J1昇格を支えたアグレッシブなスタイルは、なぜ開幕直前に姿を消したのか。ちばぎんカップで見えたのは、急造5バックの未完成さだけではない。主力流出、SB不足、そして8月開幕という新たな環境——。昇格クラブのジェフユナイテッド千葉が背負う「J1の現実」と、その先に待つ可能性を読み解く。
急造5バックが露呈した「ローブロック問題」
新シーズン開幕まで1週間、ちばぎんカップはかなり真剣度の高い試合となった。
ジェフユナイテッド千葉は珍しく5バックだった。鳥海晃司、ダニエル・ホール、河野貴志のCB3人にウイングバックとして田中和樹、津久井匠海。日本代表の[3-4-2-1]と同じくウイングバックにウイングを起用している。
ところが、保持力のある柏レイソルに押し込まれたためウイング起用のメリットはほとんど発揮されていない。
田中が自陣から60メートル疾走してクロスボールをゴール裏へ蹴ってしまった場面が典型的で、攻撃のために走る距離が長すぎる。2002年W杯の時に「ロベルト・カルロスの走る距離を半分にすれば、観客席にクロスボールを蹴り込むようなミスはありえない」とヨハン・クライフが言っていた記憶があるが、そういうことなのだと思う。
ただ、それ以前の問題でもあった。[5-4-1]のローブロックなので、ほとんど攻撃ができなかった。
押し込まれた状態からいかにボールを運び出すか。これは千葉だけでなく、新シーズンのJリーグでポイントになるだろう。新シーズンは8月上旬開幕だからだ。秋春制などではなく“夏春制”なのだ。昨年並みなら10月くらいまでは「夏」になる。北中米W杯でもハイプレスをやるチームは少なく、基調はミドルゾーンに守備ブロックを構える形だった。暑さに湿度が加わる日本の8月にハイプレス中心の守備はまず無理である。
W杯と同じくミドルブロックが中心になると考えられる。まずはミドルブロックの強度が問われるわけだが、ミドルブロックはローブロックに押し下げられることも多いので、そこで奪ってボールを運び出せるか否かが重要になるわけだ。
ミドルブロックからハイプレスへの移行は限られるが、敵陣でボールを失った直後のカウンタープレスはある。それをかわして前進し、カウンターアタックに結びつけるか押し返す。それができないと、ブラジル戦の日本のように防戦一方となり、いつかは失点するということになってしまう。
千葉はローブロックからの運び出しができなかった。個人技術に関わってくる部分なので、千葉に限らず苦労するチームは少なくないと思う。
しかし、それ以前の問題でもあった。
SB不在。高橋壱晟流出が狂わせた設計図
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Profile
西部 謙司
1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。
