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映画に見るフットボール文化。日常に溶け込む何気ない「風味」

2019.09.09

フットボール文化が根付いている、とは

「フットボール文化が根付いている」とは、何を意味するのだろうか。明確な定義など存在しないが、ひとつの尺度として映画を挙げることはできないだろうか。

 世の中には、サッカーを題材にした映画が無数にある。日本ではフットボールの映画祭が開かれるし、英国にはケン・ローチのように好んでフットボールを取り上げる監督もいる。ただ、決して「サッカー映画の本数=サッカー文化の浸透」というロジックにはならないと思う。文化という観点で考える場合、サッカーがどれほど生活に解け込んでいるかが大事なのだ。だから、一見サッカーとは何の関係もない日常を描いた作品に、何気なく“サッカー風味”が足されているとそこに「サッカー文化」を感じるものだ。

 英国の作品でいえば、生徒と先生の禁断の恋を描いた『Notes on a Scandal(邦題:あるスキャンダルの覚え書き)』(2006年)などがそうだ。男性教師が同僚の女性教師を誘うシーンでフットボールの話題が出るのだ。

男「今日はザ・レーン(ホワイト・ハート・レーン)に行ってきたよ。最強スパーズの本拠地さ」

女「勝ったの?」

男「3-0さ。ジャーメイン・デフォーがやってくれたよ!」

 ここまでなら珍しいことでもないが、そのあとに軽くチャールトン・アスレティック(現イングランド2部)を揶揄するのである。

女「私の父はチャールトン・アスレティックのサポーターだったわ。でも、喜んでいるところを一度も見たことがないわ……」

「ボビー・ムーアだから……」

 その他にも、『Little Voice(邦題:リトル・ヴォイス)』(1998年)という映画では、こんなシーンが出てくる。主人公の母親が、自分の家の電話番号を思い出そうとして、こう独り言を口にするのだ。

「戦争の開戦、ボビー・ムーアだから……39と66ね。それから私の年齢の28ね」

 最後の「28」に関しては、劇中の面倒くさい母親らしい“痛い”冗談だが、「66」に関しては初めて見たときに一度DVDを止めてしまうほどだった。「66」とはイングランド代表がワールドカップを制した年であり、その時の代表キャプテンがボビー・ムーアなのだ。とはいえ、普通に考えれば「W杯優勝の年」と覚えるものだ。それをさらっと「ボビー・ムーア」と言うあたりが憎い。これもサッカー文化を感じさせるシーンとして印象に残った。なお、どちらも純粋に面白いので映画としてオススメである。

 一方で、『A Shot at Glory(邦題:スコットランド・カップの奇跡)』(2002年)という作品は完全にサッカー映画なのだが、ここにも面白いやり取りが出てくるので紹介したい。試合前半に“トンネル”をして失点したGKが、ハーフタイム中に監督に謝るシーンが出てくるのだ。

GK「監督、すみません。股を閉じるべきでした」

監督「気にするな。股を閉じておくべきは、お前ではなく、お前の母親だ!」

 少し下品な冗談だが、これまた英国らしい(?)と笑ってしまった。いずれにせよ、日常を描いた映画にサッカーネタが出てくると嬉しくなるのは、筆者だけではないはず……。

Photo: Getty Images

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イングランド

Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。