ペップと似て非なるコンパニの原則とは?無敗バイエルンの「ポジションレス・サッカー」を解読する
【特集】25-26欧州サッカーのNEXT戦術トレンド#2
5レーンを埋める攻撃は5バックで、立ち位置を変えるビルドアップは前線からのマンツーマンプレスで封じる。逆に、相手のハイプレスを誘引して背後を狙う攻撃もすっかりお馴染みの形となった。ポジショナルプレーを起点にした「対策」と「その対策」はすでに一巡した感があり、戦術トレンドは1つの転換点を迎えている。この後に続くのは個への回帰なのか、セットプレー研究の発展なのか、それとも……。25-26欧州サッカーで進化への壁を乗り越えようとしている「NEXT」の芽を探ってみたい。
第2回は、新時代を予感させる「ポジションレス・サッカー」でブンデスリーガ&CLリーグフェーズ首位に立ち、今季開幕から続いていた公式戦連勝記録こそ16で止まったものの、いまだ無敗のバイエルンに注目。就任2年目のバンサン・コンパニ監督が浸透させる原則、そして同指揮官が現役時代にマンチェスター・シティで薫陶を受けたペップ・グアルディオラ監督との共通点と相違点を、『ナーゲルスマン流52の原則』の著者である木崎伸也氏が読み解く。
【4-2-3-1】?【3-1-4-2】?【2-2-6】?数字では表記不可能
今季の欧州サッカーにおいて、これほどシステム表記が難しいチームは他にないだろう。
バンサン・コンパニ監督率いるバイエルン・ミュンヘンは選手が流動的に動く「ポジションレス」なサッカーで圧倒的な強さを見せている。
開幕からブンデスリーガでは9連勝。第10節ウニオン・ベルリン戦(2-2)で引き分けて公式戦での連勝記録も16で止まったが、2位に勝ち点差6をつけて首位を独走している。CLリーグフェーズでも絶好調だ。チェルシー、パフォス、クラブ・ブルッヘ、パリSGを破って4戦全勝を収め、こちらも無敗で最上位に立っている。
いかにバイエルンが「ポジションレス」かを伝えるために、無理を承知でシステムを数字で表現してみよう。
守備のシステムは【4-2-3-1】を土台にしたオールコート・マンツーマンなのだが、攻撃になると両SBが内側で上がって攻撃的MFになり、さらにボランチの1人が両CBの脇(もしくは間)に降りて3バックを形成する。
また、CFは頻繁に2列目に降りる。その結果、ウイングが両サイドの高い位置に張り出した凹のような形になる。“高い位置に誰もいない【3-1-4-2】”だ。
相手CBの視点に立つと、実に捉えづらい構造である。2列目に下がるCF(主にハリー・ケイン)を追うのか。それとも中央を空けないためにDFラインにとどまるのか。二択を突きつけられる。
ただし、コンパニ・バイエルンは常に同じパターンで動くわけではない。ボランチ2人が同時にCBの横に降りて4バック化することもあるし、CFがDFラインの前まで降りることもある。
そしてファイナルサード付近まで進んだら、ボランチが3列目に戻って【2-2-6】になる。フォーメーションを数字で表記することにもはや意味はない。
変幻自在なスタイルが専門家の好奇心を刺激し、ヨーロッパでは「コンパニ・バイエルン」の解読に挑むのがトレンドになりつつある。
いったいコンパニは選手に何を伝え、どんな原則でサッカーを実行しているのだろう?
蘭サイトが解読に挑戦!「パターンではない」大原則+3原則
まずはオランダの指導者向けサイト『De Voetbal Trainer』の分析を参照しよう。
同サイトは「コンパニ率いるバイエルンは、パターンではなく、原則に基づいてポジションを取るチーム」と分析し、次のような原則を予想した。
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Profile
木崎 伸也
1975年1月3日、東京都出身。 02年W杯後、オランダ・ドイツで活動し、日本人選手を中心に欧州サッカーを取材した。現在は帰国し、Numberのほか、雑誌・新聞等に数多く寄稿している。
