「保持」の弱さが表れた“あるスタッツ”とは?FIFA公式データで浮かび上がる日本代表の課題
【特集】北中米W杯深掘り分析スペシャルレビュー#9
4年に1度のW杯は、後世に語り継がれる名勝負の宝庫だ。しかし高度化した現代サッカーの裏側には、徹底した分析と綿密なシミュレーションに基づく極限の戦術的駆け引きが存在する。footballista編集部が選んだ識者たちが、注目国同士による「本気の闘い」を深掘りレビュー。あの90分で何が起きていたのか。勝敗を分けた戦術の妙に迫る。
北中米W杯では、出場国48カ国への拡大だけでなく、ハイドレーションブレイクやスローインの時間制限など、大会を取り巻く環境も大きく変化した。その変化は、試合内容やチームの戦い方にどのような影響を与えたのか。第9回では、FIFAが公開する公式レポートと各種スタッツをもとに、大会全体の傾向を整理しながら、日本代表の立ち位置と課題をデータから分析する。
過去最多の試合数をこなす北中米W杯もいよいよクライマックスが近づいている。ここ最近のW杯は大会を迎えるたびに新たなテクノロジーに驚かされているが、試合後に掲載されるデータのレポートは前回大会の内容と大きく変わりはない。データ内容については2022年12月執筆の記事『ポイントは「動き」の数値化。FIFAが発表したW杯新データの見方を解説!』で触れているので参考にしていただきたい。今回はそのレポート内容と標準的なスコアデータも用いて、今大会の傾向や日本の立ち位置を検証していこう。
データはすべてラウンド16までのものとなる。FIFAからのレポートはしばしば後日修正が行われるため、公開時点で差異が生まれている可能性がある点についてはご承知願いたい。
※レポート掲載ページはこちら
https://www.fifatrainingcentre.com/en/fifa-world-cup-2026/match-report-hub-knockout-stage.php
※いくつかのスタッツは速報ページに掲載されているものも引用
48カ国参加で広がった点差。その背景にあるもの
今大会から出場国が増えたことにより大会のレベルが低下するのではという指摘が散見された。「レベル」をデータで証明するのはとても難しいのだが、シンプルに最終スコアの点差の比率を32チーム制となった98年から大会毎に集計し見てみよう。過去の大会もグループステージからラウンド16までの試合を対象に計算している。

予想通りと言えるかもしれないが、点差が開く試合が増加した。
特に日本が所属したグループFは6試合中3試合が4点差という試合になっている。相手側に問題が起きていたとはいえ、「この相手なら勝てる」という想像を抱いてしまう相手に勝ち切れなかったことが多かった日本が、大勝を記録できたことは1つの成果と言っていいだろう。チーム内やチーム外要因で起きた問題がモチベーションのコントロールに影響し試合内容にも影響するケースもあるため、「点差」は必ずしもレベル差を表しているとは言えないが、結果として大差となる試合が増えたことは大会運営側もしっかり把握しておく必要がある。
議論要素が多い今大会だが、45分ハーフの途中に存在するハイドレーションブレイクもその中の1つだ。この時間を使って飲水、休憩のみならず戦術的な指示も可能になった。そしてこの分の時間がアディショナルタイムに加算されるためハーフ最後の時間帯が長くなるのだが、同タイムについては前回大会も長く取る傾向だったため、この時間については前回と同じ傾向と言える。
ハイドレーションブレイクは試合を変えたのか
この影響により時間帯別で生まれる得点比率がどれくらい変わったかを見てみよう。ハイドレーションブレイクの影響も見てみたいのだが、取得タイミングがバラバラで公式の記録から「ハイドレーションブレイク直後」を導き出すのは難しそうなので、時間帯別得点を12分区切りで計算した(従来の時間帯別得点は15分区切り)。

集計方法を全ゴールのものと、同点もしくは勝ち越しゴールのみで絞ったものの2パターンを作成。比率は延長戦を含まない形で計算している。どちらの表も今大会で大きな変化は起きていないようだ。強いて挙げるなら、同点もしくは勝ち越しゴールが最初の12分で生まれることが多く、試合の序盤から動く傾向があると言える。
FIFA独自データが示す「低いブロック」の増加
ここからFIFAのレポートを利用してもう少し細かいところへ踏み込んで見よう。レポートが発行されているのが前回大会からとなるため、比較対象は前回のみとなる。
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Profile
八反地 勇
1981年、愛媛県生まれ。音楽で食べていくために上京するもサッカーに魅入られ、サッカーのデータ入力、速報配信運用業務を経て、現在はフリーランスにてサッカーのデータ分析向けの設計、分析記事の執筆、ウェブフロントエンジニアなどを担当。サッカー観戦は1チームに絞らず、広く浅く見るタイプ。
