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監督の辞任、主力選手の減給…終わらないコロナ禍がブンデスリーガにもたらす混乱

2021.11.21

 バイエルンやドイツ代表の主軸として活躍するヨシュア・キミッヒが、新型コロナウイルスのワクチン未摂取であり、摂取に躊躇していることを試合後のインタビューで公表して以来、ドイツ国内のサッカーメディアの間では、プロサッカー選手のワクチン接種について話題になっている。

 ワクチン接種率が国民の7割を目前に停滞し、新型コロナウイルス感染者数が激増する中、ケルンではカーニバルが行われ、ブンデスリーガのスタジアムでもいまだにゆるいチェックのまま高い収容率を維持していることが問題視されていた。

ワクチン接種証明書偽造の疑いで辞任

 11月18日の夜には、ブレーメンの監督を務めていたマルクス・アンファングとアシスタントコーチのフロリアン・ユンゲがワクチン接種証明書を偽造した疑いでブレーメンの警察から調査を受けている。翌日の時点では、マネージャーのフランク・バウマンも「アンファングはワクチン接種を済ませており、それがすべて正しい手順で行われたことを保証した。我われに疑う理由はない」と言っていたものの、シャルケとの試合を控えた20日の午前中にアンファングの辞任を発表した。

 一般紙であり、刑事事件などの情報もすぐに入手できる『ビルト』はその背景を説明。PCR検査で陽性となったDFマルコ・フリーデルの濃厚接触者として地元保健局に提出した書類に疑わしい点が散見されたため、保健局が通報したことで発覚したという。

 『キッカー』は、バウマンの「この24時間の間に、本当にたくさんのことが起きた。疑惑が持たれた一件はとても重く受け止めている。クラブとして何が正しい決断か、慎重に考えなければならなくなった」という言葉を紹介した。バウマンはアンファングとユンゲの辞任を受け入れたことについて「すぐにある程度の落ち着きを取り戻すためには正しい判断だった。(事件が解決されるまでに時間がかかるため)チームの成績面やクラブのイメージ全体に影響を与えることは明らかだった」と続けた。

 ワクチン証明書の偽造がドイツ国内で問題となっている真っ只中で、自クラブの“顔”であるべきトップチームの監督のスキャンダルに素早く対応した格好となった。

ワクチン接種証明証偽造疑惑により辞任したブレーメンのアンファング監督

キミッヒはすでに1億円以上の減給

 11月20日付の『ビルト』によれば、バイエルンのワクチン未摂取者であるキミッヒ、セルジュ・ニャブリ、ジャマル・ムシアラ、エリック・マクシム・チュポ・モティング、そしてミケール・キュイザンスの5人は、18日にクラブ首脳陣との話し合いの場を持ったという。

 その話し合いの場では、ワクチン未摂取者が隔離期間に入った場合、バイエルンはその分の給与を支払わないことを伝え、全体トレーニングから隔離することも検討していると伝えられた。ワクチンを摂取しない個人の権利を尊重するが、自分たちも雇用主としての権利を主張する、というわけだ。

 これまではワクチン未摂取者が隔離期間に入った場合、雇用主が行政に申請すれば、6週間まではその分の給与を全額補填するシステムになっていた。7週間目以降は給与の67%を補填し、1カ月間の補填最大額は2016ユーロ(約28万円)と決まっていた。ところが、ワクチンの接種率が停滞したことで、11月から未摂取者の場合は行政が給与を補填しないことも決まった。これにより、経済的な面からもワクチン接種に向けて圧力をかけようというわけだ。

 年俸2000万ユーロ(約27億円)と言われるキミッヒの場合、行政からの補填額などは微々たるものだが、バイエルンは一般世論の動きに歩調を合わせるために強硬な姿勢を示した。代表活動期間中の濃厚接触者認定などで隔離期間がすでに2週間に達したキミッヒは、76万8000ユーロ(約1億700万円)が減給されたことになる。

ザクセン州は無観客開催が決定

 新型コロナウイルスの感染者が急激に増え続けているバイエルン州では、すでにロックダウンに近い措置を取ろうとしており、アリアンツ・アレーナでの試合の入場者もわずか25%の収容率に制限したことが発表された。

 一方、バイエルン州と同じく新型コロナウイルス新規感染者数が増え続け、ワクチン接種率もわずか58%とダントツに低いザクセン州では、プロスポーツの試合は無観客で行われることが11月19日に決定した。この規則には、ブンデスリーガ1部のRBライプツィヒ、同2部のディナモ・ドレスデンやエルツゲビルゲ・アウエも該当する。12月12日までの暫定的な処置としているが、反政府的な態度を取るネオナチや陰謀論者が多いザクセン州の現状を考えると、シーズンオフまで無観客が続いてもおかしくない状態だ。

 ドイツ国内では、ワクチン接種者と反ワクチン・ワクチン懐疑論者との間で不毛な対立が見え始めており、それぞれ多かれ少なかれ不満や苛立ちを感じている。ユリアン・ナーゲルスマンが「バイエルンに来て初めて怒りを覚える」と話したアウクスブルクでの敗戦を見ても分かるように、こういったわだかまりがチームのパフォーマンスに与える影響は明らかだ。

 SNS上では「次の監督探しの時にはワクチン証明のQRコードを確認しなければならない」といった皮肉も書き込まれているが、それも現実的に検討しなければならない事態になりつつある。


Photos: Getty Images

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バイエルンブレーメンヨシュア・キミッヒライプツィヒ新型コロナウイルス

Profile

鈴木 達朗

宮城県出身、2006年よりドイツ在住。2008年、ベルリンでドイツ文学修士過程中に当時プレーしていたクラブから頼まれてサッカーコーチに。卒業後は縁あってスポーツ取材、記事執筆の世界へ進出。運と周囲の人々のおかげで現在まで活動を続ける。ベルリンを拠点に、ピッチ内外の現場で活動する人間として先行事例になりそうな情報を共有することを心がけている。footballista読者の発想のヒントになれば幸いです。