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「デ・ロッシ退団報道」にみるローマを取り巻く複雑な環境

2019.06.01

感動の退団、しかし数日後に……

 今シーズン限りでローマを退団し、J1神戸入りの噂も挙がっている元イタリア代表MFダニエレ・デ・ロッシ。セリエA最終節のパルマ戦は文字通り“祝別試合”となった。

 キャプテンにして心の芯までロマニスタである選手の退団を惜しみ、「オレたちはみんなDDR」などといったバナーがゴール裏に掲げられる。試合後には退団セレモニーのようなものも行われ、幹部を務めるフランチェスコ・トッティと涙の抱擁を交わしたシーンは話題となった。

 しかしその数日後、まさかの記事がイタリア中を震撼させることになった。日刊紙『ラ・レプッブリカ』は30日、デ・ロッシとトッティとの間に確執があり、それどころか一部選手と結託してトッティやエウセビオ・ディ・フランチェスコ監督、モンチSDの退団を企てていたなどというスクープ報道が出たのである。

 話はシーズン前にさかのぼり、同じ守備的MFであるスティーブン・エンゾンジの獲得にデ・ロッシが憤慨し「解決をしなければチームを10位で終わらせてやるよ」などとクラブに圧力を掛けたと報道。さらにその後、シーズンに入って昨年の12月16日、「ジェームズ・パロッタ会長と仲が良い」とされるアメリカ人のフィジオセラピストが、「デ・ロッシ、ジェコ、マノラス、コラロフの4人が監督とSD、そしてトッティのクビを求めているという告発メールをボストンに送った」というのだ。さらにチャンピオンズリーグ敗退後、故障者の多さの責任を取らされフィジオセラピストの1人が解任。デ・ロッシがその男と仲が良かったことから、トッティとの仲に完全な亀裂が入ったなどと報じられている。

デ・ロッシは「デタラメだ」と憤慨

 さすがにデ・ロッシも、黙殺するわけにはいかなかった。旅行中の日本からクラブと弁護士にすぐ連絡を取り、『ANSA通信』を通し声明を発表。「自分に関するエピソードが捻じ曲げられて報道され、非常に憤慨を覚えている。デタラメだ。断りは入れたがローマは自分に幹部職のオファーをしてくれたというのに、自分の退団がグロテスクなもののようにされている」と、法的措置を取る意向を表明。そして「フランチェスコとの大きな友情に影を投げるような真似をされたのは初めてじゃない。けどいい加減、真面目にやれよと言いたいね」と報道に怒りを表明していた。

 これは、ローマという街とクラブを取り巻く環境の複雑さを表したものでもある。クラブの象徴の1人だったデ・ロッシの退団に、ファンは憤慨し敵意をクラブに向けている。こういうものがいたずらに煽られ、クラブへの圧力行為として利用されてしまう面があるのがローマの特殊な事情だ。スクープ記事の存在は、そんな事情の存在を物語る。

 なおパロッタ会長も、クラブの公式HP上に長文のメッセージを掲載した。その中でデ・ロッシを巡る報道を否定しつつ「ここには論争を好み、チームの中に問題を起こそうとする者がいる。選手や本当のファンのことよりも自分の利益を考え、記者にネガティブな話題を提供して選手たちを揺さぶるのだ」と、クラブを取り巻く”対抗勢力”に牽制を図っていた。

Photos: Getty Images

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ダニエレ・デ・ロッシフランチェスコ・トッティローマ移籍

Profile

神尾 光臣

1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。

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