第20節から5戦4勝と復調気配を感じさせた矢先の解任劇だった。今季より就任した岩政大樹監督(43歳)から、U-18チームを率いていた柴田慎吾監督(40歳)へ。北海道コンサドーレ札幌がJ2リーグ残り13試合で下した決断の舞台裏、そしてトップチーム初挑戦の新指揮官が目指す「新しいフットボール」について、地元で長年クラブを取材する斉藤宏則氏に伝えてもらった。
J2で11位…ミシャ後の「根深い問題」
「このたび北海道コンサドーレ札幌のトップチーム監督に就任しました、柴田と申します。よろしくお願いします」
8月12日午後、札幌市内で行われた就任会見で柴田慎吾新監督は初々しく、それでいて力強く言葉を発した。浜松大から2008年に札幌に加入し2シーズン、プレーをした後、ザスパ草津(現ザスパクサツ群馬)で現役引退をして2011年から札幌のスクールやアカデミーで指導を重ねてきたクラブOBがトップチームの監督に就任した。
その経緯はシンプルに監督交代だ。7年にわたり札幌を率いてきたミシャことミハイロ・ペトロヴィッチ監督が2024年末に退任すると、今年からは岩政大樹監督が就任し1年でのJ1復帰を至上命題として戦いを開始した。しかしながら思うように成績が伴わず、8月11日をもって契約解除に。まずはその部分から触れていく必要があるだろう。
岩政 大樹監督との契約を解除することとなりましたのでお知らせいたします。https://t.co/HSgrRZq0G9#コンサドーレ #consadole pic.twitter.com/nkjpY2b3UH
— 北海道コンサドーレ札幌公式 (@consaofficial) August 11, 2025
柴田 慎吾監督のトップチーム監督就任が決定しましたので、お知らせいたします。
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「このたび、北海道コンサドーレ札幌の監督に就任いたしました柴田慎吾です。このタイミングで就任することの重みを深く受け止めております。… pic.twitter.com/Y9D12GK7tL— 北海道コンサドーレ札幌公式 (@consaofficial) August 11, 2025
今季就任の岩政監督は、鹿島アントラーズで指揮を執った後に赴いたベトナムでの成功体験を手ごたえとし「オリジナルなフットボールを見せる」と強い自信を口にしていたが、札幌はJ1から降格したばかりのチームにありがちな、残留争いのための積極補強による人員過多状態となっており、オフの編成作業はその整理にとどまり岩政監督のリクエストによる補強はなし。ミシャ時代の編成をそのまま引き継ぐ形で始動し、まずは与えられた戦力の見極めからのスタートとなった。20チーム中16チームが昨季から体制が継続したJ2の中では、他チームよりもスタート地点が後方となった感は否めない。
また、ミシャのチームは最終ラインにもボランチタイプの選手を配置し後方からのつなぎを重視したため、専門のセンターバックがほとんどいない。また、3バックで戦い続けてきたため本職のサイドバックもいない編成だった。そのため岩政監督は守備構築に難儀した様子で、手探りのシーズンインとなった結果、開幕4連敗という最悪な新体制の幕開けとなった。問題の守備に関しては失点シーンを振り返るたびに岩政監督は「根深い問題がある」と口にした。攻撃に関しても、そもそも得点力のあるストライカーがいないからJ2に降格したわけで、決定力不足が目立っていた。ピンチに守りきれず、チャンスを生かしきれず。サッカーにおける重要ポイントが課題のまま戦いを続け、上位進出ができずに日程が進んだ。
6月の特別移籍ウインドーで宮大樹(←名古屋グランパス)、浦上仁騎(←RB大宮アルディージャ)という2枚のセンターバックを獲得して守備力強化を図り、下位のチームには競り勝てるようになった。第20節から3連勝も果たした。だが、上位のジュビロ磐田と対戦した第23節では守備がまったく通用せず1-5のスコアで大敗。そして、監督交代のポイントのひとつとなる約3週間の中断期間へと突入する。
J1復帰と“守備的→攻撃的”の両方を求めて
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Profile
斉藤 宏則
北海道札幌市在住。国内外問わず様々な場所でサッカーを注視するサッカーウォッチャー。Jリーグでは地元のコンサドーレ札幌を中心にスポーツ紙、一般紙、専門誌などに原稿を寄稿。
