アルビレックス新潟U-18、10年ぶりの北信越王者に!そして、『伝説をつくる』プレミアリーグプレーオフへ
大白鳥のロンド 第29回
今季から就任した田中達也監督の元、シーズンを通じて成長を続けてきたアルビレックス新潟U-18が、10年ぶりのプリンスリーグ北信越制覇を果たした。改めてアカデミー哲学やサッカー哲学を明文化し、時にはAIも使ったアプローチで選手たちをバックアップしてきた1つの成果が出た格好だが、まだ彼らにはプレミアリーグ昇格を懸けたプレーオフが残っている。今回は新潟U-18の今季の軌跡や、アカデミー自体の現在地、さらにプレーオフへの期待と展望を、おなじみの野本桂子がリポートする。
10年ぶりのプリンスリーグ北信越優勝を最終節で勝ち獲る!
田中達也監督率いるアルビレックス新潟U-18が、プリンスリーグ北信越(1部)で優勝を決めた。同時に、今季は北信越で1枠のプレミアリーグプレーオフ出場権も手にした。北信越の頂点に立つのは、入江徹監督が率いた2015年以来、実に10年ぶりの快挙となった。
優勝争いは、リーグ最終節までもつれた。最終節手前、今季のホーム最終戦となる第17節で、新潟U-18はアルビレッジで松本山雅U-18と対戦。この時点で2位・松本国際高校とは勝点1差。勝てばホームで優勝を決められたが、1-2で敗れた。しかし同日、松本国際も星稜高校に敗れ、順位の入れ替えは避けられた。「1週間、みんなで苦しもう」。田中監督はチームに呼びかけ、引き締め直した。
1週間後の11月22日。第18節・鵬学園高校戦。会場の鵬学園第2グラウンド(石川県七尾市)には、新潟U-18のサポーターや父兄がかけつけ、オレンジの横断幕と、選手名の入ったのぼり旗を掲出。鵬学園の応援団に負けじと、チャントでチームを鼓舞した。
試合は19分、鵬学園に先制を許したものの、そこから新潟U-18が主導権を握って反撃開始。39分、42分に倉茂竜馬(3年)が立て続けに点を奪うと、45分にはU-18日本代表の欧州遠征から戻った井本修都(3年)が決めて、前半のうちに3点を返す。さらに67分、倉茂がこの日3点目を奪い、4−1と突き放す。その後、2点を返されるヒヤヒヤの展開だったが、4−3で逃げ切りに成功した。試合後、表彰式などはなかったが、選手たちは応援してくれた人々と、バンザイで喜びを分かち合った。

「おめでとう!」。試合後の円陣で、田中監督は選手たちに声をかけ、拍手した。
「今日勝てたのは、みんなの力。たまたま、俺が指揮をしていただけ。俺を優勝監督にしてくれたのは、みんなだよ」。その言葉に、選手たちの顔がパアッと誇らしげに輝く。
「だからもう1回、してくれ。プレミアに昇格させた監督に」
リスペクトと期待をこめた意気な言い回しに、心をつかまれないわけがない。
冬に敢行した基本の徹底で最後までブレなかった戦い方
今年の新潟U-18は強かった。リーグ戦績は、12勝2分4敗。得点数はリーグで2番目に多い「31」。失点数はリーグ最少の「16」。攻守においてバランスがとれたチームだった。
2024年も失点数はリーグ最少の「15」だったが、得点数が「24」と少なく6位に終わっていた。それも踏まえ、今季就任した田中監督体制では、勝つために得点を求め、より攻撃的なサッカーにシフトした。

攻撃するためには、ボールを握り続けること。手始めに、雪でピッチが使えない1月と2月は、フットサルコートや体育館で、ビルドアップの立ち位置の基本を徹底的にたたきこんだ。「最初は、すごく、がんじがらめでやりました。『お前はここ、お前はここに立つ。そこから、ここに入っていく。お前はこのタイミングで降りる』みたいな感じで」。
ボールを丁寧に後ろからつなぎ、ライン間をとった選手へ縦パスを刺す。その選手が前を向いた瞬間、攻撃をスピードアップする。「そこからは、みんなの個性を出してほしい」と、前線のタレントの持ち味を活かす形に。3月以降はフェスティバル参加や練習試合を重ねる中で、選手間で気持ちよくやれる立ち位置や、ディフェンスラインの高さなどを見つけていった。
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Profile
野本 桂子
新潟生まれ新潟育ち。新潟の魅力を発信する仕事を志し、広告代理店の企画営業、地元情報誌の編集長などを経て、2011年からフリーランス編集者・ライターに。同年からアルビレックス新潟の取材を開始。16年から「エル・ゴラッソ」新潟担当記者を務める。新潟を舞台にしたサッカー小説『サムシングオレンジ』(藤田雅史著/新潟日報社刊/サッカー本大賞2022読者賞受賞)編集担当。現在はアルビレックス新潟のオフィシャルライターとして、クラブ公式有料サイト「モバイルアルビレックスZ」にて、週イチコラム「アイノモト」連載中。
