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フェルナンジーニョの見逃せない“調整力”こそがシティ進撃の要

2017.12.11

注目クラブのボランチ活用術:マンチェスター・シティ

シャビ、シャビ・アロンソといった名手たちが欧州サッカーのトップレベルから去ったここ数年、中盤で華麗にゲームを動かすピッチ上の演出家は明らかに少なくなっている。では実際のところ、各クラブはボランチにどのような選手を起用し、どんな役割を求め、そしてどうチームのプレーモデルに組み込んでいるのか。ケーススタディから最新トレンドを読み解く。

 3バックや4バック、[4-3-3]や[4-1-4-1]など目まぐるしく変化するペップの戦術にあって、唯一「不変」と呼べるのがフェルナンジーニョだ。戦術理解度が高く、指揮官の求めるポジションセンスを最も兼ね備えた選手である。

ペップのサッカーにおいて最大のタブーはポジショニングが被ることだが、今季は綿密な戦術確認のおかげで非常にバランスが取れている。とりわけフェルナンジーニョの位置取りは秀逸だ。DFラインの前で左右に動きながら常に三角形を作り出してDFからパスを引き出すと、中盤のチームメイトの足下に正確なショートパスを入れる。今季は10月までリーグ2位のパス本数を誇りながら、成功率も90.5%とMFとしてトップ3に入っている。一瞬で局面を変えるロングパスや絶妙なスルーパスが名ボランチの資質に思われがちだが、フェルナンジーニョの場合は違う。パスの平均距離は16mで、20mを超える猛者がそろうプレミアリーグでは短い。一撃必殺の派手なパスはダビド・シルバやデ・ブルイネに委ね、彼は自分の仕事に専念するのだ。短いパスで攻撃のテンポを維持しつつ、ペースダウンが必要だと感じれば近くの仲間とのパス交換でチームを落ち着かせる。それでいて、敵陣に入れば虚をつくロングシュートを放つこともある。1シーズンに2、3回はネットを揺らしており、完全に引いた相手には効果的だ。
守備に関しては、押し込んでいる時間帯が長いチームにあってカウンター阻止が第一の仕事となる。起点になりそうな敵MFに瞬時に詰め寄って噛みついたり、受け手のFWの背中に張りついて前を向かせなかったりと、抜群の加速力と持久力で臨機応変に守備をする。このように攻守両面で気の利いたプレーができるのは、常に首を振って周りの状況をインプットしているからだ。ピッチ上で誰よりも仲間の位置と距離を気にしており、ペップ特有の“インバーテッド・フルバック”(偽サイドバック)が中央に絞る際には、彼らの位置を確認して自分はボールサイドに寄せる。DFラインに穴が開けば、いや開きそうならば、必ず修復に向かう。“攻守”といった陳腐な大枠の話ではなく、前後左右の偏り、チームメイトとの距離、攻撃の緩急など、すべてを丁寧に調整する究極のバランサーである。



17-18 チームスタイル:ポゼッション
攻撃参加の機会は少なく、背後のDFラインを意識し、いつでも釣り出されたCBの穴埋めができるポジション取りを心がける。手薄になった両サイドのスペースをカバーするのもフェルナンジーニョの役目で、ディフェンス時の活動エリアが広い。

Photo: Getty Images

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Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。