「俯瞰で見る視点とピッチレベルで見えている風景はまったく別物」林陵平が解説する、ソニーが提供する自由視点の試合・ハイライト映像『Immersive Highlights』の楽しみ方
この記事はソニーグループ株式会社の提供でお届けします。
ソニーグループ株式会社(以下、ソニー)とマンチェスター・シティ・フットボールクラブ(以下、マンチェスター・シティ)が「オフィシャル・バーチャル・ファンエンゲージメント・パートナーシップ契約」を締結し、先進的なサービスを展開していることをご存じだろうか。仮想空間上でマンチェスター・シティに関する様々な体験を共有できるソーシャルエンタテインメント空間を展開する『FavoriteSpace™』だ。
『FavoriteSpace』が提供するスマートフォンアプリでは、アバターを作って「バーチャル・エティハド・スタジアム」を訪れ世界中のファン・サポーターと一緒に応援できる他、クラブハウスやロッカールーム、記者会見場を疑似体験できる「スタジアムツアー」など、マンチェスター・シティ好きには嬉しいコンテンツが満載。さらにマッチデーには「Matchday Picks」として試合のスコアやスタッツ予想をしたり、キックオフ前のマッチデーライブショーや解説者による試合/シーン解説、エティハドスタジアムのアナウンサーによるスタメン紹介などの演出で、仲間たちと一緒に盛り上がることもできる。
そんな『FavoriteSpace』のコンテンツの中で、特に体験してほしいのが『Immersive Highlights』だ。ソニーのグループ会社である「Hawk-Eye Innovations(ホークアイ)」のエレクトロニックパフォーマンストラッキングシステム(EPTS)を活用し、実際の試合のハイライト映像を自由視点で観戦でき、ファン・サポーターはもちろん、競技者にも文字通り新たな“視点”を提供できるサービスだ。
具体的には、マンチェスター・シティのプレミアリーグホームゲーム全試合(2025年8月時点)のゴールシーンハイライトを「ボールとゴールを結んだStandard視点」「シュートを打った選手視点」、「GK視点」、「俯瞰視点」、「アバター視点」(ピッチ上の23人目の選手として自由な位置に立つことができる)という5つの視点で見ることができる。今回は、この『Immersive Highlights』の楽しみ方をフットボリスタでもおなじみの林陵平氏に解説してもらった。
ピッチレベルで見えている“もう1つの現実”
――自由視点『Immersive Highlights』の最大の特徴は選手視点を体験できることですが、選手が見ているピッチレベルの視点というのは観戦者の視点とどう違うんでしょうか?
「僕が普段解説している時に見ているのは上から俯瞰した映像になるので、『Immersive Highlights』の選手視点はまず懐かしいなと感じましたね。まさに選手の目線になっていて、その瞬間に見えている部分、見えていない部分がわかる。この位置に立った選手は後ろの選手が見えているのか、前のスペースが見えているのか、ボールが見えているのかどうか……身体の向きやそれに伴う敵味方の目線、ピッチ上の細かい状況がよりリアルに理解できて面白いですね。これを体験してもらえばわかりますが、上から俯瞰で見る視点とピッチレベルで見えている風景はまったく別物なんです。このスピード感の中でピッチ上の選手は一瞬の判断でプレーを選択しています。意外とフットボールって難しいんですよ(笑)」
――解説者としては試合を俯瞰の視点で見ることになりますが、現役時代の感覚でもある選手視点もプレーの詳細を語る上で大事になってきますよね。
「はい。僕が解説者として意識しているのは、両方の視点を併せ持って解説することです。解説者は俯瞰の視点で見るけれど、選手は『Immersive Highlights』で見られるようなピッチレベルの視点でプレーしているわけで、それは忘れないようにしたいです。両チームの構造や立ち位置の話をするにしても、その中で選手は何が見えていて、何を感じているかを常に頭に入れて解説することで、よりフットボールの深みを伝えたいです」

――『Immersive Highlights』はStandard視点、選手視点、GK視点、俯瞰視点、アバター視点と5つの視点がありますが、林さんのオススメの視点は?
「僕は現役時代にストライカーだったこともあり、ゴールを決めた選手の視点はやはり気になってしまいますよね。ボールがない時にどれだけいい準備をするかでゴールが決まる確率が上がってくる、というのが僕が現役生活の中で学んだことで、それもあってボールを受ける前の動きには注目しています。
例えば、(24-25シーズンのプレミアリーグ第24節)シティ対アーセナル戦の55分、ハーランドの同点ゴールのシーンでは、サリバとガブリエルの2CBの距離が離れたのですが、サビーニョからのクロスを受ける前に一瞬、ハーランドがボールから目線を切っていることがわかります。ボールから目線を切って身体の向きを作らないと、空いたスペースに全力のスプリントで走り込めない。その一瞬の身体の向きですべてが決まるんですよ。上からの映像ではこういう細かい部分まではわからないですが、FWの立場から言うとこういう事前の準備がめちゃくちゃ大事なんです。ハーランドのボールが来る前の動き、DFとの駆け引き、その時のDFの身体の向きや目線、空いているスペースなどが、ハーランドの目線を通してすごくリアルに見えてきますよね」
――こういうテクノロジーでピッチレベルの目線の解像度が上がってくると、フットボールの見方自体が変わってきますよね。それこそスーパープレーの定義も変わるのかもしれません。
「『そこ決めろよ~』という見方もフットボールの楽しみ方なので全然いいんですけど、ピッチ上の現実は違っていたりします。ピッチ上には22人の選手がいて、今はコンパクトに守るのでスペースもないし、プレーのリズムも年々早くなっています。その中で選手が何を見て、何を考えているのか。ただ、それをピッチレベルの視線を知る選手だけが語れるのではなく、『Immersive Highlights』でファン・サポーター含めて共有できるようになればいいですよね。それこそ新しいスーパープレーも見えてくるようになるはずですし、フットボールをより深く理解できるようになると思います」

――GK視点はどうですか?
「なかなか経験していない目線なので新鮮でしたね。1つ思ったのは、『現役中にこれを見たかったな』と(笑)。GKはこう見えているのかというのを知れば、“やられると嫌なこと”も理解できるし、点の取り方がよりわかるようになる。FWとしてはGKにいい間合いで詰められるときついんですよ。やみくもに前に出てきたらかわすこともできますし意外と楽なんですが、そのあたりの駆け引きを学べそうですよね。これは普通に現役選手が見ても参考になると思います」
――俯瞰視点は戦術分析に使えますよね。
「チームの構造を知るなら22人の立ち位置がわかる俯瞰視点でしょうね。相手は[4-4-2]で守っているのか、[4-3-3]なのか、[5-4-1]なのか。相手があった上で自分たちはどういう立ち位置を取るのか。相手が[4-4-2]のブロック時は後ろを3枚で回せば1人の数的優位ができるなど、どこに誰がいて、どこにスペースがあるのかは、俯瞰視点が一番わかりやすいですからね。
俯瞰視点のもう1つのメリットとしては、ボールがないところでの駆け引きが見られることです。中継では後ろからビルドアップしている時に一番前にいるFWが相手のDFラインとどういう駆け引きをしているのかは見えなかったりしますが、実はそこがかなり大事だったりします。CFが背後を取るアクションをしているかどうかでDFラインが下がって手前にスペースが空いてきたりしますし、俯瞰視点でボールのないところでの動きに注目するのも面白いですよ」

テクノロジーが変えるフットボールの近未来
――『Immersive Highlights』を体験して感じたのですが、育成年代やトップチームのトレーニングでも役立ちそうですよね。
「今、現役でプレーしている選手たちも勉強になりますよ、間違いなく。むしろトッププレーヤーの方が、『Immersive Highlights』をうまく自分のプレーの向上につなげられるかもしれません」
――最近はコーチが参考にしてほしいプレーを映像にまとめて選手に見せたりしていますよね。その時に『Immersive Highlights』の選手視点を体験できれば、さらに効果が見込めるんじゃないかなと。
「間違いなく、より深い理解につながりますよね。もう1つ言えるのが、選手自身が自分のプレーを見直す時に自分の目線を追体験できると、新たな気づきがあると思います。というのも、けっこう選手って一瞬の判断で、考えるよりもその場の本能でプレーしているので、自分のプレーを覚えていなかったりするんですよ。僕もゴールを決めた後で『あれ、どうやって決めたっけ?』となって具体的なことは思い出せないことがありました。もちろん、あとで映像を見返すことはできるんですが、その時の目線まではわからないじゃないですか。『Immersive Highlights』の選手視点であとでゆっくり見直したら、『あの時はこういう状況だったから、俺はこういう判断をしたのか』というのが理解できるようになって、プレーの再現性が出てくると思うんですよね」

――ピッチレベルのテンポを思い出すためのリハビリとしても利用できたり、いろいろな活用法が思いつきますよね。
「FIFAクラブW杯でレフェリーカメラが導入されたじゃないですか。ああいうカメラを付ければ可能なんでしょうけど、近い将来そうした特別な準備なしで選手目線が体験できるようになれば現場でも利用されていくでしょうし、新たな発見もありそうですよね。テクノロジーの進化によるフットボールの広がりを感じます。ただ、現場がテクノロジーに振り回されるのも違うので、バランスは必要だとは思いますが」
――NBAの解説では解説者のアバターが出てきて、より立体的に選手同士の距離感だったりスキルや戦術を解説する流れも出てきているようです。
「フットボールの解説も近い将来、そうなっていきそうですよね。そうなればプロの凄さ、スキルや戦術をより詳細に解説できるようになりますからね。『Immersive Highlights』を通して、そうした近未来のフットボールの楽しみ方の一端を感じてほしいです」

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Profile
浅野 賀一
1980年、北海道釧路市生まれ。3年半のサラリーマン生活を経て、2005年からフリーランス活動を開始。2006年10月から海外サッカー専門誌『footballista』の創刊メンバーとして加わり、2015年8月から編集長を務める。西部謙司氏との共著に『戦術に関してはこの本が最高峰』(東邦出版)がある。
