2度の引退危機を救ってくれたクラブへの忠義。酒井宣福がサガン鳥栖のために戦う理由
プロビンチャの息吹~サガンリポート~ 第24回
アウェイに乗り込んだ明治安田J2・J3百年構想リーグ開幕戦のFC琉球OKINAWA戦。チームの今季ファーストゴールを決めたのは、プロ16シーズン目を迎えた酒井宣福だった。昨季は度重なる負傷離脱でなかなかハイパフォーマンスを発揮できなかった33歳には、それでもこのクラブのために戦う明確な理由がある。その強い想いにおなじみの杉山文宣が迫る。
今季の復調を予感させる開幕戦ゴール
明治安田J2・J3百年構想リーグの幕が開けた。この大会で優勝を目標に掲げるサガン鳥栖は、沖縄の地でFC琉球OKINAWAと対戦する開幕戦を迎えたが、小菊体制2年目でのファーストゴールを挙げたのはチーム最年長となった酒井宣福だった。17分、塩浜遼のラストパスに飛び込み、右足アウトサイドで合わせてゴールネットを揺らしたゴールは、ボックス内で相手DFとの駆け引きで上回るという酒井らしさが凝縮されたものだった。
「みんながうまいからゴール前である程度待って、相手DFの立ち位置を確認して、そこで駆け引きをしていればボールは必ず来るので、それを信じてやっていたら実際にボールが来たし、決めるだけという感じだったし、ミートさえできれば決まるかなという感覚だったので、そこのフィーリングもいまは良い感じです」
プロ16年目のシーズンを幸先のいい形でスタートさせた酒井だが、昨季はけがに苦しんだ。いや、昨季だけではなくプロ人生のほとんどがけがとの戦いでもあった。酒井自身、自分のサッカー人生を「サッカー選手というよりもずっとリハビリをしてきたようなイメージが強いサッカー人生」と苦笑いで振り返る。鳥栖に復帰した昨季も第3節で初先発しながら、その翌週の練習中に負傷し、離脱。一旦は復帰したものの、再び負傷してしまい、またしても離脱。この時期は精神的にも厳しいものを強いられた。
「本当に自分自身、シーズンに対して気持ちを入れて取り組んできてコンディションも良かったし、『今季はイケるな』という感覚があったにも関わらず、離脱することになって……。1回目の離脱のときは『しっかり治して、そこから』という気持ちでいられましたけど、2回目の離脱のときはちょっと不安というか、『またサッカーできるのかな』という不安みたいなものは結構、感じましたよ、正直」

存在価値が揺らいだ昨シーズンのパフォーマンス
当時の心境は落ち込むといった類のものではなく、自分自身への不甲斐なさだった。
「頑張ってポジティブには振る舞っていましたけど、落ち込むというよりは情けないなっていう感じで。『俺、何もできてないじゃん』っていう気持ちがすごく強くなって。情けないし、申し訳ないし、そういう気持ちがどんどん強くなっていって難しかった」
生来のポジティブ思考の持ち主で「基本的に起きたことに対してネガティブに捉えることがほとんどないし、どうポジティブに持っていくかだけ」と自認するが、そんな酒井ですら「自分とは何者なんだろう。何をしているんだろう」と考え込んでしまうほどだった。
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Profile
杉山 文宣
福岡県生まれ。大学卒業後、フリーランスとしての活動を開始。2008年からサッカー専門新聞『EL GOLAZO』でジェフ千葉、ジュビロ磐田、栃木SC、横浜FC、アビスパ福岡の担当を歴任し、現在はサガン鳥栖とV・ファーレン長崎を担当。Jリーグを中心に取材活動を行っている。
