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難民のシンデレラストーリー。セリエA初得点を決めたアタランタの18歳FW

2022.03.23

 アタランタのプリマベーラ(U-19)に所属するギニア出身の18歳FWムスタファ・シセが、3月20日のセリエA第30節ボローニャ戦でトップチームに招集され、途中出場からセリエA初ゴールを決めた。

1カ月でのスピード出世

 ドゥバン・サパタをはじめとするFW陣に故障者が多発する中、シセにとってこの日がトップチーム2回目の招集であった。65分にルイス・ムリエルに代わって出場すると、0-0で迎えた82分に決勝ゴールを決めた。前線でタイミング良くフリーになると、マリオ・パシャリッチからのスルーパスを呼び込み左足でシュート。18歳187日での初ゴールは、クラブではアマド・ディアロ(17歳108日)に次いで2番目に若い記録となった。

 アタランタのプリマベーラに籍を置いたのは2月23日のこと。同27日のプリマベーラ全国選手権ミラン戦に先発初出場を果たして2ゴールを決めると、その活躍はトップチームのジャン・ピエロ・ガスペリーニ監督に伝わり、FW不足に悩まされるトップチームへと誘われ練習するようになった。

 そしてセリエA第29節のジェノア戦で初招集を受けるや、2試合目で初出場しゴールと、ここまでわずか1カ月のスピード出世だった。

8部からの大幅ステップアップ

 しかし、シセのキャリアが驚きなのはそれだけではない。アタランタの所属前は、8部相当となる「セコンダ・カテゴリア」に所属する難民のサッカークラブでプレーしており、公式戦出場の経験すらない選手だった。

 父親の死に伴い、ギニアの首都コナクリからイタリアに渡ってきたのは16歳の時のこと。そこからプーリア州の難民生活保護団体の支援を受け、働きに出たり職業訓練コースに通ったりする難民の若者の社会順応を促進する目的で設立された「リナッシタ・レフュジーズ」でプレーをするようになった。

 保護者がなく、単身で渡ってきた未成年のシセは、イタリアサッカー連盟(FIGC)の規定により公式戦に出場できなかったが、地元のクラブと練習試合をするうちにそのパフォーマンスが評判となった。やがてその声はアタランタのスカウトまで伝わり、クラブは1つ残していたEU圏外選手獲得枠を使ってシセの獲得を決断。3年契約を提示し、プロ選手として雇用した。

 ボローニャ戦後、ガスペリーニ監督に代わって取材対応を行ったトゥリオ・グリッティ助監督は「FW全員が起用可能な状態だったら、恐らく彼を招集することはなく、ここにも連れてきていなかっただろう。だからこそこれは素晴らしいことだし、トップチーム招集を決めたガスペリーニ監督が何かを引き出す名人であることがまたも証明された」と地元メディアに語った。


Photo: Getty Images

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Profile

神尾 光臣

1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。