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スズキカップで傷ついたタイの誇り。チャナティップ復帰でムード上昇!

2018.12.30

アジアカップ2019特集 現地メディアが伝える変革するアジア列強の今 #1】タイ代表


 2018年の年末に行われたAFFスズキカップ(東南アジアサッカー選手権/2年に1度開催)において、タイは完全に打ちのめされた。グループステージは1位通過したものの、準決勝でアウェイゴールによりマレーシアに敗退(ホーム2-2/アウェイ0-0)。大会3連覇を逃したという結果だけでなく、大会を通じてタイの戦い方もサポーターを魅了させることはできなかった。

 これらはアジアカップに臨む代表選手たちにも影響を与え、彼らの自信は完全に削がれている。そしてタイサッカー協会がベスト16進出という目標を掲げるアジアカップは、ミロバン・ライェバツ監督を続投させるか否か、運命を決する大会にもなった。

 ライェバツ監督はアジアカップに向けて、スズキカップに招集しなかったサンフレッチェ広島のFWティーラシン・デーンダー(期限付き移籍期間満了で退団決定)、北海道コンサドーレ札幌のMFチャナティップ・ソングラシン、ヴィッセル神戸のDFティーラトン・ブンマタン(期限付き移籍期間満了で退団決定)、そしてベルギー2部OHルーベンのGKガウィン・タンマサッチャーナンという海外でプレーしている4人に加えて、FWシロー・チャットーン(プラチュアップ)、DFトリスタン・ドゥ(バンコク・ユナイテッド)、DFアディソン・プロムラック(ムアントン・ユナイテッド)というスズキカップの代表から漏れていた選手を再び呼び寄せた(ガウィンは足のケガでアジアカップ不参加が決定)。

 ただ、代表に呼ばれた選手のほとんどは、FWスパチャイ・ジャイデッド(ブリーラム・ユナイテッド)、MFスマンヤー・プリサーイ(バンコク・ユナイテッド)、DFスパン・トンソン(スパンブリー)、FWチャナナン・ポンブッパー(スパンブリー)、FWアディサク・クライソーン(ムアントン・ユナイテッド)といった、ライェバツ監督が2017年の就任以降招集したことがあるメンバーだ。セルビア人指揮官は、これらの選手たちは守備におけるチームのシステムを理解しており、戦術の浸透にさほど時間をかける必要がないと見ている。おそらくアジアカップにおいても、チームの戦い方はスズキカップとそれほど変わらないだろう。

スズキカップ準決勝敗退後、失意の選手たち


タイサポーターのショックと希望

 タイ代表サポーターのジッタリン氏は「タイサポーターの全員がスズキカップの結果にショックを受けています。ただ、今回の敗退にはプラス面とマイナス面があると見ています。プラス面は、どの選手がシステムにマッチし、どの選手がはまらないかわかったこと。マイナス面は選手たちのメンタルです。自信を取り戻すことが必要です。ただ、タイは目標に掲げたベスト16には残ることができるでしょう。なぜならティーラトン、ティーラシン、チャナティップというカギとなる選手が戻り、チームの攻撃力が増すからです。特にチャナティップは大きく成長し、いまや代表チームの心臓です」と話した。

 中心選手が戻り、ベストメンバーとなったタイにとって、選手そのものに関する問題はないだろう。問題があるとすれば、やはり選手たちのメンタルであり、自信であるはずだ。サッカー協会も手をこまねいているわけではない。セルビア代表のアシスタントコーチなどの経験があるチリ人のジュリオ・セザール・ヤネス氏をアジアカップに向けて代表スタッフに招へいし、さらに元タイ代表でキャティサック・セーナームアン前代表監督時にアシスタントコーチを務めたチョクタウィー・プロムルット氏をアシスタントコーチに加えた。代表選手たちにとって馴染みのあるチョクタウィー氏の復帰により、代表合宿、練習の雰囲気も良くなり、活気が増している。

 タイはアジアカップにおいて、3位となった1972年大会を除いてグループステージを突破したことがない。しかしこの歴史も、今の選手たちにとってはモチベーションになっている。スズキカップの準決勝敗退という悔しさをバネに、彼らはアジアの舞台で自分たちの力を証明したいと思っているからだ。

 大会の優勝予想には過去4度の優勝を誇る日本を推したい。国内でプレーしている選手を起用しようと、海外でプレーしている選手を起用しようと、日本には十分に優勝の可能性があることに変わりはない。

「チームの心臓」チャナティップ。2018シーズンはJ1で8ゴールを記録、選手間投票によるコンサドーレ札幌のチームMVPにも選ばれた25歳が、タイ代表浮沈のカギを握る

AFCアジアカップUAE2019 テレビ放送予定

地上波放送:テレビ朝日系列にて生中継!
https://www.tv-asahi.co.jp/soccer/asiancup2019/

BS放送:NHKBS1にて生中継!
https://www1.nhk.or.jp/sports2/daihyo/index.html

【アジアカップ2019特集】現地メディアが伝える、変革するアジア列強の今

Translation: Masahiro Nagasawa
Photos: Getty Images

Profile

アロンコット ドゥアンクローイ

タイ版『Goal.com』記者を経て、2018年からスポーツサイト『Main stand』(https://Mainstand.co.th)でライターを務める。