より洗練されるバルセロナ対策25‐26版。開幕2戦で見えた7つの攻略法とは?
サッカーを笑え #49
懸念された新加入GKジョアン・ガルシア、FWマーカス・ラッシュフォードの選手登録も開幕戦当日朝に済み、新シーズンをマジョルカ(0-3)、レバンテ(2-3)相手のアウェイ2連勝でスタートした昨季リーガ王者。彼らを研究して進化する各チームのバルセロナ打倒策を見るのも、今季の楽しみの一つだ。
今シーズンのスペインはリーガ、コパ・デルレイのディフェンディングチャンピオン、打倒バルセロナが全チームの目標となる。争点はオフサイドラインを巡る攻防。フリック監督2年目でより洗練されるのはバルセロナの守備陣なのか? それとも相手チームの対策なのか? 早くも第2節レバンテ戦で取られたら取り返すの面白い攻防、レバンテ2‐0からの後半アディショナルタイムに2‐3のバルセロナ大逆転劇があった。リードされた試合をひっくり返すのはフリック監督のチームの通常運転なわけだが、それが昇格組相手でも出た恰好。この試合を見ると、より洗練されるのは対策の方という印象を受けた。
昨年『対策されたバルセロナ。リーガではどんな弱小も繰り出す「ボール出し阻止」「ハイライン攻略」法とは?』を書いたが、25‐26シーズン版のレバンテのやり方はまた一味違っていた。普遍性があると思ったので、ここで紹介する。
攻略法①:5バックで守る
今季はラミン・ヤマルの年になる。もう凄過ぎて、今シーズン中に世界一になってしまう勢い。とにかく彼を止めないと攻略法もクソもないということで、5バックにしてスペースをなくしDFがヤマルと1対1という状況を避ける。レバンテは[5‐4‐1]だった。止め方としては、走り出すと1人、2人楽に抜くから、ボールを受ける瞬間にガンと当たるしかない。当たりに行くためには、背中を仲間にカバーされている必要がある。だから5バックなわけだ。それでもミドルシュートや早めのセンタリングは阻止できないが、それは諦める。ドリブルでガタガタにされるよりは良い。開幕節4バックのマジョルカはちんちんにされ、レバンテは“ある程度止めた”――といっても2アシストなんだから凄過ぎ――。ヤマルのロストがカウンターの起点になる(レバンテの2点はいずれもヤマルのロストから)、というおまけ付きなので、ぜひやりたい。
おまけ:バルセロナ側の5バック対策
ラフィーニャやラッシュフォードが右へ流れ、右SBのエリック・ガルシアが上がって、ヤマルへのマークを剥がす。
攻略法②:「アラウホを狙え!」
カタルーニャの地元メディアが全然言わないので、言う。イニゴ・マルティネス(アル・ナスル)が抜けた穴は非常に大きい、と。ボール出し時の引いた相手を釣り出すボール運びと、釣り出した途端に出すラインを越えるパスと、状況を一気に変える裏へのパス、サイドチェンジがなくなる。対角線ランをするヤマルの足下へ向かって行くエフェクト込みのピンポイントパスがなくなる。昨季の3ゴール、6アシストがなくなる。左CBには足技に遜色がないクバルシが入っているが、彼は右利き。左では体の向きとパスコースが限定される。
で、右CBにはアラウホが入っている。前に書いた『「俺が全員をコントロール」した末のCL優勝。ルイス・エンリケが全部さらけ出す『お前らは何もわかっていない』が最高に面白い!』でルイス・エンリケ(パリ・サンジェルマン監督)に狙われた男だ。アラウホはスピード抜群で強い。背走込みの競り合いには滅茶苦茶強い。ハイライン向けのCBなのだが、足下が拙い。マジョルカ戦でミドル&ロングパスを3本連続で失敗した後、レバンテ戦では近くの選手へショートパスを出すだけになった。
今季のバルセロナは最終ラインからのパスの出どころが1つ少なくなった。ボール運びもサイドチェンジもラインを越えるパスもなくなって、引かれるとより弱さが露呈する可能性がある。マジョルカ、レバンテ相手ではアラウホが狙われる状況がなかったので、具体的なやり方はわからないが、注意して見ていきたい。
……
Profile
木村 浩嗣
編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。
