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段階的に観客入場を解禁。熱気が戻りつつあるブラジルサッカー

2021.11.06

 新型コロナウイルス感染による死者が60万人を超えたブラジルだが、10月末の時点でワクチンの2回接種(1回接種型なら1回)が全国で56.8%と進み、感染者数と死亡者数も大幅に減少したことから、全国の各州・各市の決定に基づき、様々な経済活動の規制が緩和されつつある。

 サッカーの試合にも段階的に観客の入場が許可され始め、選手たちが「サポーターが僕らを後押ししてくれた」と喜びを語る場面が見られるようになった。

9月から徐々にスタンドを開放

 ブラジル代表でも、11月11日にサンパウロのネオ・キミカ・アレーナ(旧称アレーナ・コリンチャンス)で開催される南米予選コロンビア戦に向けて、その観客数の決定が待たれている。混乱や人の密集を避けるため、チケットの販売はすべてブラジルサッカー連盟(CBF)が運営するオンラインシステムで行われる予定だ。

 観客入場については、ここまで慎重に進められてきた。9月5日のアルゼンチン戦は今回と同じネオ・キミカ・アレーナが会場だったが、当初は1万2000人の観客が検討されながら、最終的には1500人の招待客のみが、コロナの陰性証明とともに入場した。

 アレーナ・ジ・ペルナンブーコで開催された9月9日のペルー戦は、スタジアム所在地であるペルナンブーコ州の決定によって完全に無観客となった。

 初めて一般客が入ったのは、10月14日のウルグアイ戦。アマゾニア州マナウスにあるアレーナ・ダ・アマゾニアに、各政府機関や団体の合意の下、約1万4000人の入場が許可されたのだ。

 チケット購入の条件は、申し込みの際にワクチンの2回接種(1回接種型の場合のみ1回)の証明書を添付すること。または、1回目の接種証明とともに、指定の時間までに新型コロナ感染テストの陰性証明を提出することだった。ワクチン接種の対象とならない12歳未満の子供も、検査の陰性証明が義務づけられた。

 観客のうち3000人は、州政府がワクチン推進キャンペーンのために、2回接種した人のみを対象にして主催したオンライン抽選会の当選者だった。

マナウスでは地元の公立学校の生徒約150人が 試合2日前の練習を見学した(Photo: Lucas Figueiredo/CBF)
チームが滞在するホテルでは、ネイマールら選手とファンが交流する場面も(Photo: Lucas Figueiredo/CBF)

「正しい道を歩んでいる」

 マナウスは今年に入ってから治療用酸素の不足に陥った時期があった。遠方からの酸素ボンベの供給や、他の州への患者の搬送が大規模に行われるなど、パンデミックによって、国内で最も深刻な状況となった地域の1つでもある。

 試合当日の観客のインタビューを見ると「二度生き返った思いだ。一度目は新型コロナの重症化から目覚めた時。二度目は今。愛するサッカーを、再びスタジアムで見ることができた」「こうしてスタジアムでブラジル代表の試合が見られたことで、これからは悪いことがすべて終わり、普通の生活が本当に戻ってくるんだという小さな希望が得られた」と語る人もいて、サッカーの持つ力の大きさをあらためて感じた。

 州知事は、州と市の政府、保健関連の機関や団体によるこのビッグイベントの運営の成功に「今日の試合は、アマゾナス州が新型コロナとの戦いにおいて正しい道を歩んでいることを象徴するものになった」と語っていた。

 試合は4-1。強豪ウルグアイに快勝し、ゴールの歓喜はもちろん、絶好調だったネイマールへの喝采、全国区の人気を誇るフラメンゴのガブリエウ・バルボーサへの歓声、チッチ監督に対する「オレーオレオレオラー、チッチ」の歌声も響いた。

 入場者は収容人数の35%だったとはいえ、フレッジ(マンチェスター・ユナイテッド)は試合後「スタジアムが満員のように感じられる声援だった」と語っていた。

 この日、2ゴールを決めたハフィーニャも「この観客、この盛り上がり、この雰囲気を、人生を通して忘れることはない」と感激の様子。チッチや選手たちは「ありがとう、マナウス」と、インタビューやSNSで感謝を示した。

マナウスでのウルグアイ戦では約1万4000人の観客の入場が許可された(Photo: Lucas Figueiredo/CBF)

サポーターの暴動も発生

 クラブの試合も同じく、段階的に観客の入場が始まっている。

 フラメンゴがホームスタジアムとするマラカナンは、所在地であるリオデジャネイロ市によって、収容人員7万2000人、100%の観客入場が許可された。ただし、リオデジャネイロ州政府の判断により、10月27日のコパ・ド・ブラジル準決勝アトレチコ・パラナエンセ戦では、入場券が3万枚のみ発売された。

 その3日後のブラジル全国選手権アトレチコ・ミネイロ戦では、初めて他の州からの観客が認められ、4万枚の入場券発売のうち10%はミナスジェライス州を本拠地とする対戦相手のサポーター向けに配分された。

フラメンゴvsアトレチコ・ミネイロ戦には4万人の観客が入った(Photo: Marcelo Cortes/Flamengo)

 一方で、ブラジルサッカーの負の名物とも言えるサポーターの暴動も復活してしまった。

 10月31日、グレミオのホームでの全国選手権パルメイラス戦では1万4000人の観客入場が許可されたのだが、現在グレミオは20チーム中19位と2部降格圏であえいでいる。この試合も先制したものの、最終的に1-3で敗れてしまった。

 終了間際のグレミオのゴールがVARによってオフサイドと判定されたことも影響し、試合終了後、一部の観客が暴徒化した。ピッチに乱入して警官ともみ合い、VARのシステムが設置されたボックスを壊したのだ。

 これにより、スポーツ裁判所はグレミオの今季の全国選手権の残り9試合について、ホームゲームを無観客とし、アウェイゲームへのグレミオサポーターの立ち入りを禁止した。

 パンデミックによる長い無観客の時期を経て、ようやくこの段階まで辿り着いた中、歓喜にあふれた話題がほとんどではあるものの、これはクラブや選手、そしてサポーターにとって、非常に残念な結果となってしまった。


Photos: Lucas Figueiredo/CBF, Marcelo Cortes/Flamengo, Gilvan de Souza/Flamengo

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Profile

藤原 清美

2001年、リオデジャネイロに拠点を移し、スポーツやドキュメンタリー、紀行などの分野で取材活動。特にサッカーではブラジル代表チームや選手の取材で世界中を飛び回り、日本とブラジル両国のTV・執筆等で成果を発表している。W杯6大会取材。著書に『セレソン 人生の勝者たち 「最強集団」から学ぶ15の言葉』(ソル・メディア)『感動!ブラジルサッカー』(講談社現代新書)。YouTube『Planeta Kiyomi』も運営中。