
サッカーを笑え #44
パリ・サンジェルマンが悲願のCL初優勝を果たした今、スペインで注目を集めているルイス・エンリケの長期密着ドキュメンタリー。就任2年目でフランス王者を欧州の頂点に導いた指揮官は、プロジェクトの分岐点となったムバッペの退団、そして彼なしで迎える2024-25シーズンについて、どのように考えていたのか。「わかっている」男は戦術ミーティングの様子まですべて、カメラの前で明かしてくれている。
死ぬ時は自分のアイディアと心中したい
ルイス・エンリケのパリ・サンジェルマン監督就任以来を描いた『No tenéis ni **** idea』というドキュメンタリーが最高に面白い!
まずタイトルがいいじゃないか。伏字の部分は放送禁止用語“puta”が入っており「お前らは何もわかっていない」という意味なのだが、それの10倍くらい下品なニュアンスである。
「お前ら」と無知呼ばわりされているのは、私たちジャーナリスト。無知の例として、スペイン代表監督としてカタールW杯敗退後に受けた批判、「プランBがない」を挙げている。ははは。私もそう言いました。私らジャーナリストが何もわかっていない、というのは実はその通りだと思っている。中にはごく少数わかっている人もいるのだろうけど、大半は何もわかっていない。
一番わかっているのは監督、それもプロの監督が最高で、ずっと離れたところに選手がいる、というのが私の認識なので、プロの監督経験がないのにサッカーがわかる――プロの試合や監督や選手を論評できるレベルでわかる――わけがない。
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Profile
木村 浩嗣
編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。