7戦未勝利を経て…「楽しい!」を取り戻した中村敬斗&関根大輝と「超やりやすくなった」ランスの[3-5-2]
Allez!ランスのライオン軍団 #26
2025-26シーズンは中村敬斗、関根大輝が牽引する若き獅子たちの最新動向を、現地フランスから小川由紀子が裏話も満載でお届けする、大好評のスタッド・ランス取材レポート。
第26回は、フランスカップで8強敗退、リーグ2では5戦連続ドロー後に敗戦、そして勝利……なんとか代表ウィーク前に負の連鎖を断ち切った激動の3月を、ランス兄弟の談話とともに振り返ろう。
「糸が切れてしまった…」ラスト7分のPK献上
スタッド・ランスの3月は、アップダウンの時となった。
まずはダウンから。
今月最初の試合となった、3日のフランスカップ準々決勝ストラスブール戦。ランスは8強に残った中で唯一のリーグ2所属クラブであり、なんといっても昨シーズン、パリ・サンジェルマンと決勝戦で戦った準優勝チーム。その意地を見せつけたいところだったが、欧州カップ戦にも出場するリーグ1の強豪相手に、2-1での悔しい敗戦となった。
残念だったのは、個々のレベル、選手層、総合力、すべてで上回るストラスブールに対して、80分過ぎまで0-0で踏ん張っていたこと。
GKの好セーブで防いだ危機や枠に当たったシュートなどなど、次々に押し寄せたピンチを逃れると、“今日はランスに風が吹いている?”というムードにもなっていたのだが、あと数分、耐え忍んでPK戦に持ち込めばチャンスありか……という期待もよぎった83分、ペナルティエリア内での攻防戦でMFジョー・パトリックの腕にボールが当たって痛恨のPK判定。
今季アラベス(スペイン1部)から加入したホアキン・パニチェリが仕留めて、ストラスブールがスコアに1点を灯すと、4分後、今度はGKアレクサンドル・オリエロが進入してきた相手を倒して再びPKを献上。ブライトンで三笘薫のチームメイトだったMFフリオ・エンシソがそつなく決めて、あっという間に2点差をつけられてしまった。
アディショナルタイムに、ランスは左サイドの中村敬斗のパスを起点にパトリック・ザビが1点を返したが、そこでタイムアップ。無念の敗退となったのだった。
フランスカップでゴールを任されている第2GKのオリエロは、昨季のラウンド16でPK3本をセーブした名ショットストッパーだが、ロッカールームから移動のバスへと向かう通路で馴染みの番記者と軽くかわしていた会話の中で、「最初の1本で糸が切れてしまった……」と言っていた。
この試合は、左に中村、右に関根大輝をウイングバックとして据えた5バックで守備を固める戦法を取り、チーム全員で必死に守り続け、数々の運にも助けられた。
それがラスト7分でPK献上……そこで気持ちの糸が切れてしまった、というオリエロの言葉に、普段は手厳しい番記者アレックスも納得したようにうなずいていた。
それに、フェアな見方をするなら、あれだけチャンスを作ったストラスブールにふさわしい勝利だったとも言える。
中村も唸った「相当いい」モロッコの新星
ランス兄弟はそろって先発フル出場。中村は、後半に左サイドから切り込んでシュートという得意の形でゴールを狙ったシーンや、得点の起点になるなど攻撃面での見せ場もあったが、ほとんどの時間を守備に費やすことを強いられた。
対面した相手は、この冬のメルカートでリーグ2のダンケルクから引き抜かれた新鋭ジェシム・ヤシン。移籍後初先発となった20歳のアタッカーは、中村のガードをかわして上げた左足クロスで仲間のシュートを誘発したり、VARの結果シミュレーションと判定されたが、あわやPKゲットかというペナルティエリア内へのペネトレーションなど、この日のストラスブールでMVP級の働きを見せた(マン・オブ・ザ・マッチに選出)。
ヤシンとのマッチアップについては、試合後の中村も悔しげだった。
「前半もうちょっと1対1で80番(ヤシン)のところ……どういう選手かわかってたから、中を切っていれば良かった。2、3回やられたっす。カットインしてクロスを上げられたのが2回くらいと、ファウルしたくらいか。3回くらい行かれたっすかね……リーグ2はけっこう良い選手が多い」
思い起こせば今季の前半戦、ランスのホームでダンケルクと対戦した時も(●1-2)、ハーフタイム明けから出場した彼が、後半開始直後にPKをゲットしたのだった。足下のテクニックや攻撃センスだけでなく、図太い勝負根性も備わった空恐ろしい選手だ。
シミュレーションを取られた場面について地元記者に聞かれると、
「審判が笛を吹こうがなかろうが、あの場面では倒れていた。2人に囲まれてプレッシャーをかけられてたんだから」
とケロッと答えていたヤシン。取り囲んだ報道陣を前に、不敵な笑みを浮かべながら話す彼の後ろを、
「コイツはほんとに強えよ! すごいヤツだ!」
と小突きながら先輩選手が通り過ぎていった。
彼は昨年秋にチリで開催されたU-20W杯で優勝したモロッコ代表の主力メンバーの一人。このチームを率いていたモハメド・ワハビ監督が、つい先日モロッコA代表の新指揮官に就任したから、今夏のW杯メンバーに選ばれてセンセーションを巻き起こす、なんてこともあるかもしれない。
「彼は相当いい選手」と中村も唸ったストラスブール所属のウインガー、ジェシム・ヤシンは、ぜひとも覚えておきたい新星だ。
「ガクッときた」と「この舞台でプレーしたい!」
一方、右ウイングバックで出場した関根は、この日は攻撃面でも躍動。ランスにとって一番惜しいシュートチャンスを作ったのも彼だった。
……
Profile
小川 由紀子
ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。
