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新たに3クラブ――スペイン2部で外国資本流入ブームが到来

2022.07.27

 今夏、スペイン2部リーグで外国資本流入ブームが起きている。スポルティングがメキシコ資本、レガネスとサラゴサがアメリカ資本に次々と売却されたのだ。

 これで2部22クラブのうち7クラブ――前述3クラブに加え、マラガ(売却年:2010年、資本の国籍:カタール)、オビエド(2012年、メキシコ)、グラナダ(2016年、中国)、アルバセーテ(2017年、レバノン)――が、外国資本の傘下に入ることになった。

簡単ではないが手は届く

 なぜ2部が投資家の注目を集めるのか?

 1つは、1部昇格すれば売上高3、4倍増という投資効率の良さ=射幸性の高さを備えているからだ。

 本気で儲けようという投資家はプレミアリーグに行く。彼らが往々にしてサッカーを知らないのは、ビジネスの対象でしかないからだ。一方、リーガに魅了されるのは、趣味と実益を兼ねて「好きなサッカーで一儲けしてみたい」という山っ気にあふれた投資家である。

 昇格はもちろん簡単ではない。だが、今季と昨季の昇格組6クラブのうち5クラブ――アルメリア(2019年、サウジアラビア)、バジャドリー(2018年、ブラジル)、ジローナ(2017年、イギリス)エスパニョール(2016年、中国)、マジョルカ(2016年、アメリカ)――が外国資本組であることも、また事実である。簡単ではないが、手が届かない目標ではないのだ。

狙い目は苦労している名門

 もう1つ、2部に注目が集まった理由は、1部の手頃なクラブはすでに外国資本の傘下に入っているから、というのもある。

 「手頃な」というのは「オーナーに就任可能」という意味である。

 ソシオ制(レアル・マドリー、バルセロナ、オサスナ、アスレティック・ビルバオ)のクラブは買収不可能。その他、上位と中位のクラブはすでにスペイン資本を中心とした経営体制が確立されており、外国資本は経営に一部参加できてもオーナーにはなれない。上位・中位勢のうち、外国資本がオーナーなのはバレンシア(2014年、シンガポール)のみだが、これは壮大な失敗例となっている。

 というわけで、外国資本が狙うとすると下位勢ということになるのだが、上記の6クラブに加え、エルチェ(2019年、アルゼンチン)も外国資本の傘下なので、カディス、ラジョ・バジェカーノ、ヘタフェくらいしか残っていないのが現状だ。将来これらの国産弱小クラブが降格したタイミングで外国資本が買い取る、というのはありそうなシナリオである。

 一方、2部では今夏買われた3クラブを見ればわかる通り、「名門だが1部返り咲きに苦労している」という辺りが狙われている。「最近降格したばかりの名門」というのは、財政的にまだ地力があるので手を出しにくい。

 そう考えると、2部に返り咲いたばかりのラシン・サンタンデールが理想的で、実際に海外からのオファーも届いたそうだが、実現には至っていない。


Photo: Getty Images

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Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。

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