰するかもしれないが、間に合わなければイダーの出番だろう。ノリッチのダニエル・ファルケ監督も「若手の起用をためらわない」と断言する。経験を積むために下部リーグへローン移籍という選択肢もあるが、同監督は「代わりにプッキをローンに出そうか」と冗談を飛ばしている。

 プレミアリーグで最下位に沈むチームにとって、イダーのハットトリックはこれ以上ないほどうれしいニュースとなった。ただし、監督にはちょっとした懸念もある。「これで彼を“秘密”にしておくことが難しくなってしまった!」


Photo: Getty Images

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FAカップハットトリック代表デビュー南野拓実

Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。