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「13人、14人」のフットボールは実現するか。吉本監督の徳島ヴォルティスが描く“新章”

2026.08.06

J2降格から4年間で、徳島ヴォルティスは2度J1昇格まであと一歩に迫りながら、その壁を越えられずにきた。そして迎えた2026-27シーズン。クラブはさらなる「進化」を求め、吉本岳史監督を新たな指揮官に据えた。「ピッチ上に13人、14人いるようなフットボール」という印象的な言葉に込められた思想とは何か。監督交代に至る経緯と、この数年間の歩みを振り返りながら、徳島が描く“新章”を探る。

昇格目前と危機、その両方を経験した4年間

 「ピッチ上にまるで13人、14人いるように感じられる魅力あるフットボールを目指します」(吉本岳史監督)

 6月8日、新たな指揮官の就任に関する公式リリースが流れた。その中にあった就任コメントの一節。何か面白いことが起きそうな直感が働いた。

 徳島が目指しているのはクラブ3度目のJ1昇格。そして、J1定着。

 2021シーズンに挑戦した2度目のJ1では初のJ1残留に手が届きそうなチームに見えた。選手の体感として届きそうだと思えたのか、それとも差があったのか、その本質的な部分まで迫る検証は難しい。しかしながら、1度目の挑戦とは異なるものがあったことは事実であり、それを証明するように当時のスカッドは徳島を離れた現在でも世界やJ1で名を轟かせている。海外に活躍の舞台を広げた藤田譲瑠チマや宮代大聖(※当時、川崎Fから期限付き移籍)。J1で活躍している垣田裕暉、小西雄大、渡井理己、福岡将太、鈴木徳真、岸本武流やジエゴなどがいた。

 その後、3度目となるJ1昇格の挑戦がスタート。今日までに2度のチャンスが訪れた。

 1度目は降格初年度の2022シーズン。ダニエル・ポヤトス監督のもとでシーズンが進むごとに完成度を高めていった。負けない戦いと勝てる確率を最大化した組織でJ1昇格プレーオフに進出すれば一発勝負×2試合でも十分に昇格を掴めそうな仕上がりだった。だが、安定感のある戦いを誇ってきたシーズンだったが、プレッシャーからかリーグ戦の最終節で予想だにしない不安定さが露呈して儚く散った。

 2度目は記憶にも新しい昨年の2025シーズン。増田功作監督のもとでリーグ最少失点を誇る守備組織を構築し、その上にスピードとパワーを誇る新加入のルーカス・バルセロスという最大の武器を活かしながら、渡大生が先頭を走り続けてチーム一丸となって戦った。そして、J1昇格プレーオフ決勝・千葉戦(●0-1)まで辿り着いたが紙一重で徳島に天秤は傾かなかった。

 J2降格後の4年間で2度の可能性を手繰り寄せたという意味では、地方クラブながら徳島は何かしら秘めているものがある。しかしながら、同時に、この4年間でJ3降格の危機に2度直面している。その過程で、チームを編成する強化体制は一新された。変わらないもの、変わろうとしているもの。それらの再定義に向き合う日々を繰り返し、物語としてはまだプロローグを見ているような感覚だった。ただ、ここからは新しい本編の第一章が始まりそうな音が聞こえる。

Photo: Satoshi Kashihara

百年構想リーグがもたらした「変わる時間」

 その直感が正しいとすれば、プロローグと呼べる直近を振り返りながら2026-27シーズンへ向かう現状を紹介したい。

 2025シーズンを終えたタイミングで増田監督との契約を終えた。成果を見れば契約更新という道筋も現実的だった。ただし、クラブは堅守を土台にしながら、その先にある得点力アップに焦点を当てた。もちろん増田監督に攻撃の構築もアレンジを依頼することも選択肢としてなかったわけではないだろう。

 リーグ戦を4位でフィニッシュしたものの得点数は12位だったという事実はある。しかし、深掘りすれば課題が残ったセットプレーの得点力を除けば得点数は7位タイと相応だった。強いて上位クラブとの差異を挙げるとすれば5得点以上を挙げた選手の絶対数は少なかった。最終的に攻撃はルーカス・バルセロスを活かす設計図に着地したことも事実であり、終盤にルーカス・バルセロスが負傷離脱した時期に勝ち点を積み上げきれなかった事実も残った。とはいえ、それは結果論。堅守を土台にしながら最強の武器で勝ち進む。最短最速でJ1昇格を託されたタスクでは最も合理的な手段であり、最後の一戦で天秤が徳島に傾いた可能性も十分にあった。

 その延長でクラブは右にも左にも舵を切れた。

……

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Profile

柏原 敏

徳島県松茂町出身。徳島ヴォルティスの記者。表現関係全般が好きなおじさん。発想のバックグラウンドは映画とお笑い。座右の銘は「正しいことをしたければ偉くなれ」(和久平八郎/踊る大捜査線)。プライベートでは『白飯をタレでよごす会』の会長を務め、タレ的なものを纏った料理を白飯にバウンドさせて完成する美と美味を語り合う有意義な暇を楽しんでいる。

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