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ワールドユースのPK戦勝利を経験した守護神の思索。「彩艶だったらワールドカップのPK戦でも勝ちを持ってこられるのかなと」南雄太インタビュー(後編)

2026.04.26

【特集】“もう一つのサッカー”PK戦の深層#8

90分で決着がつかなくても、試合は終わらない――2026年の百年構想リーグでJリーグは、リーグ戦としては異例のPK戦導入に踏み切った。W杯過去2大会で日本のベスト8を阻んだ壁。それがPK戦だった。Jリーグの日常に新たな景色が加わったこのタイミングで、“もう一つのサッカー”とも言えるPK戦の深層を多角的に考える。

第7&8回はJリーグ通算666試合出場を誇る南雄太のインタビューをお届けする。プレーヤーとしても1999年のワールドユースでPK戦に勝った実績を持ち、現在は流通経済大柏高校のGKコーチを務め、一昨年度の高校選手権決勝では指導者としてPK戦も経験した日本サッカー界が誇る名守護神が、GKとPKについての思考を巡らせる。

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高校生の公式戦でも収集したPKデータは活用している!

――キッカーのデータに関しては、重視するタイプと重視しないタイプに分かれるものですか?

 「頭には入れておきますけど、僕は最後に大事になってくるのは、実際にキッカーが出てきた時の空気感だと思います。今はデータが普及しているのはキッカー側もわかっているので、その駆け引きですよね。もうデータは知っているだろうから、この前とは逆に蹴るとか、そこでキーパー側もあえて蹴っていない方に飛んでみるとか、そこは駆け引きのやり合いじゃないですか。そうなると、結局は勘の方がいいかなと思ってしまいますよね。

 それこそ僕がGKコーチをやらせてもらっている流経(流通経済大柏高校)が、高校選手権の決勝で前橋育英とやったPK戦も、全部データは持っていたので、キッカーが出てくるたびにベンチから指示を送っていたんですよ。でも、ほぼほぼ逆に蹴られましたね。

 実際に育英がどう考えていたかはわからないですけど、やっぱりデータとは違う方に蹴っていたので、いつもとは違う選択肢を選んだ選手が多かったのかなあと。逆に読まれても、自信があってこのコースに蹴れば入るという選手は、その方向に蹴るかもしれないですよね」

――高校生の試合でもデータは取っているんですね。

 「取っていますよ。ただ、最近はそれもどうなんだろうなとは思ってきました。向こうもそれはわかっていますからね。僕も最後はキーパーに任せた方がいいかなと思い始めています。なかなか流経がPK戦で勝てないので」

――お話のあった一昨年度の選手権決勝(9対10)と、昨年度のインターハイ準決勝(大津高校戦/8対9)と、どちらのPK戦もあと一歩で勝てなかったですね。

 「全国優勝するためには、必ず1回はPK戦を乗り越えないといけないんですよ。そこを流経は乗り越えられていないので、自分の責任は感じています」

中村航輔がトライした「全部同じ方向へ飛ぶ」という策略

――ちなみに、ここまでの百年構想Jリーグで『PKストップが上手いな』と思ったキーパーはいましたか?

 「みんなそれぞれやり方がありますよね。航輔(中村航輔/セレッソ大阪)はある試合のPK戦で全部同じ方向に飛んだんですよ。それは僕も考えたことがあります。『5本全部逆はないだろう』と。その中で1本取れればと思って、実際にそれをやったこともありました。航輔はそれで2本止めたんですよ。

 あとは右利きだったら、引っ張る方が絶対に強いボールを蹴れるはずなんです。インサイドで流した時はそんなに強いボールを蹴れないじゃないですか。だったら、インサイドで弱いボールを蹴った時なら止められるかなとか。毎回一緒ではないので、こっちもいろいろ考えたうえで、向こうもいろいろ考えるので、そこはやっぱり駆け引きですよね。

 あとは、やっぱりサイズが大きいキーパーには蹴りづらいでしょう。あるいはそこまで大きくなくても、『なんか嫌だな』とキッカーに思わせられるキーパーは良いですよね。ちょっと文字で表現するのは難しいんですけど、対峙した時の空気感として、『あ、このキーパーは甘いコースに蹴ったら取られそうだな』とキッカーが感じた時点でアドバンテージになりますし、『入りそうだな』と思われたら自信を持って蹴られますし、そこは絶対的にあると思います」

――6節までで一番PK戦に勝っているのはFC東京で、3試合に勝っているんですね。キーパーは全部キム・スンギュ選手なんですけど、鹿島戦はPKストップがあったものの、あとの2試合は相手がキックを外していて、スンギュ選手は止めてはいないんです。これもキーパーの雰囲気勝ちみたいなところもあるのでしょうか?

 「あると思いますよ。スンギュですから。あとはダン(シュミット・ダニエル)もそうですよね。あのサイズで立っていたら、他のキーパー以上に相当ゴールが小さく見えると思いますよ。それで強く蹴ろうと思って、力んで外すこともあるでしょうし。その立ち振る舞いみたいなところも絶対に大事だと思います」

――これも6節までのデータで、PK戦を4回やっているのは水戸ホーリーホック、清水エスパルス、ファジアーノ岡山と3チームあって、どのチームも結果は1勝3敗なんです。PK戦の回数が増えていくと、キーパーとしてはやりにくくなるものですか?

……

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Profile

土屋 雅史

1979年8月18日生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社。学生時代からヘビーな視聴者だった「Foot!」ではAD、ディレクター、プロデューサーとすべてを経験。2021年からフリーランスとして活動中。昔は現場、TV中継含めて年間1000試合ぐらい見ていたこともありました。サッカー大好き!

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