9月1日にロッテルダムで行われたエールディビジ第4節のスパルタ対NEC(1-1)。ともに前節までに2ゴールと23-24シーズン好発進の日本人アタッカー2人が顔を合わせた注目の一戦を、河治良幸氏が現地で取材した。
オランダ1部のスパルタ・ロッテルダムとNECナイメヘンが対戦。スパルタの斉藤光毅とNECの小川航基はともにスタメンで起用され、現地メディアからも“コウキ・ダービー”として注目を集めた。
ホームのスパルタは斉藤を左サイドに置く[4-2-3-1]で、10番のアルノ・フェルスフーレン、元オランダ代表のMFジョナサン・デ・グズマン、U-21ノルウェー代表のMFヨシュア・キトラーノの中盤トライアングルを可変させながら攻勢をかけたが、NECの堅実な守備ブロックをなかなか破れない。逆に前線の小川らを目がけたロングボールを起点に、何度か危険なシーンを作られた。
お互いに決め手がないまま迎えた後半の56分には、クロスのセカンドボールを拾ったNECのボランチ、ディルク・プロパーがミドルシュートを叩き込んで先制。追いかけるスパルタはユルン・ライスダイク監督が攻撃的なカードを切ると、小川が下がった終盤、縦パスを受けたMFペッレ・クレメントがボックス内でNECの左SBユーリ・バースに倒されてPKを獲得。これをキトラーノが確実に決めて同点に追いつく。前節ヘーレンフェーン戦(○1-3)で2得点の斉藤は90分フル出場で指揮官の信頼を感じさせたが、ゴールを奪うことはできなかった。
チームの中心として「すべての面で相手の脅威になるような存在に」(斉藤)
75分までプレーした小川は「苦しい時間帯が多くて、攻撃の形だったりとか、なかなか糸口が見つけられないまま90分間終わってしまったなというイメージです」と試合を振り返るが、そうした流れの中でも隙を突いていったんはリードを奪い、敵地から勝ち点1を持ち帰れることは前向きに捉えていた。
一方のスパルタも開幕から4試合負けなし(2勝2分)となり、暫定5位と上々の滑り出しを見せている。「全然ダメでしたね(笑)」と自身のパフォーマンスを振り返る斉藤も、しっかりとチームの中心として戦えていることには手ごたえを得ているようだ。ただ、やはり昨シーズンの後半戦に結果を出したことで、斉藤に対する警戒は強まっている。
特にカットインが強力であることはエールディビジで共有されてきており、このNEC戦でも「抜いても抜いても人がいた」(斉藤)。それでも突き破っていける選手にならないと上のステージに飛躍していけないことは当人も理解している。
「難しかったですけど、2枚目も見られるくらい余裕を持っていかなきゃいけないですし、真ん中を使ったりとか、いろんなシチュエーションが今後また出てくると思う。(相手が)警戒してきたことによって空くスペースもあると思うので、そこは仕掛けだけにこだわらず、周りを見ながらやっていきたい」
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Profile
河治 良幸
『エル・ゴラッソ』創刊に携わり日本代表を担当。Jリーグから欧州に代表戦まで、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。セガ『WCCF』選手カードを手がけ、後継の『FOOTISTA』ではJリーグ選手を担当。『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(小社刊)など著書多数。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才能”」に監修として参加。タグマにてサッカー専用サイト【KAWAJIうぉっち】を運営中。