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ビニシウスら先輩たちやジニス監督との交流。17歳エンドリッキ、ブラジル代表デビューの舞台裏

2023.12.02

16歳96日という若さでパルメイラスのトップチームで得点を挙げ、すでに2024年のレアル・マドリー加入が内定しているエンドリッキが11月にブラジル代表デビューを飾った。出場したコロンビア戦(●2-1)、アルゼンチン戦(●0-1)はともに敗戦となったが、チームは神童をどのように迎え入れ、彼は今回の招集で何を得たのか。セレソンに帯同し、密着取材を続ける藤原清美さんに伝えてもらった。

「興奮と緊張と待ち遠しさでいっぱいになった」A代表初招集

 11月のFIFA国際マッチデーに開催された2026年W杯南米予選で、ブラジル代表には1994年のロナウド以来となる17歳で招集された選手がいた。そして1試合目のコロンビア戦で、ブラジル代表史上でも4番目に若い17歳118日でデビューを果たした。それが、パルメイラスの至宝エンドリッキだ。昨年末にレアル・マドリーと契約を交わし、来年7月にはスペインへ向かうことで、すでに国際的にも注目されている。

 代表合流後、エンドリッキは今回の招集について「僕自身はU-23代表の招集こそ期待していたけど、A代表は想像もしていなかった。聞いた時には、興奮と緊張と待ち遠しさでいっぱいになって、神にひたすら感謝したんだ」と語っていた。両親は泣いて喜んだと言う。

 フェルナンド・ジニス代表監督にとっては、ネイマールがケガで長期離脱していることをはじめ、招集や起用をしたくてもできないFWが数人いるという事情もある。それでも彼の哲学には、その空いた枠で若手にA代表を経験させてみようという考え方はない。招集会見の際「2006年に生まれた選手のプレーが、僕の注目を引いている」と語った通り、その若き才能に自分のサッカーを理解させ、必要な時にピッチに送り込むために招集したのだ。

 ブラジルメディアはこの招集を非常に好意的に受け止め「メッシのいるアルゼンチンに、ブラジルの若き至宝が挑む」と期待感を盛り上げた。

アルゼンチン戦の舞台、マラカナンに到着したエンドリッキ(Photo: Staff Images/CBF)

 エンドリッキは左利きのFW。技巧的なプレーをするタイプではなく、基本的な技術のクオリティと得点能力が高い。171cmと小柄だが重心が安定し、幼い頃から常に年齢より上のカテゴリーでのプレーを経験したことで、簡単には当たり負けしないフィジカルの強さがある。運動量が豊富でスピードもあり、ドリブルで仕掛ければシュートまで持ち込める。彼と同様にオフ・ザ・ボールの動きに長けた選手が近くにいれば互いに生かし合うインテリジェンスも備え、CFと縦関係になる場合はその後方でチャンスメイクをしたり2列目から飛び出すこともできる。

「人が気に入ってくれても、そうでなくても良い」

 11歳でパルメイラスの下部組織に入団したエンドリッキは、昨年のブラジル全国選手権優勝により、クラブ史で唯一、U-11、U-13、U-15、U-17、U-20、プロチームと、全カテゴリーでビッグタイトルを獲得した選手になった。特に昨年はブラジルU-20の重要な大会とされるコパ・サンパウロ・ジュニオールに15歳で出場し、7試合6得点の活躍で優勝の原動力に。そして7月に16歳の誕生日を迎えるとともにプロに昇格し、12月にはレアル・マドリーとの契約を結んだのだ。

リベルタドーレス杯パルメイラス対バルセロナ・デ・エクアドル戦でのゴール後(Photo: Cesar Greco_Palmeiras)

 早くにプロとしてプレーし始めただけに、FIFA国際マッチデーの開催ではないU-17やU-20代表の南米選手権やW杯には、パルメイラスが招集を拒否してきた。それでも、現在U-23代表監督となったラモン・メネゼスやA代表監督のジニスに、エンドリッキについての質問が飛んだことは1度や2度ではない。

 今回、チームが集合してからジニスはこう語っていた。……

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エンドリッキフェルナンド・ジニスブラジル代表

Profile

藤原 清美

2001年、リオデジャネイロに拠点を移し、スポーツやドキュメンタリー、紀行などの分野で取材活動。特にサッカーではブラジル代表チームや選手の取材で世界中を飛び回り、日本とブラジル両国のTV・執筆等で成果を発表している。W杯6大会取材。著書に『セレソン 人生の勝者たち 「最強集団」から学ぶ15の言葉』(ソル・メディア)『感動!ブラジルサッカー』(講談社現代新書)。YouTube『Planeta Kiyomi』も運営中。

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