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腫れ物を触るような扱いからの転換はあるか? ドイツサッカーの「対中国」

2020.10.02

欧米を中心に世界的に強まる中国との対立姿勢と、今や無視できないほどの規模に膨れ上がった同国市場。広がる政治と経済の間のジレンマは、サッカー界とて例外ではない。ここでは、ドイツサッカー界における反応を紹介する。

 サッカーと道徳は伝統的に難しい関係にある。そしてこのゲームの深淵は、どこにでも見ることができる――ピッチ上での悪意あるファウル、マリーシア、苛烈なタックル、人種差別、汚職など挙げればきりがない。にもかかわらず、首脳陣が恥ずかしげもなく人権や平和、環境保護、平等を謳うのがグロテスクに感じられるほどである。

 ところが、中国のこととなるとそうした声はたいていすぐに静まる。伝説の大市場との接点を失う恐れからである。「サッカー関係者たちは自分たちを道徳的な審理機関のように見せたがり、スポーツの競争の理念を反人種差別や男女平等のPRに用いる。しかし現実には、プロクラブは営利企業以外の何ものでもない」と『ターゲスシュピーゲル』紙。その意味での中国の影響は今や脅威である。魅惑的な巨大市場から報復の恐れがあるとなると、大層な抱負などすぐに打ち捨てられる。

「私たちは中国を必要としない」

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DFB中国

Profile

ダニエル テーベライト

1971年生まれ。大学でドイツ文学とスポーツ報道を学び、10年前からサッカージャーナリストに。『フランクフルター・ルントシャウ』、『ベルリナ・ツァイトゥンク』、『シュピーゲル』などで主に執筆。視点はピッチ内に限らず、サッカーの文化的・社会的・経済的な背景にも及ぶ。サッカー界の影を見ながらも、このスポーツへの情熱は変わらない。

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