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「プレーヤートレーディング」の時代は何によってもたらされたのか?

2020.03.23

等価交換移籍、代理人、FFP、資本と市場のグローバル化…

ここ1、2年の欧州移籍市場に見られる大きな特徴は、本来の目的たるべき「チームの戦力強化」よりもむしろ「移籍そのものを通じた利益の増大」に軸足を置いた選手の売買が増えていることにある。本誌が2017年10月号で特集した「プレーヤーの債券化」がさらに進展しているという印象だ。事実、クラブのマネージメントや強化責任者の間でも「プレーヤートレーディング」という言葉が当たり前のように使われるようになってきている。その背景にはいったい何があるのだろうか?

 プレーヤートレーディングは、直訳すれば「選手売買」となる。これ自体はまったくニュートラルな言葉なのだが、実際には「移籍を通して利益を上げること自体を目的とする選手売買」を指して使われている。

 選手の移籍や売買それ自体は、プロサッカーが始まった当時からずっと行われてきたことである。しかしそれから20世紀末までの間は、選手の保有権は契約が満了してもなおクラブの手中にあり、選手の自由意思による移籍は許されていなかったため、1人の選手は多くても2、3のクラブでキャリアをまっとうするのが当たり前だった。それを劇的に変えたのが1995年のボスマン判決である。これによって移籍の自由化(契約満了による保有権喪失、EU域内の外国人枠撤廃)が実現して以降は、それ以前とは比較にならないレベルで移籍市場が活性化していった。......

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片野 道郎

1962年仙台市生まれ。95年から北イタリア・アレッサンドリア在住。ジャーナリスト・翻訳家として、ピッチ上の出来事にとどまらず、その背後にある社会・経済・文化にまで視野を広げて、カルチョの魅力と奥深さをディープかつ多角的に伝えている。主な著書に『チャンピオンズリーグ・クロニクル』、『それでも世界はサッカーとともに回り続ける』『モウリーニョの流儀』。共著に『モダンサッカーの教科書』などがある。