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絶対女王リヨンの15連覇を阻止しPSGが初優勝。群雄割拠の時代へ

2021.06.08

 今季のフランスの女子リーグで、劇的な王座交代劇があった。

 2006-07シーズンから怒涛の14連覇と、揺るぎない王座に就いていたリヨンの牙城がついに崩れ、パリ・サンジェルマンがクラブ史上初の優勝を飾った。

リヨン1強時代がついに終焉

 これはけっこう凄いことだ。

 近年、フランス女子リーグでのリヨンといえば、7-0や8-0での勝利は当たり前。15-0といった大勝でも驚かないほどだった。勝って当然で、リヨンと対戦する相手のほとんどは、勝ち星を目指すなど論外。「1点でも取れるか?」というところに目標を置くような、手の届かない相手だったのだ。

 この14年の間には、22試合全勝というシーズンもある。その中の1つである2014-15シーズンは、得失点差+141という恐ろしい数字とともに圧勝している。

 その間、UEFA女子チャンピオンズリーグでも7度優勝している彼女たちは、フランスのみならず、ヨーロッパの最強女子軍団だった。

 しかし、やはり歴史は移り行くもの。

 リヨンが最強チームになる以前は、フランスで名門女子クラブといえばパリ近郊を拠点とするジュビジーで、フランス代表選手も数多く輩出していた。ちなみに、ジュビジーは2017年3月、リーグ2に所属する男子クラブ、パリFCと合併して現在はパリFC女子部となっている。

 リヨン女子部の創設は2004年、近郊にあったFCリヨンが財政難にあったところ、リヨンのジャン・ミシェル・オラス会長が権利を買い取ったのが始まりで、伝説のキャプテンと言われたソニア・ボンパストールが加入し、身長187cmを誇るフランス女子代表の現キャプテン、ウェンディ・ルナールが17歳でプロデビューした2006-07シーズンに初優勝し、そこから常勝伝説が始まった。

 オラス会長は、フランスで初めて女子部も完全にプロ化した。ジュビジーでさえ、選手たちは別の職業で生活費を稼ぐセミプロであり、リーグの中には大学生チームもあった。そんな中、サッカーだけに集中できる環境が与えられていたリヨンには、おのずと代表クラスのトップ選手が集まってきた。

 だからリヨンの一人勝ち状態は言ってみれば当然なのだが、だからこそオラス会長は結果に厳しく、2-0、3-0といった結果での勝利は許さなかった。常に圧倒的な違いを見せ付けることを課してきたことも、リヨンが14年間も絶対女王でい続けられた要因の1つだ。

オラス会長の下、常勝軍団と化していたリヨンだったが、ついに王座を明け渡した

プロ化以降、着実に成長したPSG

 そして、彼女たちの欧州での活躍ぶりや、世界的な女子サッカー人気の高まりは、他クラブへの刺激にもなった。

 2011年にカタール資本がPSGの実権を握ると、彼らは女子部も即プロ化することを決定。翌シーズンから積極補強に乗り出し、ファリッド・ベンスティティ(2012-2016)、パトリス・レール(2016-2018)と、リヨンを2004年から2014年まで率いた両監督をそっくり連れてきた。

 選手もリヨンで契約満了になった守備的MFオーレリー・カシ(現レアル・マドリー)、コスタリカ人MFシャーリー・クルス(現OLレイン)といった主力メンバーがPSGに鞍替えし、国外からも優秀な選手をどんどん引き抜いた。

 そうしてプロ化した以降は、2016-17シーズンを除いて毎年、リヨンに次ぐ2位につけ、着々と力を付けていった。

 欧州でも、2014-15シーズンに男子より一足早く女子CLの決勝に到達。このときは安藤梢がいたフランクフルトに敗れて準優勝となった。

 2016-17シーズンにも再び決勝に進出。この時はリヨンとのフランス対決となり、延長戦終了まで0-0と膠着した試合は、8人ずつが蹴った熾烈なPK戦をリヨンが7-6で制した。

 しかし今季は、準々決勝でPSGがリヨンをアウェイゴールの差で締め出した。リーグ戦でも、今季はホームで1-0と勝利し、アウェイでも0-0と負けなしで乗り切った。そして、リヨンはこのPSG戦での1敗が命取りになった。

集団としてまとめることに成功

 PSGは、ともにフランス代表のストライカーであるマリー・アントワネット・カトトとカディディアト・ディアニの2人で計34点という攻撃力もさることながら、シーズンを通して4失点と守備力が抜群に高かった。

 その立役者が、2019年のW杯でも大活躍したチリ代表GKクリスティアナ・エンドラーだ。反射神経抜群の彼女のプレーは見応え抜群。現在、世界最高クラスのGKで、来季はライバルのリヨンに移籍するという噂もある。

 カタール体制以降、ナセル・アル・ケライフィ会長の指揮の下、着々とチームを作ってきた成果が、2012-13シーズンから数えて9年目の今季、優勝という形で実を結んだ。

 最初はリヨンに追い付くべく、彼らに倣う形で補強も行っていたが、その過程で徐々に自分たちらしいチーム作りに移行し、2018-19シーズンから指揮を執る現監督のオリビエ・エショフアニが、集団としてまとめ上げることに成功した。

 「私が着任した時、クラブには個人技に優れた選手が大勢いて、タレントにあふれていた。私はその個々の素材を、ピッチの中だけでなく外でも、チームとして団結させることを念頭にやってきた」

 指揮官は勝因をそのように語っている。

 一方のリヨンだが、2013-14シーズンから8年間所属し、連覇に大貢献した熊谷紗希がバイエルンへの移籍を決めた。4月に監督が解任となり、その後を継いだ新指揮官は、元キャプテンのボンパストールだ。

 新しい時代を迎えているリヨンにとっても、これまでのような1人勝ちのリーグよりもやりがいがあることだろう。

 新チャンピオンの誕生に、パリFC傘下となった旧ジュビジー、やはり強力な男子チームの下、2016-17シーズンのトップリーグ昇格以降めきめき上昇しているボルドーと、フランス女子リーグはここから群雄割拠の時代に突入しそうな気配だ。


Photos: Getty Images

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Profile

小川 由紀子

ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。

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