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オランダの未来は明るいが……A代表に主力を抜かれたU-21は?

2019.09.13

心躍るU-21オランダ代表の3トップ

 5月末、U-21オランダ代表はカルビン・ステングス(AZ)、ドンイェル・マーレン(PSV)、ジュスティン・クライファート(ローマ)の強力3トップがスイングし、メキシコ相手に前半のうちに4点を奪う猛攻を見せた。このチームが持つ底知れぬ伸びしろに、私の心は躍った。この練習試合は5-1というスコアで終わった。

 そして9月10日、U-21ユーロ予選の対キプロスも5-1のスコアだったが、試合内容という点ではいささか寂しいものがあった。スティーブン・ベルフワイン(PSV)の負傷によってクライファートがA代表に招集されたことの影響もあっただろう。だが、なによりもマーレンを欠いたことのほうが、U-21オランダ代表にとっては“チームビルディングの継続性”という点で大きかったのではないだろうか。

 今、アヤックスがドゥサン・タディッチを、オランダ代表がメンフィス・デパイを“ムービングストライカー”として前線に置いている流れがある中、PSVのマルク・ファン・ボメル監督は昨季終盤からマーレンをウインガーからストライカーにコンバートした。U-21オランダ代表のエルビン・ファン・デ・ローイ監督もこの流れを汲んで、メキシコ戦でマーレンをストライカーとして抜擢し、成功を収めた。

 U-21オランダ代表が『A代表のリザーブチーム』であることを思えば、今回の国際マッチウイークでマーレンがA代表に昇格し、活躍したことは大変喜ばしい。マーレンは、1点ビハインドを負ったドイツ戦の58分から途中出場してデパイと2トップを組み、シャドーにワイナルドゥムを置く機動力のあるシステムの中で躍動した。そして、逆転ゴールを決めて、4-2の勝利に貢献した。

U-21からA代表に昇格したマーレンはドイツ戦でゴールを挙げる活躍

 一方で、U-21代表を任されるファン・デ・ローイ監督からすれば、せっかくメキシコ戦で好感触をつかんだチームを、もう一度、再構築する必要に迫られてしまった。そう簡単にマーレンのようなプロフィールを持ったストライカーはいない。この日はカイ・シールハウス(フローニンゲン)が先発し、デイショーン・レダン(ヘルタ)が途中から出た。さらにマイロン・ボアドゥ(AZ)といったターゲットマンタイプのストライカーを、今後は前線に置くことになるだろう。

 2013年のユーロ・イスラエル大会で4位になってから、U-21オランダ代表は3大会続けて予選落ちしている。今は21年のハンガリー・スロベニア共催大会出場に燃えているが、ポルトガルに加えてノルウェーもなかなか手ごわい相手と予想されている。

主力“昇格”後のU-21、カギはAZ勢?

 マーレンがA代表に昇格した後のU-21オランダ代表にとって、成功するためのカギのひとつはAZ勢ではないだろうか。セントラルMFのテウン・コープマイナースはAZとU-21オランダ代表でキャプテンを務めるレフティーで、CBとしても有能なプレーヤーだ。左サイドバックのオーウェン・ワインダルは非常に攻撃能力に秀でた選手。右ウイングを務めるステングスは『近未来のA代表選手』としてオランダ国内でとても高い評価を得ているクリエイティブなアタッカーである。キプロス戦は負傷で辞退したがボアドゥも今後、U-21代表の一員に加わってくるだろう。

 こうしたAZのアカデミーで育った選手に加え、MFダニ・デ・ウィットがCLプレーオフ第2レグ、対アポエル・ニコシアで途中出場した翌日にアヤックスからAZに電撃移籍した。彼らはAZのレギュラーとしてオランダリーグを戦い、EL予選プレーオフを勝ち抜いてグループリーグに挑む。

 アムステルダムからスタジアムのあるアルクマールまで40キロほど、練習施設のあるワイデウォルマーとは20キロしか離れていない。アカデミーの選手の取り合いではアヤックスに分があるため、AZに来るタレントは「アヤックスからひとつ劣る」と言われがちだ。オランダ国内ではスーパータレントと目されるようになったステングスですら「僕は遅咲き」と言い切るのである。AZの選手は若くても「這い上がってきた」というたくましさと貫禄がある。ELプレーオフではベテランぞろいのアントワープとのクラッシュに、賢さで勝って勝ち抜いた。

 現在、AZはオランダリーグの7位だが、オランダ国内では「フェイエノールト、ユトレヒトともに3位を争う」という予想が多い(ここにフィテッセも絡みそうな予感だ)。AZのオランダリーグでの上位争いとELでの国際経験は、おのずとU-21オランダ代表の強化にもつながっていると思うのだ。

Photos: Getty Images

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中田 徹

メキシコW杯のブラジル対フランスを超える試合を見たい、ボンボネーラの興奮を超える現場へ行きたい……。その気持ちが観戦、取材のモチベーション。どんな試合でも楽しそうにサッカーを見るオランダ人の姿に啓発され、中小クラブの取材にも力を注いでいる。