夏の移籍市場が閉幕を迎えた9月1日、エバートンは10番を背負うイリマン・エンジャイのマンチェスター・シティへの完全移籍を発表した。26歳のセネガル代表FWに対して値づけされた最大6500万ポンド(約140億円)とも報じられる移籍金は、在籍中の公式戦74試合17ゴール4アシストという数字だけでは語り尽くせない彼の魅力を表している。その不屈のドリブラーの物語を、エバートンFC公認サポーターズクラブ「エバートンジャパン」で代表を務めるBF氏が前後編に分けて紐解く。
イリマン・エンジャイのサクセスストーリーはとどまることを知らない。より高いレベルに挑むマンチェスター・シティへの移籍。エバートンサポーターである私の中の悠長な部分が、平静を装うようにその事実を飲み込もうとした。
ボールを持てば、止まらない、倒れない、譲らない。予測不能なテイクオンは立ち塞がる障壁を瞬く間に置き去りにする。相手DFを弄ぶドリブルの如く、常に先を見据えた果敢な挑戦。エンジャイは次のステージへ歩みを進める。
Iliman Ndiaye has signed for Manchester City on a permanent deal for an undisclosed fee.
The Club thanks Iliman for his contributions to Everton across the past two years and wishes him success for the future.
— Everton (@Everton) September 1, 2026
エバートンのプレミアリーグにおける「The Other 14」(ビッグ6以外)というポジションと奮わなかった実績、エンジャイがトップカテゴリーで披露した類稀なる才能を鑑みれば、ビッグクラブの注目を集めるのは時間の問題だった。積年の努力が実った賜物であるといえる。26歳と年齢的にはフットボーラーとしてピークに差し掛かり、クラブの財務状況、リーグが推進した新たな規則(SCR)が重なった以上、客観的に捉えることで「仕方がない」と心構えはしていたつもりだ。
この夏を振り返ると、エバートンには大きな2つの選択肢があったと理解ができる。エンジャイを手放すか、維持するかの二択。報道では、エンジャイはクラブから受けた複数回に及ぶ契約更新の打診を断り続けたことが明らかになっている。また、プロスペクトの有望株、ハリソン・アームストロングにノッティンガム・フォレストから破格のオファーが届くもサポーターの大反発を買い、クラブ首脳陣は直前で放出を断念。この時点でエンジャイを慰留する術はなくなったと捉えられる。
エンジャイ本人は欧州カップ戦でプレーしたいという意向を持ち、エバートンは2年連続でプレミアリーグでの戦いを13位で終え、新スタジアム初年度で目標としていた上位進出を逃した。不確定で行間を読むようなオフシーズンの動向は、マージーサイドで刻むはずだった5年の契約期間に3年の余白を残し、慌ただしい移籍市場の最終日に決着を迎えた。
それから数日、マンチェスター・シティでのデビュー戦となるプレミアリーグ第3節コベントリー戦(1-0)を勝利で終えたエンジャイは記者陣を前に力強く語った。
「本当に楽しめました。これこそが僕が目指していたレベルです。初戦を勝利で飾れたのだから、これ以上ないほど最高ですね。素晴らしい気分です。もちろん、僕たちはこの試合に勝ちたかった。ここ数日は本当に充実していました。言うまでもなく、今はシティにいるのだから幸せ。移籍がまとまってうれしいですし、チームメイトたちも僕をとても温かく迎えてくれています」
飲み込んだ事実は、腹に落ちてようやく積み重なったボディーブローのように効いてきた。事実と想いが交錯する。
マンチェスター・シティはリーグ屈指のドリブラーを手にした。ジェレミー・ドク、ラヤン・シェルキ、アントワーヌ・セメンヨ、フィル・フォデン、アラン……そしてアーリング・ホーランド。魅惑のアタッカー陣の仲間入りを果たしたエンジャイはさらなるステップアップを経て、エンツォ・マレスカ新監督の下でより厳しい環境に身を置いて戦うことになる。
苦節の時を歩みながら、着実に階段を登っていくエンジャイ。彼の生い立ちと歩みに触れながら、ともに過ごしたエバートンでの2年間、ビッグクラブに求められたプレーヤーとして特筆すべきスタイルをご紹介する。欧州の舞台で輝きを放ち、より多くのフットボールファンを虜にしていく光景を想像しながら、いちエバートンサポーターとして快く背中を押す気持ちで綴りたいと思う。
父との二人三脚。ダンスと砂浜が磨いた“スキリマン”の足技
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Profile
BF
1990年生まれ。愛知県在住。高校時代、ミケル・アルテタのプレーに心を奪われたことがきっかけでエバートンのファンに。WEBメディア『ディアハト』の編集部に所属し、魅力を発信するためnoteやSNSを中心に活動中。3代目エバートンジャパン代表として観戦会なども企画・運営する。
