ランスから代表戦を見守る関根大輝、「マジで球が来ない」中村敬斗。信じて挑み続ける2人
Allez!ランスのライオン軍団 #20
2025-26シーズンは中村敬斗、関根大輝が牽引する若き獅子たちの最新動向を、現地フランスから小川由紀子が裏話も満載でお届けする、大好評のスタッド・ランス取材レポート。
第20回は、先発落ちと代表漏れを経て前を向く右SBと、ここまで5ゴール2アシストも“ボールに触れない”オフェンス隊長、それぞれの3週間5試合を振り返る。
「流れに乗るチャンスを2度とも逃して」14戦4敗
ついこの前開幕したと思ったら、早いものでリーグ2はもうシーズンの3分の1以上の14戦(全34節)を消化した。
スタッド・ランスのここまでの戦績は6勝4分4敗で6位。毎年、リーグ2で優勝するチームは、ほとんど負けないペースでシーズンを進んでいくので、第14節の時点で4敗というのはトップリーグへのUターンを目指すチームとしてはやや多い印象か。
9月下旬にはクレルモン・フット(○4-1)とナンシー(○0-1)に連勝し、「3(5)バック戦法が定着してきたか」と思われたが、その矢先に10月4日の第9節では16位にいたグルノーブルにホームで2-4と惨敗。
代表ウィークを挟んだ後も1勝2分と無敗が続いたが、11月1日の第13節でダンケルクに自軍のミスなどもったいない負け方で黒星を喫し(●1-2)、またも良い流れが絶たれてしまった。
「今シーズンここまで、2度流れに乗るチャンスがあった。1度目はグルノーブル戦の前。あの試合に勝てばトップ3に入っていただろう。そして今日、2度目のチャンスが訪れた。ここで良い結果を残せば上位を維持できていた。しかし2度ともその機会を逃してしまった。修正しなければならない」
これがダンケルク戦後のカレル・ゲラーツ監督のコメントだ。
波に乗れない原因となっているのはディフェンス面。現時点での得点数26はリーグで2番目に多い数字だが、失点数20も4番目に多い。
第14節バスティア戦を前に行われた定例会見で、取材陣から守備面の弱さは「選手の意欲の問題か、インテンシティが不足しているのか、それとも個人的なミスなのか?」と問われたゲラーツ監督は、
「そのすべてが要因に挙げられるが、第一に思うのはチーム全体としての守備意識の問題」
だと答えた。
「ボールを持っている時は良いプレーができているが、失点しないためには守ることにも意欲的でなければならない。その部分の安定感がまだ足りない」
守備への意識が散漫になりがち、というのは、「あれ?」という感じであっけなく失点してしまうケースが非常に多いランスの戦い方を見ていても感じられる。

ダンケルク戦は立ち上がりから相手に主導権を握られる中、25分に左SBセルヒオ・アキエメが先制点をゲットした(記録は相手GKのオウンゴール)。ところが39分、中盤で中村敬斗がボールを失ったところから同点弾を許してしまう。ロストしたのはゴールからかなり離れた位置だったから、
「1点目は僕から失ってしまった。ワンタッチで出そうとしたんですが、引っかかって。でもあそこで失って失点まで行くとは思わなかったです……」
と振り返った中村も悔しげ。ゲラーツ監督も、
「ボールロストはサッカーにつきもの。それを気にして消極的なプレーに徹するのは私は望んでいない。問題はその後。あのゴールシーンもボールを奪われた後、相手にそのまま持っていかれ、その間こちらはまったく何もできていなかった」
とロスト後の対応のまずさを指摘した。
さらに後半が始まってすぐにPKを献上し、これが痛恨の逆転負けを招いた。モニターでリプレーを見れば、今季加入したCBエリー・ンタモンの接触がPKになるほどのものではないことは明らかだったが、リーグ2にVAR判定はない。
そうした点も踏まえての、試合後の関根大輝の分析は的確だった。
「(PKとは言えないプレーではあったが)取られた以上、VARもないですし、そもそも開始から50秒くらいの時間帯にあのプレーが必要だったかと言われたら、絶対に必要じゃないと思う」
「後半の立ち上がりでああいうミスがあったら勝てないし、 行くぞ!ってなっているところでああいうのが出ると、チームのテンションがどうしても下がってしまう。今日はたまたまエリーがやりましたけど、チーム全員の問題。そういう時間帯では少し考えてプレーしないと、あれでゲームが終わったわけではないですけど、せっかく苦しい展開の中で先制してもああやって簡単に逆転されたら本当に苦しくなる」
テコ入れを迫られたゲラーツ監督は、まずはダンケルク戦でキャプテンのCBニコラ・パロワを外し、続くバスティア戦(○1-3)では関根に代えてベルギー出身のマキシム・ビュシを今季初めて先発させるなどメンバーを変えたり、4バックと5バックを併用したりと試行錯誤している。
あの輪に入れなかったブラジル戦「もちろん悔しい、でも…」
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Profile
小川 由紀子
ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。
