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イングランド4部の平凡なリーグ戦がなぜか注目を集めた理由とは?

2021.10.09

 今月始め、イングランド下部リーグで注目の一戦が行われた。その試合は首位攻防戦でもなければ、生き残りをかけた残留争いの直接対決でもない。というか、2部リーグでも3部リーグでもない。イングランド4部の平凡なリーグ戦だったのだが、43年ぶりの快挙に注目が集まった。

 その試合というのが10月2日のエクセター・シティvsウォルソールである。エクセターは、これまでトップリーグどころか2部リーグにも昇格したことがないイングランド南部の地方クラブだ。ウォルソールだって一度もトップリーグに上がったことがない。両者の対戦は2-2の打ち合いに終わったが、結果も大して重要ではない。

 それがなぜ歴史的な一戦になったかというと、それは両ベンチ前のテクニカルエリアに立つ監督にあった。

監督の名前はどちらも…

 ウォルソールを率いるのは、ポーツマスやボルトンで活躍したマット・テイラーだ。ウェストハムやバーンリーでもプレーし、プレミアリーグ歴代95位の通算325試合の出場を誇る。左足で高精度のクロスを上げる姿を覚えているファンも多いはずだ。

ウォルソールのマット・テイラー監督は現役時代、ウェストハムなどでもプレーした

 彼は2019年に現役を退いた後、トッテナムのU-18チームのコーチを経て、今年5月からイングランド4部のウォルソールを率いている。

 一方、エクセターを率いるのは同クラブのOBだ。彼はエヴァートンの下部組織でキャリアをスタートさせるも、トップチームには上がれずに下部リーグのクラブを渡り歩き、2007年から2011年にはエクセターでプレー。その後、一度もプレミアリーグの舞台に立つことなく2016年に現役を退き、2018年からエクセターを率いている。そして何より肝心なことに、彼の名前もマット・テイラーなのだ。

 奇しくも、この試合は“同姓同名”の監督対戦となった。『BBC』によると、イングランドのフットボールリーグで同姓同名の監督が対戦するのは43年ぶりのこと。1978年にフルアムのボビー・キャンベル監督がブリストル・ローバーズのボビー・キャンベル監督と対戦して以来の珍事だという。

結果を出す“無名”のテイラー

 そんな対戦を前に、知名度の低いエクセターのマット・テイラーは「片やプレミアリーグで活躍した選手さ」と『BBC』に語った。

 「オックスフォード(イングランド3部)にはマティ・テイラーという選手がいる。彼は素晴らしいキャリアを送ってきた。それから同じ名前の天気予報士もいる。Googleで検索をしたら、私はマット・テイラー界で4~6番目だろうね。私は最も名が知られていないマット・テイラーなんだ」

 とはいえ、今季ここまで結果を出しているのは“無名”のマット・テイラーだ。エクセターは開幕10試合を終えた時点で6位につけており、昇格プレーオフ圏内だ。

 一方で、U-21イングランド代表経験を持つウォルソールのテイラーは監督1年目で苦戦しており、下から4番目の21位。このままでは残留争いに身を置くことになりそうだ。

同姓同名はややこしい

 結局、初の“マット・テイラー・ダービー”は2-2の痛み分けに終わり、勝ち点1ずつを分け合った。現役時代を含めて初対戦となった両者だが、実は今年5月にニアミスがあった。というのも、エクセターを率いて3シーズンを戦ってきたマット・テイラーにウォルソールからの引き抜きの噂が出たのである。

 ウォルソールの次期監督オッズにて「マッテ・テイラー」の名前が急浮上。寝耳に水だったエクセターの指揮官は、記者に質問されると「本当に私のことかい? ポーツマスやスウィンドンでプレーした、もう一人のマット・テイラーじゃないの?」と冗談を飛ばしていたのだが、冗談ではなく本当にもう1人のテイラーのことだったのだ(中村俊輔がセルティックに移籍する際、英国メディアが誤って俳優の中村俊介の写真を掲載したのを思い出す……).

 そんなややこしい“同姓同名”だが、1980年代には「ギャリー・スティーブンズ」という選手が同時期にイングランド代表にいたという。そういえば、プレミアリーグにポール・ロビンソンが複数(元リーズのGKと元ウェストブロムのDF)いたシーズンもあったと記憶している。

 欧米のファーストネームは日本に比べると種類が少ないため、もっと頻繁に同姓同名ダービーが起きても不思議ではないだろう。


Photos: Getty Images

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Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。