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「選手なら誰もが目指すべき場所」槙野智章が語るUCLの魅力

2019.09.18

9月17日(火)、ついに2019-20シーズンの激闘の火蓋が切って落とされたUEFAチャンピオンズリーグ(UCL)。サッカーの最先端が詰まった大会の魅力について、自身も海外でのプレー経験を持ち、現在DAZNアンバサダーを務めている浦和レッズの槙野智章選手に、選手の目線で語ってもらった。

写真 鈴木奈保子

「レベルの高さに度肝を抜かれます」

――本日はよろしくお願いします。はじめに、選手目線で見たUCLの魅力とはどんなものか、聞かせてください。

「サッカー界の中ではW杯と双璧をなすレベルの高い大会ですからね。選手としてプレーしている以上、UCLに出たい、という意欲は誰もが持っていますし、目指すべき場所だと思います。食事のテーブルや移動のバスの中でも、UCLの話題になると止まりません」


――選手の間でもUCLについて話されているんですね。

 「(話が)出ますね。特にACLに出ている選手たちは、ACLですら対戦相手や移動などで難しさを感じています。なのでなおさらUCLの難しさ、レベルの高さに度肝を抜かれています」


――この夏は本当に多くの日本人選手たちが海外へと飛び出していきました。彼らからそういった話を聞いたりすることもあるのでしょうか?

 「そうですね。『興味がある』とか『どんな形であろうと、オファーがあれば行きたい』という若い選手たちの話は出ていました。個人的には、チャンスがあれば早くから行った方がいい、失敗も成功もたくさん経験した方がいいと思っています。今の日本代表を見ても、スタメンの11人がほぼ海外組というのは当たり前になってきていますしね。

 決して日本のレベルが低いというわけではありません。海外に出て、いろんな経験をして揉まれる選手が日本サッカーを発展/向上させてくれると思っているので、すごくいい傾向だと僕は思っています」


――選手の間でも話題になるUCLはただでさえハイレベルですが、年を追うごとに目覚ましい進歩を遂げています。近年の傾向についてはどのように感じていますか?

 「順当に勝ち上がってくるチームばかりじゃなくて、昨シーズンで言えばアヤックスのように若くて面白いチームが旋風を巻き起こしたり、新しいサッカーを作っていったりするのかなというイメージがありますね。

 あと、これは傾向とは違いますけど、UCLでは常に新しい選手が出てくるので、それを見つけるのはやっぱり醍醐味ですよね。これもアヤックスになりますけど昨シーズンだったらデ・リフト。19歳でキャプテンをやっていて、年下ですけどリーダーシップなど学ぶことがあるなと思って見ていました」


――今デ・リフトの名前が挙がりましたが、やっぱりDFに目が行くものですか?

 「いや、そんなことはないです。チームとしてどう戦っているのか、というふうに見ることが多いですね」


――では、そのチームの戦い方という部分で昨シーズン、印象に残っているチームや選手は?

 「マンチェスター・シティですね。これは個人的な『贔屓目』になるんですけど、日本代表などの試合でマッチアップした選手が所属クラブでどんなふうにプレーしているのかっていうのは、やっぱり気になります。シティで言えばジンチェンコ。代表で対戦した時(編注:18年3月のウクライナ戦)はトップ下をやっていたのにチームではSBをやっていますけど、グアルディオラのあのサッカーに合っていて面白いですし、彼のところからよく(ボールを)展開しているなと。またそういう見方をする中で、対戦したからこそわかる凄さとか、あとは親近感が湧いてきたりとか。そういう注目の仕方もしています。

マンチェスター・シティのオレクサンドル・ジンチェンコ(左/Photo: Bongarts/Getty Images)

 もちろんそれだけじゃなくて、僕ら浦和レッズがモデルとして、マンチェスター・シティみたいなサッカーをやりたいというふうに見ているので、自分のポジションやチームのやり方に当てはめながら見たりもしています」


――昨シーズンのUCL王者に輝いたリバプールは、そのシティとは対照的なプレッシングスタイルのチームでした。槙野選手はプレッシングスタイルが主流のドイツでもプレーされましたが、プレッシングスタイルに関してはどういった印象をお持ちでしょうか?

 「日本だと、曺(貴裁/湘南ベルマーレ監督)さんがやっているのを見て『日本人に合っているやり方なのかな』というふうに見ていました。ただ、日本のサッカーや気候を考えると、いわゆるゲーゲンプレッシングを主体として戦うのは難しくなってきているのかな、というふうにも感じています」


――今日も9月でこの暑さ(取材日の最高気温は35℃超)ですからね。

「気候や時間に応じて、プレッシングを巧く用いていくのが大事になると思います」

槙野流、2019-20シーズンの愉しみ方

――ここからは、いよいよ開幕する19-20シーズンのUCLについてお聞きします。まず、槙野選手が注目したいクラブはどこでしょうか?

 「そうだなぁ……(悩んで)やっぱりマンチェスター・シティかなぁ。でも、他の人もそうなりますもんね。面白くないよなぁ……じゃあ、本当に個人的になってもいいですか?」


――もちろん大丈夫です!

 「ならガラタサライですね、僕は。長友(佑都)選手がいるっていうのはもちろんですけどファルカオも入りましたし、なおかつ、ドルトムントと試合をした時に個人的にやられてしまったエムレ・モルもセルタから来ました。そういったものも込めて、自分が知っている選手、対戦した選手、やられてしまった選手がいる彼らが、レアル・マドリーとパリ・サンジェルマンがいるグループを突破できるのか。個人的に面白いなと思います」


――グループのお話が出ました。全体の組み合わせを見た印象はいかがでしょうか?

 「一番厳しいのは(バルセロナ、ドルトムント、インテルが同居する)グループFかな。レバークーゼンが第3ポットで入っているグループDも難しいですね。あとは、何人かメンバーを引き抜かれたアヤックスがどれだけやれるか。彼らのいるグループHはどこがきてもおかしくなさそうで面白いですね」


――かなり気が早い話ではありますが、現時点での優勝予想はずばり?

 「個人的には、ユベントス。キエッリーニが前十字(靭帯)を損傷してしまったんですけど、守備の要を失った中でどう守備を再構築するのか。バランスを取ってロナウドの得点へと繋げていくところが見たいなと、CBとして期待しています」


――キエッリーニの穴を埋めることになるのが、先ほどお話に挙がったデ・リフトです。ちょっとパフォーマンスへの批判も出ていますが。

 「チームが変わって、リーグも変わってですから。スタイルと文化が変わるっていうのは難しいです。最初は手こずるかもしれませんけど、でも若さゆえの勢い、吸収力があります。それだけの(ポテンシャルを秘めた)選手ですし、問題ないと思います」


――では最後にあらためて、最高峰の戦いを魅せてくれるUCLに期待すること、どう楽しみたいかを教えてください。

 「選手はもちろん、サッカーに興味を持っているたくさんの方が(この大会に)注目しているというのは、非常に素晴らしいことだと思います。個人的には、UCLが始まると寝不足になるのではないかと心配になるくらい。でもそれくらい、世界最高峰の大会を堪能したいなと思っています。

 そのうえで、この中で日本人選手がどれだけの活躍をしてインパクトを残してくれるのか、期待したいです」


――今シーズンは長友選手をはじめ伊東純也選手(ヘンク)、南野拓実選手と奥川雅也選手(ザルツブルク)の4人が挑戦。ヘンクとザルツブルクは同じグループになりましたので、日本人対決が実現する可能性もあります。

 「出てほしいですね。長友と内田(篤人選手)が対戦したシャルケ対インテルの試合(2010-11シーズン準々決勝)を現地で見させてもらったんです。選手12人でスタンド観戦して、佑都とうっちーの雄姿を見ながら『距離は近いんだけど、かなり大きな差があるね』って話をしました。

2010-11シーズンのUCL準々決勝第2レグでマッチアップする内田(右)と長友(Photo: Bongarts/Getty Images)

 あれから10年近く経って、またこうして日本人選手がUCLの舞台で対決するのを、今度は遠く日本からになりますけど応援したいなと思っています」

<プロフィール>

Tomoaki MAKINO
槙野智章
(浦和レッズ/日本代表)
1987.5.11(32歳)
182cm / 77kg DF JAPAN

PLAYING CAREER
2006-10 Sanfrecce Hiroshima
2010-12 Köln (GER)
2012-    Urawa Red Diamonds

広島県広島市出身。地元サンフレッチェ広島のユースから2006年にトップ昇格しプロデビューを果たす。5シーズンを過ごしたのち、2010年冬にブンデスリーガのケルンに移籍し海外挑戦。2012年1月に加入した浦和レッズでは不動のレギュラーとして守備陣を統率し、2017年のACLをはじめ6つのタイトルを掲げている。日本代表では2010年の初出場以来、通算38試合4得点。

Photo: Nahoko Suzuki

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槙野智章

Profile

久保 佑一郎

1986年生まれ。愛媛県出身。友人の勧めで手に取った週刊footballistaに魅せられ、2010年南アフリカW杯後にアルバイトとして編集部の門を叩く。エディタースクールやライター歴はなく、footballistaで一から編集のイロハを学んだ。現在はweb副編集長を担当。

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