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新指揮官が掲げたキーワードは「フェア、フラット、リスペクト」。アルビレックス新潟U-18・田中達也監督が選手と掴んだ今季初勝利

2025.04.25

大白鳥のロンド 第22回

2025年シーズン。アルビレックス新潟U-18の指揮官に田中達也・新監督が就任した。現役時代は浦和レッズで12年、新潟で9年にわたってJリーグ屈指のドリブラーとして印象的な活躍を見せたワンダーボーイは、現役引退後に指導者へと転身。新潟のトップチームコーチを経て、今季から未来ある高校生たちと同じグラウンドに立っている42歳が今感じている想いを、おなじみの野本桂子がすくい上げる。

リーグ開幕3試合目にしてもぎ取った今季の公式戦初勝利

 2025年4月19日。アルビレックス新潟U-18は、田中達也新監督体制での公式戦初勝利を挙げた。

 開幕から1️分1敗で迎えた、高円宮杯 JFA U-18サッカープリンスリーグ2025北信越1部の第3節・松本国際高校戦。新潟U-18は、3分、[4-2-3-1]の1トップに入ったFW山﨑琉偉(2年)が、ボランチの竹ノ谷颯優(3年)のパスに右足を振り抜きゴール。チームにとって、今季のリーグ初得点を挙げた。

3分、今季初先発に応えて先制点を挙げた山﨑(Photo: Keiko Nomoto)

 そこから勢いに乗ると、31分には追加点。右サイドハーフの石山未来(3年)からのパスに、左サイドハーフの稲場健人(3年)が照準を合わせる。稲場は「ボールが転がってきたとき、打つイメージしかしていなかった。いいところにボールを置くことだけ意識して、振り抜くだけでした」と右足で決めきった。

両翼を担う石山未来(上)と稲場健人(下)(Photo: Keiko Nomoto)

 2点リードで迎えた後半は、前半とは一転、相手に押し込まれ続ける展開に。

 ディフェンスリーダーのサグダトブ・イリヤ(3年)を中心に、中央を締めて耐える展開が続く中、78分に失点を喫したが、なんとか2-1で勝点3をつかみとった。

 ピッチサイドで、後半、苦い顔で戦況を見つめていた田中監督は、初勝利を告げる笛を聞くと、ホッとした様子でベンチへ向かい、スタッフや選手たちとタッチをかわし合った。

みんなで分かち合った「ハルヲスウィング」の歓喜

 応援してくれたサポーターのもとへ、満面の笑顔で向かう選手たち。トップチームにならい、勝利したあとに歌うチャント『ハルヲスウィング』で肩を組み、バンザイで喜びを分かち合う。田中監督は、その様子を、少し離れたところから笑顔で見つめていた。

 「ここ2節、攻撃の出来には満足していたんですが、最後、決めきるところだけだよっていう話をしていて。今日は早い時間に点がとれたことがよかった。選手が本当に頑張ってくれた証だと思います」。田中監督は控えめに喜びをかみしめ、選手をたたえた。

勝利を収めてサポーターのもとへ向かう選手たち(Photo: Keiko Nomoto)

 印象的だったのは、両サイドハーフの迫力ある突破だ。この試合でいえば、右の石山と、左の稲場。相手が3バックだったこともあり、その脇のスペースで起点を作って仕掛ける形で、前半はペースを握った。

 配球役となる主将の竹ノ谷は「達也さんが監督になって、サイド攻撃で優位性を持つサッカーになった。攻撃では『背後を狙え』と言われているので、真ん中でターンしてから背後へ蹴ったり、得意のスルーパスでチャンスをつくっていきたい」と意識する。

竹ノ谷颯優とサグダトブ・イリヤ。トップチームのキャンプにも帯同した期待の主将とDFリーダーだ(Photo: Keiko Nomoto)

 ただこの日、24.5度まで気温が上がった中、序盤から背後へと走り続けた疲労もあってか、後半は足をつる選手も複数出るなど、防戦一方の苦しい展開となった。「そこは、僕らの課題だと思います。前半の戦いが後半もできるように。しっかりトレーニングしていきたいです」と田中監督は振り返った。

引退後はトップチームコーチ就任も「もともとアカデミーにはすごく興味がありました」

……

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Profile

野本 桂子

新潟生まれ新潟育ち。新潟の魅力を発信する仕事を志し、広告代理店の企画営業、地元情報誌の編集長などを経て、2011年からフリーランス編集者・ライターに。同年からアルビレックス新潟の取材を開始。16年から「エル・ゴラッソ」新潟担当記者を務める。新潟を舞台にしたサッカー小説『サムシングオレンジ』(藤田雅史著/新潟日報社刊/サッカー本大賞2022読者賞受賞)編集担当。現在はアルビレックス新潟のオフィシャルライターとして、クラブ公式有料サイト「モバイルアルビレックスZ」にて、週イチコラム「アイノモト」連載中。

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