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22歳トリオが語る、いわきFCだからこそ成長できる理由【五十嵐聖己×石田侑資×大森理生】

2024.08.28

【特集】いわきメソッドの正体#5

「日本のフィジカルスタンダードを変える」――2016年から始まった革命は、瞬く間にJ2までたどり着いたピッチ上の成果、インテンシティが重視される世界のサッカートレンドの後押しも受け、日本サッカー界で独自の立ち位置を築きつつある。現在はレンタル選手の武者修行先としても評価を高めている「強く速いフィジカルを作る」メソッドの正体に、様々な関係者への取材を通じて迫っていく。

第5回では、2002年生まれの同い年トリオ、五十嵐聖己、石田侑資、大森理生の3選手にいわきFC加入後の自身の成長を中心とした現在地を存分に語り合ってもらった。

前向きなチャレンジは失点に繋がらない

――まず今シーズンのプレーについて振り返ってください。

五十嵐「3バックで慣れないポジションも経験しながらみんなに助けてもらっている感じですね」

石田「前の選手がたくさん得点できているので守備の選手としては非常に大きいです。自分はコツコツ頑張っています」

大森「全体的に見たらチームとして失点は減っているし、得点力も上がっています。後ろが安定すれば攻守において貢献できていると思うので、チームとしても個人としても満足していることが多いです。自分自身のパフォーマンスについてはもっと積み上げる必要がありますが、今シーズンのパフォーマンスとしては悪くないですね」

――現在7位(第26節終了時点/取材時)に位置していますが、順位が高いと練習からモチベーションも上がってくるものですか?

石田「順位も良いところにいて、もう一つ、上にいくために積み重ねていけるようにって感じです」

五十嵐「モチベーションが高まるというよりはプレーオフを狙っていける位置にいるし、より自分たちの目指してるところを目指せるチームでもあると思います。そういう意識があるから今があると思います」

大森「J2で3年目になりますが、いろんなチームでプレーしてきた中で、なかなか上位にいられる時間が少なかったので、これまでのシーズンを比べると今年は前向きでアグレッシブなプレーがよく出ていると思います。どうしても順位が低い場合、しっかり守るところだったり、確実にゴール決めるところを決めなきゃいけないという心理状態になって、ワンタッチで思い切って振れなかったりします。守備でボールを奪ったあとも思い切って前に差せないとか、保守的なプレーが出てくるんですよね。 そういうことを考えると、今の順位でアグレッシブなチャレンジが増えてきていることはいいし、いわきのスタイルにも合っていると思う。すごく良いことだし、このまま今までやってきたことをやればチャンスはあるんじゃないかなと思っています」

――3人ともディフェンダーとしてチャレンジするなど、プレー面の変化はありますか?

石田雄三さん(田村監督)には前向きなチャレンジをすることについてはむしろ全然言われないというか、このチームとしてどんどんチャレンジしていくことは当たり前にあって、それをミスしたときに自分がどう感じるかとか、周りとどう合わせるかとか、それを話し合ったり積み重ねていったりすることが大事だと思います。やっていて思うのは、前向きなチャレンジは失点に繋がらないなということですね」

五十嵐「3バックも攻撃参加をしてシュートまで結構行くし、センターバックですが、前のポジションと言ってもいいぐらい上がっていくので、前向きにパワー持ってプレーすることで成長を感じています」

大森「僕はポジション的に3バックの真ん中なので、どっちかといえば、自分自身が見せどころを作るよりも周りの選手をどう生かすかを考えていて、自分自身にボールが来たときにどうプレーするかを大事にしています。例えば、この3人で3バックを組むときには、守備で潰しにいってたとえ剥されたとしてもハッキリとプレーしてくれると次が決まりやすいんです。迷ってプレーされるよりはハッキリとプレーすると周りが連動して守備をしやすくなるというのは他の選手たちも感じていると思います。それが自信になるし、安心感に繋がると思うので、そこは相乗効果というか、うまくかみ合ってるんじゃないかなと思います」

3バックの中央から声を張る大森(Photo: ©IWAKI FC)

田村雄三監督は真っすぐでブレない

――田村雄三監督は皆さんにとってどんな監督ですか?

五十嵐「自分は大学1年生のときに練習参加をしていて当時から熱い人だなと思って、自分は好きなタイプでしたね。個人的には情熱のある熱い人が好きなので指導してもらえて嬉しいです」

大森「オファーをもらったときに初めて会って、そのときになんとなく雄三さんがどんな人か分かりました。そのときの印象どおりだし、着飾った感じもなくて、駆け引きもなくて真っ直ぐな方という印象です」

石田「表裏がなくて全部ぶつけてくれますね。結構見てくれているなというのも感じます。サッカーだけじゃなくて生活面とか。雄三さん本当まっすぐやんな?」

大森「ぶれないよね、本当に」

――サッカーで意見をぶつける機会も多いですか?

石田「全然ありますね。僕も思ったこと言いますし、雄三さんに言われることもあります。バシって言ってくれる方です」

大森「プレーの意図があって話したときに『こう思ってこうしました』と伝えると、『それは違う』という人も中にはいますが、『あの場合だったらこうだね』みたいに噛み砕いて、お互いに理解した形で会話が終われることはすごくありがたいです。考えてプレーしていることを頭ごなしに言うよりも、自分が言っていることの中身を理解して言われるし、コミュニケーションとってくれることはすごくありがたいです」

五十嵐「今日の練習でもありましたが、雄三さんが『あのシーンはこうだったな』みたいなことを言ってくれます。細かいところの話し合いもできるし、自分の話も聞いてくれるし、最後には自分も『そうだよな』と思えることが多いので、こまめにコミュニケーション取ってくれることはありがたいです」

今季のDF陣では最多、チームでは2番目の公式戦出場時間を記録している五十嵐(Photo: ©IWAKI FC)

――シーズンの始まりの頃、今シーズンに向けてどんな想いを持ってましたか?

石田「僕は泣いてましたね。悩み過ぎて。でも、先に続いていかない悩みではなかったし、匠さん(渡邉コーチ)にマンツーマンで指導してもらったりしていたので、匠さんのおかげです。練習がきつすぎて体動かなかったし、ポジションをどうしようみたいなことも考えながらだったのですべてが悪循環でした。そのことに匠さんが気づいてくれて頭の整理ができてから良くなりました」

大森「自分はプレーの質とかコンディションというより、チームとしてどういう戦い方をしてどういう約束事があるのか、そこに対してズレがあったので少しずつ落とし込んでいきました。個人としてはJ2で2年間は出ていたので試合に出たらやれる自信はありました」

――今シーズン印象に残っている試合や場面ありますか?

大森「ホームの試合でコタ君(立川小太郎)から始まって(山口)大輝君が決めた試合ですね」

五十嵐「藤枝戦じゃない?」

石田「これぞ“いわき”を体現した試合だよね」

大森「あのゴールは、自分が関わったプレーの中で一番美しかったシーンでした。いわきらしく相手に触らせずGKからFWまでつながったゴールでしたね。あれ良いよね?」

五十嵐石田「うん」

大森「スーパーゴールはいっぱいあると思うんですけど、体張って倒れながらも繋いでいったのがすごく良かったですね」

……

Profile

柿崎 優成

1996年11月29日生まれ。サッカーの出会いは2005年ドイツW杯最終予選ホーム北朝鮮戦。試合終了間際に得点した大黒将志に目を奪われて当時大阪在住だったことからガンバ大阪のサポーターになる。2022年からサッカー専門新聞エル・ゴラッソいわきFCの番記者になって未来の名プレーヤーの成長を見届けている。