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愛するボカとの契約破棄こそ ガゴが体現する「レジリエンス」

2019.06.11

フェルナンド・ガゴ

“痛みを感じたのはアキレス腱よりも心の方だった”

Fernando Gago
フェルナンド・ガゴ

1986.4.10(33歳) ARGENTINA

 昨年12月9日、マドリッドのサンティアゴ・ベルナベウで行われたコパ・リベルタドーレス決勝の第2レグで、ボカ・ジュニオールのキャプテン、フェルナンド・ガゴは右アキレス腱裂傷という重傷を負った。このため今年3月、2020年6月に満了するはずだったボカとの契約を双方合意の上で破棄した。

 アルゼンチンにおいて「ケガの代名詞」と呼ばれるほど、ガゴはこれまでたび重なる負傷に泣かされてきた。2013年に古巣ボカに復帰してからも毎年ケガを負い、1シーズン通して無傷でプレーできた例がなく、アキレス腱裂傷は左右合わせてこれが3度目という不運。2017年10月には念願のアルゼンチン代表復帰を果たしてW杯予選のペルー戦でプレーしたが、その試合で右膝前十字靱帯を痛め、夢に見たロシアW杯出場も実現しなかった。

 もともとメディア嫌いで知られ、取材に応じることがほとんどないだけに、治療とリハビリに専念している期間中の心境を表に出すことも一切ない。だがたった1度だけ、2016年に2度目のアキレス腱裂傷という悲劇を体験した後、その時の気持ちを公にしたことがある。プロサッカー選手や監督によって書かれた短編小説を集めたオムニバス形式のサッカー本『Pelota de Papel』(紙のボール)にガゴが寄稿した『Resiliencia』(レジリエンス=逆境を糧にして立ち上がる力)という題のショートストーリーで「ケガから立ち直ってタイトルを勝ち取ったキャプテン」という自身の復活劇をフィクションに仕立ててあり、その中で「見通しは悲惨なものだった。痛みを感じたのはアキレス腱よりも心の方だった」という辛い心境を率直に綴っているのである。

 そんなガゴの心の痛みを癒し、毎年繰り返されるリハビリの日々に付き添って励ますのが、元プロテニス選手の妻ジセラ・ドゥルコだ。ジセラによると、歴史的な一戦となったベルナベウでのリーベルプレート戦で大ケガを負った直後はさすがにショックを受けていたものの、アルゼンチンへの帰路ではすでに現実を冷静に受け止め、「焦らずしっかり治し、もう一度ピッチに立つ」ことを誓ったというガゴ。ボカとの契約を破棄したのも、プレッシャーやストレスから完全に解放された状態で治療に専念するためだという。

 一部では引退説が囁かれ、親友であるガブリエル・エインセが監督を務めるベレス・サルスフィルのコーチに就任するという噂もあったが、ガゴはあくまでも「復帰」を目指す。自ら書き上げた「レジリエンス」のストーリーを現実のものにするために。

フェルナンド・ガゴ

Photos : Getty Images

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Profile

Chizuru de Garcia

89年からブエノスアイレスに在住。1968年10月31日生まれ。清泉女子大学英語短期課程卒。幼少期から洋画・洋楽を愛し、78年ワールドカップでサッカーに目覚める。大学在学中から南米サッカー関連の情報を寄稿し始めて現在に至る。家族はウルグアイ人の夫と2人の娘。