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プレミア勢とリーガ勢の格差に思う――ペップとテバス、正しいのはどちらか

2022.08.26

 ラ・リーガの選手が、プレミアリーグのクラブに次々と買われていく。

アレクサンダー・イサック(レアル・ソシエダ→ニューカッスル/7000万ユーロ)
カゼミーロ(レアル・マドリー→マンチェスター・ユナイテッド/7000万ユーロ)
エストゥピニャン(ビジャレアル→ブライトン/1800万ユーロ)
ゲデス(バレンシア→ウォルバーハンプトン/3300万ユーロ)
ジエゴ・カルロス(セビージャ→アストンビラ/3500万ユーロ)
※価格は推定。イサックの正式発表はまだ

 移籍市場ほどプレミアリーグとの差を感じさせられる場はない。移籍専門サイト『transfermarkt』によると、8月25日現在プレミア勢が選手獲得に費やしたお金は17億3500万ユーロ。リーガ勢のそれは4億3200万ユーロ。ほぼ4倍だ。

 売上高ではそこまでの差がない。2019-20シーズンの数字では、プレミア勢の72億ユーロに対して50億ユーロである。

 プレミア勢の方が積み上げてきた内部留保がたくさんあるのか、将来の売上高見込みが明るくて少々散財しても構わないのか、プレミア勢間での移籍がたくさんあるのか、リーグ単位のファイナンシャル・フェアプレーの規定がプレミアの方が緩いのか……。

 これらのいずれか、あるいは全部なのだろう。とにかく、今使えるお金がイングランドのクラブの方が、スペインのクラブよりもはるかに多い、ということだ。

カゼミーロの売却額は7000万ユーロ。果たしてこれは適正価格なのか

適正を大きく上回る値付け

 この状況に対して、「プレミア勢の引き抜き」という表現は当たらないだろう。スペインのクラブは笑顔のはずだ。「もの凄い金額を提示されたので喜んで送り出している」というのが実態に近い。

 先の例でも、妥当だと思える金額での移籍はエストゥピニャンとジエゴ・カルロスくらい。後はとんでもなく高い。ここ数年ケガがちだったゲデスに、30歳になったカゼミーロに、UEFAチャンピオンズリーグでの実績がなく昨季は散々だったイサックに、あの金額はない。

 でかい財布があるから出すのであって、本人も、売った方も満足だから第三者が文句を言う筋合いはないのだが、実際の価値をとんでもなく上回る値付けはインブレを生み、バブルを生む。そうなれば、移籍市場でのプレミア勢とリーガ勢の差はさらに広がっていくことだろう。

 「プレミアと同じだけ稼ぎたい」と言ったのは6年前のラ・リーガ会長ハビエル・テバスだが、今は「追い着くのは不可能」とすっかり諦めて、プレミア勢のお金持ち――特にマンチェスターCのグアルディオラ――を口撃することを生業の一部にしている。

ペップ対テバスの大激論

 2021年7月、グアルディオラ対テバスの論争があった。

 今回の格差を考えるのに面白いテーマもあるし、ツイッター上の発言で公になっているのでごく一部を引用する。両者の言い分に納得させられたり、考えさせられたりするところがいくつかある。なお、「中略」はうるさくなるので省略した。カッコ内は筆者が補足している。

 口火を切ったのはグアルディオラだ。

 「マネージメントはプレミアの方がうまい。アジア(市場)を見ればよくわかる。テバスがうまく商品(放映権)を売っていれば、バルサがメッシを引き留めるのは簡単だったはずだ。ユナイテッド、シティ、チェルシー、リバプールのように、投資をするクラブがあることの何が問題なんだ? 我われのクラブは利益を求めていない。再投資し、ファンのために成長することを求めている」

 これにテバスが反論すると、そこから激しいやり取りが展開された。

 「ペップ、君はサッカーのマクロ経済を学んだ方がいい。国家クラブが選手の年俸高騰に与える影響とか、人口分布とか、有料テレビの浸透度とか、中国とか……」

 グアルディオラ「ここ20年間、リーガ勢はCLやELのタイトルをいくつも獲得し、スペイン代表はEURO連覇とW杯制覇を達成した。なのに、問題は国家クラブなのか? マクロ経済のことは知らないが、こんな素晴らしい20年間を経て、なぜリーガはプレミアのはるか後方にいるのか?」

 テバス「データを見ればわかる通り、ここ数年間で両リーグの差は縮まっている。リーガが放映権料をリーグ単位で売り始めたのは7年前で、プレミアは30年間そうしているにも関わらずだ。しかもイングランドはスペインに比べて2000万人も人口が多い。君はシティ・グループのことをもっと心配した方がいい。ここ数年、膨大な額の赤字を出し続けている。彼らは投資家ではない。インフレを作り出す、お金の破壊者なんだ。経済的なドーピングなしで、君はあんなにタイトルを獲れたと思うかい?」

 論争はここで打ち切りとなった。

 グアルディオラは「リーガの売上が伸びないのはテバスが放映権を売るのが下手だから」と言い、テバスは「両国の市場規模が違い過ぎる」と言う。グアルディオラはクラブの投資の正当性を訴え、テバスはその金の出所を問題視する……。

 個人的には、クラブのバックに国家がいるのはずるいと思うが、サッカーはバスケットボールや野球と違い、そもそも格差是正に興味がないスポーツなので、そういうものかな、とも思う。まあ、グラウンド上でプレミア勢がスペイン勢の4倍強いわけでもないし。

 みなさんはどう思うだろうか。


Photos: Getty Images

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カゼミーロジョセップ・グアルディオラハビエル・テバスマンチェスター・シティ

Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。