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ビッグクラブのレコード“だけ”次々更新。プレミアリーグの特殊な傾向とは?

2023.03.19

 プレミアリーグでは、クラブの歴代ゴール記録に特殊な傾向が見られるという。先月、トッテナムのイングランド代表FWハリー・ケイン(29歳)がクラブの歴代最多ゴール記録を更新した。ケインは1960年代にスパーズで活躍したジミー・グリーブスの記録(266ゴール)を塗り替え、現在はゴール数を271まで伸ばしている。

 今月に入ると、リバプールのエジプト代表FWモハメド・サラー(30歳)がクラブ史にその名を刻んだ。プレミアリーグでの通算ゴール数を129点まで伸ばし、ロビー・ファウラー(128点)が持っていた同リーグにおけるクラブ記録を更新したのだ。ただし、このゴール数に関しては、あくまで1992年に発足されたプレミアリーグでの数字だ。リバプールの全公式戦における歴代最多ゴール記録は元ウェールズ代表FWイアン・ラッシュの「346ゴール」であり、現在178ゴールのサラーがこれを抜くのは至難の業だろう。

 ひとまずリバプールの歴代ゴール記録は安泰だが、他の“ビッグ6”のクラブ記録は過去10年ほどで塗り替えられているのだ。アーセナル(ティエリ・アンリ)、マンチェスター・ユナイテッド(ウェイン・ルーニー)、マンチェスター・シティ(セルヒオ・アグエロ)、チェルシー(フランク・ランパード)、トッテナム(ケイン)の記録保持者はみな世界的なプレーヤーであり、どれも記憶に新しいレジェンドたちだ。

 では、なぜここ10年ほどで次々に記録が更新されているのだろうか? 英紙『The Guardian』のジョナサン・ウィルソン記者が、イングランドのクラブの歴代得点記録の傾向を分析しているので紹介しよう。

要因は様々

 まずは試合数が考えられるという。ビッグクラブは毎年のように欧州カップ戦に出場するため、多くの選手が年間50試合ほど出場し、自ずとゴール数も増えている。さらに、スポーツ科学の発達で選手寿命が延びた影響もあるだろう。それから、現代サッカーは以前に比べ攻撃的になっており、1試合平均のゴール数は過去60年間で最も多いという。

 ここまでは単純な理由なので納得できる。ただ、興味深いのはここから。実は、ビッグ6以外の14チームは、リバプールと同じで久しくクラブ記録が更新されていないのだ。中には1920年代や1950年代の記録がいまだに更新されていないクラブもある。では、なぜビッグクラブでは記録が更新されているのに、それ以外のクラブでは古い記録が生き残っているのだろうか?

 ウィルソン記者は、クラブの格差を理由に挙げる。例えば、スワンジー(現在2部)では元コートジボワール代表FWウィルフリード・ボニーがゴールを量産する時期があった。10年ほど在籍すればクラブ記録を更新できたはずだが、ボニーはわずか2シーズンでマンチェスター・シティに引き抜かれてしまった。バーンリーでも、2季連続でクラブ得点王に輝いたFWダニー・イングス(現在ウェストハム所属)がリバプールに引き抜かれた。このように、ビッグクラブ以外で結果を残した選手は例外なく引き抜かれるため、クラブ記録を更新せずにチームを離れてしまうのだ。

 日本代表の三笘薫(25歳)が所属するブライトンのクラブ歴代ゴール記録は、トミー・クックの123ゴール。今季ここまで8ゴールの三苫は、あと7年ほどブライトンでプレーを続ければ記録更新も不可能ではないと思われるが、遅かれ早かれステップアップすることになる可能性の方が高いことを考えればクラブ記録を塗り替えることはないだろう。

ビッグクラブからの関心が噂される三笘。ブライトンの歴史に通算記録で名を刻むのは難しいかもしれない

 また、理由はそれだけではない。プレミアリーグは過去20年ほどで、上位勢と下位勢の格差が広がったという。過去24年間のリーグ王者を見ると、得失点差が「+40」を下回ったチャンピオンは奇跡を起こした2015-16シーズンのレスターだけ。上位勢は毎シーズンのように大量ゴールを奪っており、そこでエースを務めるプレーヤーは1年で20~30点、もしくはそれ以上のゴール数を稼げる。さらに、世界的産業に成長したプレミアリーグは海外クラブから引き抜かれることが減っており、そのリーグで上位に立つクラブが食物連鎖の頂点に君臨していることも影響しているのだという。

 そういった要因が重なり、イングランドではビッグクラブでだけ歴代ゴール記録が更新されるようになっている。果たして、次はどのクラブの記録が更新されるのだろうか?

Photos: Getty Images

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トッテナムハリー・ケインモハメド・サラーリバプール

Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。

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