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監督になったクローゼ(中編)「個別トレーニングが成功のカギ」

2019.09.06

文 鈴木達朗

「反復練習からのみ学ぶことができる」

 前回では、『キッカー』のインタビューから、ミロスラフ・クローゼの監督としての職業観を読み取った。今回は、U-17の監督となったワールドカップ歴代得点王のサッカー観が、実際のトレーニングに反映されているのかを辿る。

 育成機関で若い選手たちと1年間接してきた経験から、クローゼはこう話す。

「まだまだ(育成の)構造自体を変えなければないし、基本に戻る必要がある」

「選手たちが再びサッカーを楽しめるようにならないといけない」

 クローゼは、よりポジションごとに特化した個別トレーニングの導入を提唱している。元々は、ストライカー育成のために開始されたプロジェクトだが、それが各ポジションごとにグループに分けられて行われるようになった。

「1時間で80本から120本のクロスを上げさせる。選手は反復練習からのみ学ぶことができるんだ。ハイスピードのなかでコントロールする術を身に着け、どの角度でボールを受ければ、ゴールラインまで一気にワンタッチでボールを運べるのか、あるいはどう中央へ入っていくのか。そういったことを初めはディフェンスを付けずに行い、慣れてきたら相手DFを付けてトレーニングする。10回中7回はクロスが合わないといけない」

 そう話すクローゼは、バイエルンに集まったこの世代の才能ある選手たちを見て気づいたことがあるそうだ。

「若い選手たちは、敵のプレッシャーがかかっている状況では、クロスを上げることができないんだ。そのためには、秀でた技術と、両足が使えることが重要になる」

「個別トレーニングが成功のカギを握る」

 世界トップレベルを体感し続けてきた選手だからこそ、選手に要求するプレーの精度の基準も自ずと高いものになる。とりわけゴール前の得失点、そして勝敗に結びつく場面では。そのクオリティを引き上げるため、U-17から下の年代ではポジションごとに選手のグループを作り、それぞれ個別トレーニングを導入するようになったという。

 「たとえば、サイドの選手では、利き足ではない足のプレー、パスの速さやクロス、ディフェンスの際には、ヘディングのためのポジショニング」などの個人戦術および個人技術の基本的な部分をしっかりと身に付けさせる。クローゼは、「個別トレーニングが、将来成功するためのカギを握っている。これから2、3年後には大きく進歩しているはずだ」と今後のトレンドを予測した。

名門育成機関の監督としての優先順位:育成か、結果か?

 クローゼがここまで個別トレーニングに意義を感じるのにも、理由がある。育成年代の指導者としての役割の優先順位が、選手がプロとして生きていくための教育・訓練であり、個人の成長に重きを置いているからだ。

「自分にとっては、(各選手を)成長させるための教育・訓練が第一だね。それは明らかだよ。この教育・訓練がうまくいけば、必然的にチームとしての成功もついてくる」

 次回は、クローゼが志向するサッカー、将来のストライカー像、そして監督としての喜びについて紹介する。“戦術か個人か”ではなく、“戦術も個人も”なのだということが分かるものになるだろう。

※クローゼのバイエルンでの仕事ぶりはこちら

※ドイツU-17全国選手権準決勝、バイエルン対ケルンのフルマッチはこちら

→「後編」に続く

Photo : Getty Images

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バイエルンミロスラフ・クローゼ

Profile

鈴木 達朗

宮城県出身、2006年よりドイツ在住。2008年、ベルリンでドイツ文学修士過程中に当時プレーしていたクラブから頼まれてサッカーコーチに。卒業後は縁あってスポーツ取材、記事執筆の世界へ進出。運と周囲の人々のおかげで現在まで活動を続ける。ベルリンを拠点に、ピッチ内外の現場で活動する人間として先行事例になりそうな情報を共有することを心がけている。footballista読者の発想のヒントになれば幸いです。