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英4部リーグで劇的なフィナーレ。「セブンアップ」の快挙で逆転昇格達成!

2022.05.11

 先週末、イングランドの4部リーグは「史上最高」とも呼ばれる劇的な最終節を迎えた。確かに、これほどドラマチックな最終節は他に類を見ないだろう。

 イングランド4部リーグの正式名称は「スカイベット・リーグ・ツー」。フットボールの母国であるイングランドは、プレミアリーグを頂点として、1部から4部までがいわゆるプロリーグとなっている。

 4つのリーグを合わせてチーム数は92で、4部までが「フットボールリーグ」と呼ばれており、基本的にセミミプロやアマチュアのクラブで構成される5部リーグ以下は「ノンリーグ」と呼ばれる。

劇的な逆転優勝

 今季は、その4部リーグの最終節で奇跡が起きた。24チームが所属する4部リーグは、下位2チームが5部に降格。そして上位3チームが3部に自動昇格するほか、4位~7位の4チームで昇格プレーオフを戦い、さらに1チームが昇格権を得る。今季は、最終節を待たずして降格する2チームは決まっていたが、上位勢が混戦模様だった。

 1ポイント差の2チームによる優勝争いに加え、5チームによる自動昇格枠争い、そして7チームが昇格プレーオフ枠を目指すという、前代未聞の熾烈な最終節を迎えたのである。

 まずは優勝争いだが、10年ぶりに3部復帰を決めていたエクセター・シティが2位に1ポイント差をつけて最終節を迎えた。32年ぶりの4部リーグ制覇を目指す彼らは、最終節に勝てば優勝が決まるはずだったが、昇格プレーオフ圏内を目指すポートベールを相手に、17本のシュートを放つもゴールを奪えず0-1で落とすことに。

 すると、2位につけていたフォレスト・グリーン・ローバーズが最終節に引き分けて勝ち点でエクセターに並び、得失点差で上回って逆転優勝を果たしたのだ。

 実は、フォレスト・グリーン・ローバーズは今年2月の段階では2位以下に11ポイント差もつけて首位を独走していた。その時はエクセターに16ポイントも差をつけていたが、シーズン後半に失速して1試合を残した時点で首位陥落。最後の7試合でわずか1勝しかできなかったものの、最終節にエクセターが敗れたため“棚ボタ”のような形で逆転優勝を果たした。

 彼らは2017年までノンリーグ(5部以下)にいたクラブで、3部リーグに昇格するのはクラブ史上初のことだ。

3位争いでさらなるドラマが

 だが、そんな優勝争いよりも劇的な決着を迎えたのが、自動昇格最後の椅子となる「3位争い」だった。5チームに3位のチャンスがあったが、基本的には勝点で並んだまま最終節を迎えた3位ノーサンプトンと4位ブリストル・ローバーズの2チームに絞られていた。

 得失点差+20で3位につけていたノーサンプトンは、最終節のバロウ戦を3-1で勝利。これで得失点差を「+22」まで伸ばしてシーズンを終えた。一方、4位につけていたブリストル・ローバーズは試合前の得失点差が「+15」。勝つことは大前提として、大量得点での勝利が必要だった。ノーサンプトンが得失点差を伸ばしたことで、ブリストル・ローバーズが3位に浮上するためには「7点差」での勝利が必要になったのだ。

 不可能に思えたが、ブリストル・ローバーズには希望があった。最終節の対戦相手はスカンソープ。72年間で初めてノンリーグ(5部以下)への降格が決まっていた最下位のチームだったのだ。だからローバーズは大量得点を目指したわけだが、ハーフタイムを終えた時点では2-0のリード。後半だけで5点の上積みが必要となっていた。それでもローバーズは後半に入って立て続けに得点を重ねると、85分の段階で7-0のリードを奪ってみせた。

 これで得失点差でノーサンプトンに並び、得点数でローバーズが優位に立ったのだ。すると、3位浮上の条件を満たしたローバーズのサポーターが、試合時間5分を残してピッチ上になだれ込んできて試合が15分間も中断することに。結局、105分間も続いた最終節を7-0で制したブリストル・ローバーズが、見事に逆転で自動昇格権を手にしたのだ。

91番目からの巻き返し

 7点差の勝利は大偉業だった。『BBC』もホームページでスコアを伝える際に、閲覧者が見間違えないように「7-0 (SEVEN)」とわざわざふりがなを振ったほど。しかも7-0の結果は、138年のブリストル・ローバーズのクラブ史においてリーグ戦の最大得点差の勝利記録に並ぶものだった。

 それだけではない。ローバーズは、シーズン序盤に苦戦を強いられて9月の時点では24チーム中23位にいたのだ。「我われはイングランドで91番目のチームだったが、そこから巻き返した」とオーナーもご満悦だった。

 そんな奇跡を実現させたのが、現役時代には“悪童”のレッテルを貼られたジョーイ・バートン監督(39歳)である。シーズン途中からチームを率いた昨季は3部リーグから降格の憂き目に遭ったが、1年でチームを3部昇格に導いてみせた。

現役時代は“悪童”と名をはせたジョーイ・バートン監督がチームを昇格へと導いた

 それにしても「7-0」は狙ってできることではない。ブリストル・ローバーズはクラブの公式ツイッターに、往年のガブリエル・バティストゥータの写真を載せ、こんな書き込みをした。

 「ローバーズ以外のユニフォームで一番好きな歴代ユニフォームは? どういうわけか、これが好きなんだ」

 バティストゥータが着用しているのはフィオレンティーナのユニフォーム。胸のスポンサーロゴは「7 UP」だ。7点差の勝利を収めたブリストル・ローバーズとバートン監督を称えたい。


Photos: Getty Images

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Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。