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W杯で期待を裏切ったベルギー。今後の課題は世代交代と競争力の維持

2022.12.20

 前回大会3位、FIFAランキング2位の実績を引っさげ、悲願の初優勝を目指してFIFAワールドカップに挑んだベルギー。しかし、グループステージで1勝1分け1敗の3位に沈み、期待を大きく裏切ることになった。今大会を振り返りながら、W杯後の展望を占っていく。

わずか1得点でグループステージ敗退

 今大会のベルギーは精彩を欠いたまま敗退することになった。本大会前にクウェートで行われた親善試合のエジプト戦では、良いところがなく1-2で敗戦。ロメル・ルカク、エデン・アザールのコンディションが上がらず、不安を抱えながらの本大会入りとなった。

 初戦のカナダ戦はミシー・バチュアイの決勝点によって勝利したものの、試合のペースはほとんどカナダに握られた。シュートはカナダに倍の本数を放たれ、PKも与えられた惨状で、GKティボー・クルトワに救われるような試合となった。

 第2戦も調子は上がらず、前半からモロッコにペースを握られ0-2で敗戦。グループステージでは起用しないことを明言していたルカクを投入せざるを得ない状況に追い込まれたが、ほぼ決定機を作ることなく、醜態を晒す結果となった。

 勝利しなければ敗退が決まってしまう第3戦のクロアチア戦でも精彩を欠いた。後半から起用したルカクは試合勘が鈍っていてコンディションも悪く、5回の決定機を外した。この試合はスコアレスドローに終わり、グループステージ敗退が決まった。決定機を外し続けたルカクは激しく非難されているが、彼がいなければ決定機を作ることもできないチームにも疑問が残った。

ロベルト・マルティネスは退任

 敗退決定後、ロベルト・マルティネス監督は辞任を発表。2016年の就任以降、約6年半に渡る長期政権は終焉を遂げた。

 ベルギー紙『Le Soir』のアナリストを務めるジャン・ミシェル・ラルケ氏は「マルティネスは就任後、黄金世代の各選手の適切なポジションを見出し、短期間で結果を残すことができた。しかし、成功した世代に依存しすぎて上乗せをすることができなかった」と総括している。

 現地メディアは大会前に「最も経験豊富なチーム」と評していたが、世代交代がうまくいかず、停滞感の現れだったと言わざるを得ない。シャルル・デ・ケテラーレ、ロイス・オペンダなどの若手は招集されているものの、マルティネスのチームでは機能することはなく、結局はコンディションが優れない黄金世代に頼らざるを得なかった。

コンパニやファン・ハールが候補に

 グループリーグ敗退後に辞任を発表したマルティネスに代わる次期代表監督には、様々な名前が挙げられている。

 退任発表後に名前が挙がったのはバンサン・コンパニ。黄金世代を牽引し、2度のW杯出場を誇るコンパニは、2020年の現役引退後、アンデルレヒトで2年間指揮を執り、現在はイングランドに渡ってバーンリーを率いている。就任1年目ながら、チームは現在チャンピオンシップの首位を独走している。

 他の候補としては、オランダ代表を辞任したルイ・ファン・ハールの名も挙がっている。アヤックス、バルセロナ、バイエルンで一時代を築き、今回のW杯でもオランダをベスト8に導いた老将には過去に何度も待望論が出ており、2016年のEURO終了後にもベルギーメディアは候補に挙げていた。71歳と高齢だが、世代交代に迫られている現状にはうってつけだ。

 他には現モナコ監督のフィリップ・クレマン、元クルブ・ブルッヘ、スタンダール・リエージュの監督で、現役時代はW杯最優秀GKの実績があるミシェル・プロドームなどの名前が挙がっている。

 キャプテンのエデン・アザールは代表引退を発表した。トビー・アルデルバイレルトを始め、代表でのプレー続行を宣言している選手はいるが、今後は世代交代を進めつつ、一定の競争力を保つことが課題となる。


Photo: Getty Images

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シェフケンゴ

ベルギーサッカーとフランス・リーグ1を20年近く追い続けているライター。贔屓はKAAヘントとAJオセール。名前の由来はシェフチェンコでウクライナも好き。サッカー以外ではカレーを中心に飲食関連のライティングも行っている。富山県在住。

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