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地球とサポーターのため――新ユニフォームを販売しないプレミア唯一のクラブ

2022.07.29

 新シーズンの開幕まで1週間となったプレミアリーグ。そんな世界最高峰のリーグにおいて、新しいホームユニフォームを発表しないクラブが1つだけある。独自の路線を進むブレントフォードである。

価格はプレミアで2番目に安価

 ブレントフォードは74年ぶりにイングランドのトップリーグに返り咲いた昨季、開幕戦でアーセナルを撃破する大金星を挙げると、勢いそのまま13位で見事に残留を果たし、今期も華やかなプレミアリーグの舞台に立つ。

 今夏、多くのクラブがSNSなどを駆使して新ユニフォームの発表を大々的に宣伝する中、ブレントフォードはプレミアリーグで唯一、新しいホームユニフォームを販売せず、昨季と同じシャツに袖を通す。別に昨季の74年ぶりの快挙を記念しているわけではない。ましてや、スポンサーやキットサプライヤーとのゴタゴタがあるわけでもない。スポーツ専門サイト『The Athletic』によると、彼らは「サポーターと地球のこと」を考えてこの決断に至ったという。

 大半のクラブは毎年のように新たなユニフォームを販売し、その収益をクラブの財源の一部としている。当たり前のことに思えるが、ブレントフォードはそれがファンの負担にもなると理解し、昨年11月に「今季もホームユニフォームは2022-23シーズンもホームユニフォームとして使用する」と発表した。コロナ禍で苦しい日々を送ってきたファンに何か恩返しをしたいと考え、サポーターと協議したうえで“2年サイクル”を実行することにしたのだ。

 彼らのユニフォームがとりわけ高価だったわけではない。むしろ、昨季のプレミアリーグでバーンリー(2部に降格)に次いで2番目に安価だったという(48ポンド=約7500円)。それでも“2年サイクル”の導入に至った背景には“環境問題”がある。

 サッカーのユニフォームは大半がポリエステル製だ。これは、製造するのにコットン製のシャツの2倍の二酸化炭素を排出することになるという。100%リサイクルポリエステルを使用するクラブも増えたが、ポリエステルは生分解しないそうで、自然に還るのに何百年もかかるという。SDGsの観点から見ると、最も自然に優しいのはむやみに新たな商品を作らないことなのだ。

セカンドユニも“2年サイクル”に

 ホームユニフォームの2年使用を発表した際に、ブレントフォードのジョン・バーニーCEOはこう説明した。

 「クラブはファンにとって手の届く存在であるべきだし、やりサステナブルを意識すべきだ。2年使用のアイデアにはクラブ関係者の全員が賛同した。プレミアのクラブでは珍しいことだが、ファンも出費を減らせるとして支持してくれた」

 通常、プレミアリーグへの昇格はファン層やグッズ市場を拡大するまたとない機会と言われる。しかしブレントフォードの考えは違った。放映権収入が潤沢なプレミアリーグの一員になれたことは「クラブの財源に大きな影響を与えることなく、何か新しいことをする絶好の機会だと思う」と説明したのだ。

 先日、彼らは新シーズンに着用するセカンドユニフォームを発売した。もちろん、このユニフォームも2年間使用するそうだ。「昨季、我われはファンのことや二酸化炭素削減を考え、ホームユニフォームを2年間使用すると発表した。サポーターからの反響も非常に良かったので、セカンドユニフォームも同じようにする」とバーニーCEOは説明。「クラブとしてサステナブルを目指してもっと努力できると思うが、この一歩が地球環境への影響について考えるきっかけになることを期待する」

 新シーズンのプレミアリーグでは、色彩豊かな各クラブのユニフォームに注目しつつ、ブレントフォードの取り組みにも目を向けたい。


Photo: Getty Images

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アーセナルブレントフォード

Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。