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リーグ1を18チーム制に再編? その狙いと実現の可能性を探る

2020.11.24

 発端は、プロフットボールリーグ(LFP)のバンサン・ラブリューヌ会長の発言だった。

 11月8日の日曜紙『ジュルナル・デュ・ディマンシュ』とのインタビューで、会長は「(現行の20クラブ制から)18クラブ制への移行」を、はっきりとは提案しなかったものの、「現在のこの状況は、リーグの形式を見直すいい機会だ。(中略)リーグ1、リーグ2に参戦するクラブ数について検討してもいいのではないか」と述べたのだった。

コロナ禍と放映権問題がきっかけに

 この発言のきっかけになったのは、コロナ禍にある今シーズンのスケジュールが例年にも増して過密であること。そしてその影響か、フランス勢の欧州カップ戦での戦績が壊滅的であることだ。

 今シーズンは、UEFAチャンピオンズリーグにパリ・サンジェルマン(昨季のリーグ1優勝者)、マルセイユ(同2位)、レンヌ(3位)、そしてUEFAヨーロッパリーグにリール(4位)とニース(5位)が参戦しているが、11月23日の時点でフランス勢の全15試合の成績は4勝3分9敗と大きく負け越している。

 リールだけは、敵地でミランを0-3で倒すなど、2勝1分と無敗をキープしてグループ首位に立っているが、CLでは前年度ファナリストのPSGは1勝2敗でグループHの3位、マルセイユは全敗、レンヌも1分2敗で両者ともグループ最下位と、いずれもノックアウトステージ進出圏外にいる。

 ラビュルーヌ会長は、PSGがUEFAカップ・ウィナーズ・カップを制した1996年を最後に、フランス勢が一度も欧州でトロフィーを掲げていない間、9カ国がいずれかのコンペティションで頂点に立っている実情を見ても、フランスを欧州の“5大リーグ”と呼ぶには(最近はあまり呼ばれていないが)あまりに有名無実化していると主張しているのだ。

 もう1つ、今シーズンからリーグ1の放映権の大半を握っているスペインのマルチメディア会社『メディアプロ』が、コロナ禍での経済状況悪化を理由に放映権料を滞納する事態となっていて、放映権問題が勃発していることも会長の発言の背景にある。

 どのクラブにとっても放映権料は重要な財源だ。4年間のはずだった『メディアプロ』との契約を他者に譲渡する可能性も浮上している今、「上位のクラブにより多くの収入が生まれ、同時に小規模のクラブを強化することでリーグ2の放映権も魅力的にする」ことが必要であり、そのためにリーグを再編することは有効であると会長は語っている。

好意的な意見もあるが…

 周辺国では、現CLチャンピオンのバイエルンを擁するドイツのブンデスリーガ、ベルギーのジュピラー・プロ・リーグ、オランダのエールディビジ、ポルトガルのプリメイラ・リーガなどが18クラブ制を採用している。

 フランスでも、1998年のワールドカップの前年、代表選手たちのコンディションを最適化したいという当時の代表監督エメ・ジャケ氏の要望で18クラブ制を導入し、2001-02シーズンまで続けている。

 この時LFP会長を勤めていたのは、現フランスサッカー連盟会長のノエル・ル・グラエ氏なのだが、彼は今回の18クラブへの移行案については「検討する価値はあるが、放映権やコロナなどの問題を抱えている今はその時期ではない」と消極的だ。

 一方、フランス代表のディディエ・デシャン監督は「エリートリーグがより凝縮されればフランスサッカーのレベルも上がる」と前向き。チームあたり年間4試合が削減されるのも有効だと考えている様子だ。

フランス代表のデシャン監督(左)は18チーム制への移行に肯定的な意見を持っている

 リーグの規模が小さくなれば、選手もより少ない枠に凝縮することになり、試合のレベルアップに繋がる。一方で各クラブへの分配金は、分母が小さくなることで取り分が増える、というのが賛成派の主張するメリットだ。

クラブごとに違う目的意識

 ただ、現実的には実現はかなり難しいように思う。

 順位表の上の方と下の方とでは、リーグに参戦している目的や意義、サポーターが求めているものは違うから、全クラブの足並みをそろえるのは容易ではない。

 上位陣は欧州カップ戦での善戦、そしてそこから生まれる収益を狙っている。国内リーグの試合数が減ってドイツのように1カ月近いウィンターブレイクが取れれば、リフレッシュして決勝トーナメントに臨めると歓迎するだろう。

 リーグ1とリーグ2を行ったり来たりしているような下位のクラブにとっては、リーグ1の枠は1つでも多いほうがありがたいし、試合数が減ることにもメリットはない。

 彼らはリーグ優勝を現実的な目標にはしていないが、トップリーグに参戦していれば、ネイマールやキリアン・ムバッペ、マルセイユが街のスタジアムにやって来る。そのために予算を投じてスタジアムを整備したクラブだってあるほどだ。

 そして、18クラブ制になった時に影響を受けそうなこうした地方の小クラブほど、フットボールは地元住人たちの生活に根付いた、欠かすことのできないアクティビティになっている。娯楽が限られる地方のファンたちにとって、サッカー観戦は大きな楽しみだからだ。

 人口約3万5000人のオセールのスタジアムはキャパシティ1万8541人と、人口の半分以上だ。さすがに満席になる試合は限られるが、リーグ1参戦時は平均1万2000人以上が集う。

 川島永嗣が所属するストラスブールも、家族連れが多くてものすごく雰囲気がいいし、トヨタ工場のあるバランシエンヌやランスなど、フランス北部のファンも熱い。

 逆にPSGのパルク・デ・プランスなどは、数字の上では毎回ほぼ満席だが、これは完売しているシーズンシート分がすべて計上されているからで、実際には必ずしも所有者はスタジアムに足を運ばないので、普段のリーグ戦で満席になることはほとんどない。土曜の17時という「お買い物タイム」でキックオフされる試合ともなれば、6、7割しか埋まらない。

欧州での好成績に繋がるかは未知数

 欧州カップ戦での成果はその国のサッカーのレベルを象徴するし、実質的にもフランス勢の活躍がなければUEFA指数が稼げず、ゆくゆくは参戦クラブ数が減ることになるから、「エリート優遇説」を推す声にも一理ある。

 とはいえ、「18クラブ制=スケジュールにゆとり+増収=欧州カップ戦善戦」というのは机上の空論でしかない。

 『レキップ』に掲載されていたデータによれば、前回の18クラブ制の期間中、欧州カップ戦でフランス勢が決勝に到達したのはわずか一度きりだった(1999年のUEFA杯決勝にマルセイユが進出し、パルマに0-3で敗れた)。

18チーム制を採用していた1999年、マルセイユがUEFA杯決勝に進出したが、0-3で敗れた

 「我われのメリットがどこにあるのかわからない。明確な目的がはっきりしない」とアンジェの会長が語るのももっともだし、現在リーグ2首位のパリFCの会長が「過去20年のCL勝者のうち16、過去4回のワールドカップ優勝者のうち3カ国が20クラブ制リーグのチームだ」と具体的な数字を提示していたのにも説得力があった。

 『レキップ』が行ったアンケートでは、61%が18クラブ制に賛成していた。フランスリーグをより魅力的にするための改革が必要、という案には大いに賛成だが、フランスのサッカー文化に合う策は何か、というところから考えていく必要があるように思う。


Photos: Getty Images

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ディディエ・デシャンパリ・サンジェルマンマルセイユ

Profile

小川 由紀子

1992年より欧州在住。96年から英国でサッカー取材を始め、F1、自転車、バスケなど他競技にも手を染める。99年以来パリに住まうが実は南米贔屓で、リーグ1のラテンアメリカ化を密かに歓迎しつつ、ブラジル音楽とカポエイラのレッスンにまい進中。